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チェコ野球・スイスシリーズ 観戦レポート2

 10月20日に行われたチェコ対スイスのスイスシリーズ二試合目の更新となります。
 引き続き、チェコ野球協会の公式チャンネル(http://baseballczech.tv)からのネット配信での試合観戦となります。詳しい試合内容を観戦したい方は、クレジットカードでお支払いすれば動画を視聴できますのでお願い致します。(値段は7€ほど)

・サイヤング賞投手の雄踏

 スイスシリーズ二試合目のレポートとなります。
 今回はチェコ国内だけではなく、国内外の野球フリークの間では『超大物投手』が登板するとの情報が入ったので注目の試合となりました。その投手の名前はトレバー・バウアー選手、メジャーリーグでサイヤング賞(NPBでいうところの沢村賞)のタイトルを手にした『本物』です。日本でも2023年のシーズンに横浜DeNAベイスターズに所属していたことから覚えている方々も多いと思います。筆者は大阪に住んでいるのですが、交流戦で対オリックス戦に登板することを聞き、急いでチケットを購入してバウアー選手の姿を一目見ようと京セラドームに向かったことを覚えています。

 そんなバウアー選手が野球の不毛の地であるチェコの地で、スイス代表の選手として投げることになりました。どうやらご両親のどちらかがスイスにルーツを持つようで、代表選手として投げることになったようです。WBCの規定では『親が当該国で出生したか、国籍を有する場合などに選手に出場資格が発生する』とのことでバウアー選手がその規定に合致したのでしょう。何にせよ電撃参戦することに驚きを隠せません。現在メキシカンリーグのレッドデビルズに所属するバウアー選手、海外だけでも日本・メキシコ・チェコ、そして母国アメリカも含めると4ヶ国にまたがってプレイすることになりました。一時、アジアンブリーズというプロ契約を目指すためのチームにも所属したことがあるバウアー選手、今度はスイス代表のユニフォームを着てプレイする姿にどこか放浪する野球冒険者のような感じがしてきます。
 
・Tシャツ姿のサイヤング賞投手
 
 いよいよ試合が開始されました。昨日より背景に映るお客さんが多いなあと思っていましたが、観客はなんと1383人ということです。今日投げるバウアー選手の姿を見ようとチェコだけでなく、国外からも来ていたとのことでその注目度が伺えました。また、配信する映像ですが昨日までオーダー発表の映像が選手の名前だけになっていたのですが、今度は選手の顔写真つきの映像にパワーアップしていました。ある意味、チェコ野球に歴史を刻む試合ですので力の入れ具合を感じました。

 さて、試合の方ですがいよいよバウアー選手がマウンドに立つのですが、他のスイス代表の選手は赤いユニフォームを着る中で一人だけ灰色のTシャツを着ていたのです。何故バウアー選手だけTシャツなのかはわかりませんが、普段の野球を見慣れているものとしてはどうにも違和感しかありません。何だか練習みたいな感じでした。チェコ野球協会公認通訳・ガイドのTetsuro Goda様によると詳しい理由があるようですが――。

・チェコ野球の奮闘

 事前情報によるとバウアー選手が登板するのは4回までとのお話。序盤は丁寧に低めにコントロールされた変化球などを駆使して打ち取っていきチェコ打線を抑えていきます。見たところバウアー選手はおそらく20から30%ほどの力で投げていたでしょう。これは勝手な推測ですが、バウアー選手はチェコの野球をなめているわけではなく、全力で投げてケガをしてしまってはメジャー復帰を目指しているバウアー選手にとって得策ではありません。ましてや、このスイスシリーズは親善試合に近い形の試合なので全力で投げてコントロールミスしてしまい、死球を与えてしまいチェコ代表の選手にケガをさせては日本代表との試合が待っているので申し訳が立ちません。それにこの力を抑えた状態のバウアー選手を打ち崩せないと日本代表の選手から点を取ることも難しいでしょう。

 試合の方ですが2回まで、バウアー選手が巧みな投球術で打ち取っていきますが途中で面白いことがありました。このプラハ・イーグルスパークですが、アメリカや日本のマウンドと比べてマウンドの傾斜は低く、ほぼプラットな状態で投球しなければなりません。プラハに降り立ったばかりのバウアー選手はマウンドの状態に慣れておらず、投球後にスリップする場面がありました。そう考えると、シーズン中の力で投げていたらケガに繋がる可能性があったので恐いものです。以前、2023年のWBCで強豪ドミニカに勝利したプエルトリコ、歓喜の輪の中に試合を締めたメッツの最強クローザーであるディアス選手がケガをしてシーズンを棒に振ってしまった例もあるので、シーズン外の試合というものは野球人生を左右しかねるかもしれないので本当に注意しなければなりません。

 余談が過ぎましたが3回の裏に試合が動きました。なんと、チェコの主砲であるチェルベンカ選手がレフトに鋭い当たりのタイムリーヒットを放ち1点先制したのです。バウアー選手は力をセーブした状態とはいえ1点先制。チェコ野球の歴史の1ページに新たな記録を刻んだ一瞬でした。思えばチェルベンカ選手はインディアンスなど、アメリカのマイナーリーグでプレイしていた経験を持っていますのでなめてかかると痛い目に合う選手であることを忘れていました。昨日の試合でも大活躍し、その映画俳優のような甘いマスクが日本で再び見ることが出来ると思うと楽しみですね。一方のバウアー選手は1点先制されたものの、空中でお手玉のようにボールをポンと投げたりとまだまだ余裕。後続もアウトに締めると続く4回もチェコ打線を抑え、ここでお役御免と思いましたが――。

・まさかの5回登板とチェコのホープ

 5回はピッチャー交代だろうと思っていましたが、なんとこの5回もバウアー選手がマウンドに立つことになりました。最初は5回まで投げると知って、無理に投げても大丈夫かなと余計なことを思いましたが、スイス代表のユニフォームに袖を通したサイヤング賞経験投手を少しでも長く見られることは一人の野球ファンとしては嬉しいものです。

 バウアー選手が5回まで投げるとなるとチェコ側も更に燃えたのでしょうか。ここでまさかまさかの出来事が起こりました。チェコ打線が四球やヒットで塁に出ると、若手のホープであるプロコップ選手が右中間へ2点タイムリーツーベースを放ったのです。プロコップ選手はBCリーグの神奈川フューチャードリームスにも所属していた選手。色々なことがあり思うように力を発揮できずに退団してしまいましたが、この試合で元々持っていたポテンシャルを遺憾なく発揮することが出来ました。後から本人が「バウアー選手は本気ではなかった」とのコメントを述べていたそうですが、今年の11月9日と10日で行われる日本代表との試合では要注意となる選手の一人となります。神奈川時代とこのスイスシリーズの動画を見ただけなので判断はつきにくいのですが、長打を打てるだけでなく逆方向へのバッティングも巧く、足も速い印象が受けたので油断すると痛打される印象を強く持ちました。日本戦での打席が非常に楽しみな選手の一人となりました。

・その他注目選手

 ここまでバウアー選手やチェコ打線の話ばかりしてしまいましたが、この試合では個人的に一人の選手に注目しました。チェコの先発を務めたパディサク選手です。最初映像を見たときは何だか速い球を投げる投手いるぞと思っていたのですが、パディサク選手はこの試合で150キロ越えの速球をバンバン投げていたそうです。(後、映像を見る限りはカーブかスライダーかわかりませんが変化球もキレキレ)
今シーズンはアメリカのジョージア大学で投げており、昨年のWBCの中国戦にも登板していたそうです。巨人のフルプ選手もそうなのですが、チェコからアメリカへ留学し本場の野球を経験することでチェコ野球のレベルを上げていっているのだなあ、とつくづく思いました。それと同時に英語圏の人は世界が広がることを強く感じ、学生時代はもっと真面目に勉強しておけばと頭をよぎりましたが話が脱線するので、作者のつまらない話はここまでとしておきます。兎にも角にもパディサク選手が日本戦で投げるかもしれないので楽しみですね。

・試合はチェコの大勝

 試合の結果ですがバウアー選手から点数をもぎとった勢いに乗り、スイス代表の後続を打ち崩していき、スイスシリーズの第二試合目は12-0の大勝となりました。結果的にチェコ代表はサイヤング賞投手に勝つことが出来たのです。無論、バウアー選手もかなり力を抑えたピッチング出したが勝ちは勝ち、チェコ野球の歴史的な一日となったのでした。

・日本戦へ向けて!

 このスイスシリーズは強化試合と同時に親善試合的な要素が強いものでしたが、チェコ代表選手団の持ち味が遺憾なく発揮した試合でした。油断すると足元をすくわれかねませんチーム状況なのは間違いなし。好調チェコ打線に巨人からフルプ選手が合流するので打線の厚みが増します。また投手陣もサトリア選手や紹介したパディサク選手以外にも、トメク選手など好投手も多いので日本打線がどう攻略するかがカギになりそうです。何れにせよ11月9日と10日の試合が非常に楽しみです。日本国内での放送も決まったので、野球好きの皆さんは尾張の地でチェコ代表の躍動するところを是非観戦して下さい。

≪情報元≫
BaseballCzech(チェコ野球公式) X:@baseballczech_
Tetsuro Goda(Teddy)様 X:@oxygen_torpedo
チェコ野球(Czech Baseball, Český Baseball)様 X:@CzechBaseballJP
ヨーロッパの野球 in チェコvsスイス様 X:@baseball_europe

イラスト:DELL-E3

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