メスに吸収されるオス
鍋として食べられることが
多い高級魚のひとつが鮟鱇。
特にプランクトンや小魚が
豊富な常磐沖で捕れた
鮟鱇は特に美味しいことから
「西のふぐ、東のあんこう」
などと比較されます。
鮟鱇がはじめて書物に
登場するのは室町時代。
この時代に食材に
なっていたか?
それは依然謎のままですが、
しかし江戸時代になると
「三鳥二魚」という珍味を
表す言葉が生れ
将軍への献上品になっています。
「三鳥二魚」の5大珍味とは
鶴、雲雀、鷭、鯛、鮟鱇の
こと。
庶民の間でも、その味は人気で
初鰹と同じく大枚をはたいて
買い求められたのでした。
鮟鱇の捌き方として
よく知られる方法は、
吊るし切り。
あの調理法はその江戸時代に
発明され、
1697年、元禄時代に発刊された
『本朝食鑑』』で、
すでに紹介されています。
どうして吊るし切りで
捌かれるのか?
その理由は
深海魚である鮟鱇の皮は
ヌルヌルしていること、
また体も大きい事から
まな板の上では捌きづらく、
吊るして回しながら
捌くという方法が
考案されたのです。
さて、「鮟鱇」の語源ですが、
諸説あって、
例えば大きな口を見て
「あんぐり」しているように
見えることから
名付けられた説。
また特徴的なあの「顎」に
由来し、アゴが、アンゴ、アンゴウなどと
訛った説があります。
ところで私たちが
食べている鮟鱇は、
その多くが頭の先に
アンテナのような
疑似餌となる
提灯状のものを持っている
チョウチンアンコウで、
しかもメスに限られます。
メスのみ…ということには、
ちゃんと理由があって、
チョウチンアンコウのメスは、
最大で体長50センチから
60センチくらいまで成長。
それに対し、オスはというと…
成魚でわずか4センチ程度に
しかなりません。
捕まえてもとても小さ過ぎて
食べることができないという
訳です。
そのアンコウのオスの
珍しい生態ですか、
オスはメスを見つけると
その体に噛みつきます。
その後、お互いの皮膚が
癒合して血管もつながり、
オスはメスからの栄養補給を
受けて生きていくことになります。
そして生殖が終わると、
最後はメスに
吸収されてしまうのです。