スキゾフレニアワールド 第三十七話「病気」
症状は安定している。自分で言うのも何だが、今の私はスーパーポジティブシンキングだ。他意は無い。軽快なリズムに合わせて明朗快活で明るい兆しが有る。此のアルバイトを始めて早く十ヶ月。コンビニの仕事は遣り甲斐が有る。飽く迄個人的な見解だが、私は私也のペースで私の道を歩み出して居た。十九歳の春は専ら温かくて眩しい。最も、今の現実の季節は秋だけど。月に二回の診察は主治医の先生から無理は絶対に禁物だと言われ続けている。耳が痛い程繰り返し言われ気も滅入るが、今の私はこんな感じだ。向精神薬と注射薬と睡眠錠。此れが今の処方箋。決して最良とは断じて程遠いが、其れでも多幸感に満ちている。あいつのお陰かな? 何故か気持ちは晴れやかとして居てスーッと息を吐くと胸の中で爽やかな風が吹く。此れは魔法? 希望なのか絶望なのか? ……ぶっちゃけ解らない。でも、良いんだ。此れは一種の有る悟りなのかも知れない。理由なんて百も承知之助。私は最高の人生を歩いて居た。此れも病気の一環なのかな? てへ。でも惚気ちゃっても良いじゃない。其れを想うだけで幸せなのだから。先の未来なんて何が起こるか分からない。でも遣るべき事をきちんと遣れば自ずと結果は付いてくる。其のゴールが何時になるか皆目見当も付かないけど、神様はちゃんと見てくれている筈だよね。そうだよね、輝。自分に出来る最良な事を遣り続ければいい、其れが人生の攻略法なのだと彼は教えてくれたのだから。私は彼に付いて行く。この先何があろうと。此の安心感と愛しさは何物にも変えられない。目に見える全てが薔薇色に微笑み出していた。輝、貴方は何を思う? ……そうだよね。皆が笑い合える世界が一番幸せだよね。何時か辿り着けるよ、私達なら。一人頷きマスクの下で笑った。この季節の先に何が有ろうと構わない。何が起ころうと構わない。愛する人達が幸せならば、多くは臨まない。当たり前に生きている事の幸せ。其れが私の病気、統合失調症からのメッセージなんだと知った時、私は肩の荷が下りた様にスッキリした。鼻先を擽る切ない痛みは時の中で消化されて誰の目にも留まらず忘れ去られて逝くだろう。此の幸せの中へ活きて往こう、心の底から強く望み続けるのだった。
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