スキゾフレニアワールド 第二十五話「同窓会」
皆相変わらずだった。社会人になって早一年。元クラスメイトの級友達は僕以外略就職やアルバイト也何かしら手に職を持っており、其れ也の新生活を楽しんでいたらしい。飲酒は当然あと一年は禁止だったので流石の玉井先生も勧めなかったが、其れでも思い出話に花を咲かせた。有名企業にスカウトされただの、一流大学に入学しただの、早い人は結婚の話を持出されただの。僕だけニートという無職柄、大きな顔は出来なくて少し肩身の狭い思いをしたがそれでも此の思い出も記憶に残ると思うと、感慨深い物は有った。二次会の話も有ったが興味の無い僕には縁もゆかりも無い事だったのでプータローは早く帰る最後で落ち着いた。でも。笑顔の裏で誰もが気にしていた。雨宮涼子の存在を。僕には分かった。電車での帰り道、偶々一緒だった梅澤と手摺に持たれながらつい本音を漏らした。
「どうしてるだろうな。雨宮」
「支援学校を卒業したって話までしか知らないな」
「あいつ、最後まで一人だったな」
「お前が他人を心配するなんて珍しいな。LINEでも送ってみたらどうだ?」
「そういう系だ」
「……」
梅澤は何も言って来なかった。彼女は級友達の中で忘れ去られてしまった存在なのか。無性に虚しくなった僕は其れ以降揺れ動く電車の中で一言も発する事が出来なく成って居た。只の過去。彼女もそう処理される。大人社会の歯車と成って働かされる若人は脳内のデータを半ば強制的に上書きされ更新する。そのスピードに追い付けなくて足掻けば彼女と同じ様に「発病」する。障害者。一億総活躍社会は銘打って大体的に講じられたが現実は此れだ。まだまだ心の中で其の壁は取れなくてガードをしてしまう。自分達の領域に入って欲しく無くてその感覚に蓋をして仕舞う。其れで終わり。居場所なんて創れない。ある程度優遇される場所など決まっている。守屋と云う画家なんて稀であり日本人である前に健常者なら誰もがそんな『目』で見てしまう。僕は其れを涼子と重ねて思う。精神障害者。統合失調症。其れが彼女に用意されたステージなら舞台上人生と云うスポットライトを浴びて生きる喜びを謳歌して欲しい。涼子は涼子也の答を示して欲しい。僕にはそう思えて成らなかった。何故分かり合えないのか。外見や能力の違いか。心の形に齟齬が生じるせいか。僕等は答えをまだ見出せて居ない。でも、今日飲み会に行った意味なら必ず有る。そう思いたいだけなのかも知れない。僕はベッドの中で試行錯誤した自分を客観的に嘲笑った。社会とは誰が決めたルールで動いているのか。障害者の居るべき世界とは。分かり合えた先に有る結末とは。眠れない日々が続く。