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雑記7 最近観たホラー映画7ーー「エルム街の悪夢」「貞子VS伽耶子」ーー

 「エルム街の悪夢」はとてもよい作品だった。9点を差し上げたい。夢の世界の気持ち悪いイメージや鉄爪のデザイン、いやな雰囲気を残して終わるオチなど全てが噛み合っている。夢の世界からやってくるスラッシャーというのは非常に独創的で、他に類を見ないだろう。古今東西、夢に関する話は多いが、「不思議な国のアリス」のように夢の世界に行って帰って来るというパターンが多い。それとは逆に本作では、夢の方が現実に干渉してきている。夢と現実の関連については、吉夢を買って幸福を手に入れる夢買い譚や予知夢など、間接的な関わりのものが多いが、夢に出てきて性的に誘惑する夢魔の逸話は、夢精や妊娠という形で直截的に現実へ作用する。夢魔と人間の子供として一番有名なのはアーサー王物語のマーリンだろう。夢の中の行為の結果が、現実に反映される点は本作の源泉となった可能性があり、インキュバスやサキュバスがレイプなりセックスなりを行うのに対し、フレディは殺人を行っている。フレディの特徴である、夢の世界からの顕現というネタは珍しいものだが、類例がないわけでもない。『丹後国風土記』には、夢路を通って神仙の国へ行き、再び夢を経由して現実の世界に帰ってきた筒川嶋子という男の話が載っている。彼は出発の日から三百年も経っていることに絶望し、開けてはならないと言われて持たされた箱を開き、昇天する。概略から分かるように、この話は「浦島太郎」の元ネタとして知られ、神仙の国は夢の世界ともとれるように描かれている。仮にそうだとするなら、彼がもらった箱は夢の国から現実に持ち込まれたものということになる。
 「貞子VS伽耶子」という名前からはふざけたアクション作品が連想されるが、名前の持つ怪獣映画的イメージとは裏腹に中身はハイレベルな正統派ホラーである。8点。よく見えない、理由がない、動きが普通でない、といった三つの「ない」(と勝手に呼んでいる)が「リング」や「呪怨」に代表されるJホラーの特色で、この作品にはそれらの要素が惜しみなく盛り込まれている。この手のクロスオーバー作品は元の作品の知名度や面白さに支えられている面があるが、それを差し引いてもかなり面白い。話の展開はテンポがよく、貞子と伽耶子のいわくを手際よくまとめているのも感心した。呪いのビデオの死亡期限は「リング」だと七日だったが、本作では「呪怨」の要素と組み合わせるため二日に短縮されており、結果、物語がスピーディーになっている。また、貞子の髪を操る能力もオリジナルな設定だと思われる。直接的な暴力を振るう伽耶子と、戦闘スタイルを差別化するため改変したんだろう。それにしても本作といい、「オカルトの森へようこそ」といい、監督の白石晃士は霊能力者がよっぽど好きらしい。両作とも、敵に対抗する霊能者が登場しているし、未見だが、「ノロイ」にも出てくるらしい。噛ませ犬が出た後に本命がやってくる点も本作と「オカルトの森」で共通する。もしかしたら「エクソシスト」が好きなのかもしれない。

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