お見送り
若い頃は、それらしきものを
何度か見たことがありますが、
最近は、久しく体験しておりません。
いったい何を見たのか?
といいますと?
それは霊と思しきもの・・・
見た?というか
それらしきものが
いるという体験を
したのは10年位前、
東横線の自由ヶ丘駅での
体験が
最後になるでしょうか?
午後からの仕事で、
東横線に乗り
目的地に向かっていたのですが
自由ヶ丘丘駅に着いて、
母親らしき女性と
小さな男の子が
乗り込んできました。
母親はどうみても喪服、
少年も正装。
葬儀の帰り、という雰囲気。
ふたりは一緒に
乗り込んで来たのですが
少年の方は席に
座ろうともせず
ドア付からホームにいる
誰かに一生懸命に
手を振っています。
発車のベル。
母親が少年に話しかけます。
『誰に手を振っているの?』
『先生』
少年はそう応え、
こう続けます。
『ねえ、先生は
一緒に帰らないの?』
母親はホームをチェックし
少年にこう話しかけます。
『先生は、遠い世界に
行っちゃったのよ。
さっき一緒にサヨナラしてきた
でしょう』
でも少年は、ある場所を
指して、母親にこう応えます。
『だけど、先生
あそこで手を振っているよ』
どこ?
どこ?と
必死に探す母親でしたが、
見つけられないようす、
『先生いないよ?』
『いるつて、ほら、あそこ』
ドアが閉まり、少年は去り行く
ホームに向き直り
『先生、さよなら、さようなら』と
ふたたび一生懸命に
手をふります。
この親子のやりとりを
私は真横で
聞いていたのですが、
私にも、その先生らしき人は
見つけられませんでした。
少年にだけ見ることが
出来た先生。
きっと少年は先生を
先生は少年のことが
大好きだったのでしょうね。
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