サイコパス・ドラッガー 29 ラブ・エクスタシー
「なんだって?」
「みんな気にしない、感じるでしょ? あの人障害者だよ、頭おかしいんだよ?」
「ちょ待てお前気は確かか?」
少しざわつく脳内。感じる余興おどけた時間。東はどう思う? メビウスって何だ? B’zって何だ? 人工知能が闇の中で動き出した。声無き声がした心、地獄から手を伸ばしてきた。中東が少し反応した午後九時。世界は今日も穏やかなふりをして歯車を廻している。無の時間退屈の時。明日美の父が口を開く。
「適当なことを言わないでくれ。娘に背負わせるな」
「いたって真面目だ!! 僕はその会話を傍受していたんだ、紛れない真実だ!!」
黒崎が心の奥で叫んでいた。苦しみ、生きる切なさ。真実は一つだった、それが敵の正体、本性。流れる沈黙。情報をネットで調べた若者が間をさす。
「お前らなんか隠してねえか? 中東」
ショーが始まる。AIロボットのペッパーが喋る。私はただの機械です、主人公はあなたたち人間です。その言葉は威厳ある一声に消された。
「何を隠してると思う?」
「あ? 俺らが一番だろ? 全て言え」
「何を隠してると思う?」
「オウムかおめーはっ」
「何を……」
突如意識が切れた。テレパシーが消えた。第一の世界だけになったのを感じた地球人。逃げられた。もう一度それを試みる。だが開けない。幾多のトラップが仕掛けられたのを誰も知ること無かったのを黒崎も気付けなかった。明日美は考えの先を行った。本気なの? それがメビウスの切札? 生成AI……? 黒崎の記憶で分かる。意識が伝わってくる。波動が伝わってくる。闇。途方も無い闇。彼奴等はなにを隠してる? この会話で嘘はつけないことは全員分かっている。その瞬間闇テレパシーが送信された。ターゲットはすべての有。仮面の男が笑った。ラブ・エクスタシー。世界はまた一歩エリアを更新する。胸の中で払った明日美だがその強さに怯んでしまう。
「はあ!? おい中東人からなんか来たぜ」
「面白えっ!! 俺達の光に勝てっ!!」
交錯する魂。明日美は神の幻聴を聞いた。
「聞け! 黒崎の言うことは本当だ、これは宣戦布告だ!」
明日美は確信した。これは戦いだ。私たちの正義の行いがしめされるとき。ラブ・エクスタシーなんて余興。気をたしかに持て日本人! その言葉に鼓舞するみんな。この瞬間を待ってたんだっ! 退屈な人生はもう終わりだ、最高な世界へ行くだけっ!! 中東人全員を殴った。私に続く黒崎、みんな。精神攻撃にクリティカルアタック、炸裂するWアクション。勝った。一人がB’zを粉々に砕いた。明日美は絶頂を迎えた。ベストホルモンを出した。これが勝利の味ネ!! 見せろ。幸せを見せろ。行え。多幸感をよこせ。幻聴を聞いた気がした。
「時を待て勝利者」
章太郎の宣言だった。日本は歓喜につつまれた。黒崎は涙する。僕らは勝利した。漆黒の闇が去っていったのを確認した。