チェコ野球・スイスシリーズ 観戦レポート1
・チェコ代表の出会いと再会
昨年のWBCでは大谷選手達が活躍して日本が優勝したことは記憶に新しいと思います。私は病院で理学療法士として働いているのですが、スタッフ達や患者様達全員で最後のワンアウトを取るまで集中して見ていたことを覚えています。
そんな中、1次ラウンドで戦ったチェコの代表のことを皆さんもよく覚えていることだと思います。ヨーロッパはまだまだ野球が未開拓の土地、当然チェコの国内リーグだけでは生活は難しく、消防士や電気技師など何らかの仕事をしながら野球をやっている選手が殆どであることはよく知られています。この辺りは日本の社会人野球やクラブチーム、独立リーグが近いのでしょうか。何にせよ国内で億単位のお金を稼ぐ日本のプロ野球選手やMLBの選手達に彼らは立ち向かい、試合終了後も相手チームを賞賛するチェコの代表チームは我々に野球とは何か、スポーツとは何かを改めて教えてくれた形となりました。
さて、前置きが長くなりましたが、今年はそんな彼らを日本で再び出会える機会を持つことが出来ました。第3回WBSCプレミア12が日本で開催され、中日ドラゴンズの本拠地であるバンテリンドームでチェコ代表との試合が行われることになりました。開催は11月9日と10日、丁度9日は私の誕生日でもあり、チェコ代表を見たいのと自分自身への祝いも兼ねてチケットを購入しておりますので現地観戦が出来る状態となっています。
チェコ代表の姿を当日見てもよいのですが、先に配信でスイス代表との試合が行われるとの情報をSNSで知ることが出来たので一足早く観戦することにしました。配信はチェコ野球協会の公式チャンネル(http://baseballczech.tv)より「7€」で観戦可能とのこと。私はクレジットカードで支払い観戦することを決めました。
・スイスシリーズ開幕
今回、チェコ代表が戦う相手はスイス代表。場所はプラハ・イーグルスパーク、自然に囲まれた球場なのでしょうか。非常に美しい緑豊かな森や黄緑色の芝のグラウンドはまるでファンタジーの世界のようです。バックネット裏の観客席には多くの人々が集まっていて、この試合を観戦しているようです。日本に住んでいるのでチェコ国内のことはわかりませんが、チェコの野球人気もWBC以降に高まっているのでしょうか。それに今年は日本の伝統ある強豪チームの東京読売ジャイアンツにマレク・フルプ選手の入団が決まったというニュースが飛び込ました。フルプ選手はWBCで剛速球投手である佐々木朗希の速球を弾き返したことで知られており、私も何度か打席を見ましたがチェコ代表の中でも飛びぬけてパワーとスピードを持った選手である印象です。最初は育成契約という形ですが活躍次第では支配下登録され、一軍の舞台でその姿を見られるかもしれません。今後は楽しみですね。
イーグルスパークのグラウンド整備は終わり、それぞれの代表チームが集まり国歌斉唱、この辺りは代表戦なので本格的。試合前の国歌斉唱も終わり、いよいよ試合が開始されるのですがチェコの先発はサトリア選手です。日本では「大谷を三振させた選手」として野球ファンの間では有名ではないでしょうか。失礼ながら球の速さはそれほどありませんが、抜群のコントロールと投球術を駆使して打ちとるテクニカルな選手です。サトリア選手は個人的に好きな投手で、こんなに早く見られるとは思いませんでした。対するスイス代表の先発はノア選手です。実はノア選手は今年、日本の独立リーグである「さわかみ関西独立リーグ」の「兵庫ブレイバーズ」に所属する選手で、私の地元が大阪もあって、この一年追いかけていた選手でもあります。このノア選手は日本では投手として、先発で3試合ほど登板しており大谷のような二刀流選手です。今年は所属するリーグで「ホームラン王」と「DHのベストナイン」のタイトルを獲得しました。
・序盤は投手戦
序盤は行き詰まる投手戦、先発のサトリア選手がカーブやチェンジアップなど低めをうまく丁寧につきながら打たせてとる投球術で2回を無失点。3回からトメク選手に交代してお役御免です。個人的にはもう少し見たかったのですが、もうすぐ代表戦も控えているのでここは無理に登板させられません。対するスイス代表のノア選手ですが、四球が絡みからランナーが出て、エスカラ選手にヒット、続くプロコップ選手(元BCリーグ・神奈川所属)は打ち取られましたが、主砲チェルベンカ選手が得大飛球を外野に放ち犠牲フライで1点先取。先制したのはチェコ代表となりました。この二回の攻撃で感じたのですが、プロコップ選手はアウトにはなりましたが、ランナーは進んでおりクリーンナップが最低でも犠牲フライを打てば一点を獲れる状態。それをチェルベンカ選手が見事に応えました。チェコ代表が個人ではなく、全員で点をもぎとるカラーが現れた象徴ともいえる攻撃に感じました。それはどこか日本の高校野球を彷彿させるシーンを思い出すのでした。
ノア選手ですが日本で投げていたときより、少し世話しない動きに見えましたが代表戦ともあって緊張していたのでしょうか。しかし、日本で投げていた頃よりチェンジアップなどの変化球を投げたりするなどモデルチェンジをしていて驚きました。以降、ランナーは出すも要所を抑えて4回1失点で交代、そのままセンターのポジションに移行。3回には変わったトメク選手から逆転ツーランを放つなど、二刀流選手としての務めは果たしたと言えるでしょう。
・中盤から後半はチェコ野球のパワー爆発
5回中盤からスイスはノア選手から投手が交代、ここからチェコ野球のパワーが爆発することになります。スイスのコントロールや守備のミスにより、毎回のように点をとっていき気づけば10点の大量得点をして10-2でチェコ代表の勝利となりました。総括すると試合はやはり6回の攻防がポイントだったのではないでしょうか。スコアは3-2とスイス側がリードされた状態ですがワンアウト満塁のチャンスの場面、長打が出れば逆転の場面です。ですが後続が三振、次のバッターですがここでチェルベンカ選手がピックオフのファインプレーによりピンチを脱出。スイス側は以降、この流れが響いたのでしょうか6回裏に4失点しまい、続く回も失点を重ねることになりました。
昔からよく聞くのは野球という競技には「流れ」という見えない力があるとはよく耳にします。何かの野球の技術書に書かれていましたが、野球というスポーツは「フィジカル」より「メンタル」が問われるとされ、一つの好プレイ、一つのミスが試合の流れを変えて結果に結びつくとのことです。おそらくは気持ちが体の動きに繋がるからかもしれません。日本では昔から「心が動けば体は動く」と言われています。チャンスで打てるか、ピンチで抑えられるか、エラーした後はどうするかなど恐怖、焦り、怒りといった負の感情がプレイに結びつき、その気持ちは味方にも伝染してチームに影響を与える。チームに影響を与えた結果がチームの結果。哲学でいうところの因果律、全ての出来事はある原因から生じた結果のもので、その間には一定の必然的関係があり、原因がなくては何ごとも起こらない、ということではないでしょうか。
野球の話とは脱線してしまいましたが、この「流れ」をものにするには、フィジカルだけでなくメンタルを整えて試合に臨まないといい結果は出ないということでしょう。今回の試合では、チェコ代表がスイス代表のメンタルの揺れをついて試合に勝利することが出来ました。それは偏に日本代表などとの国際試合を通じて「自信」がついたからでしょう。また、チェコ代表は相手に立ち向かう姿勢を崩さないチャレンジャーとしての姿を感じられますので気持ちの部分が強いのもあると私は見ています。明日はトレバー・バウワー選手、過去にサイヤング賞を受賞し、アメリカだけではなく日本やメキシコで結果を残し続けてきた大物です。チェコ代表は臆せずにファイティングスピリットとチャレンジスピリットの二刀流精神で立ち向かって欲しいと思っています。
――明日もチェコ代表とスイス代表の熱戦に期待しております!
・個人的に気になった選手
マレク・クレイチリク選手。
5回の裏に同点タイムリーを放ちましたが、今度行われるラグザス侍ジャパンシリーズ2024では「ユーティリティープレイヤー」と紹介されていましたが、どのくらいのポジションを守れるのか気になるところです。もしかして、投手としても登板出来るのでしょうか。
・個人的なこの試合のヒーロー
マルティン・チェルベンカ選手。
犠牲フライ、タイムリー含む2打点の活躍。守備では6回満塁のピンチ切り抜ける好守備が間違いないでしょう。日本戦では間違いなく先発出場すると思いますので楽しみにしております。
≪情報元≫
BaseballCzech(チェコ野球公式) X:@baseballczech_
Tetsuro Goda(Teddy)様 X:@oxygen_torpedo
チェコ野球(Czech Baseball, Český Baseball)様 X:@CzechBaseballJP
ヨーロッパの野球 in チェコvsスイス様 X:@baseball_europe
イラスト:DELL-E3
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