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92歳 三石巌のどうぞお先に 33

三石巌が1994年から産経新聞に掲載していた「92歳 三石巌のどうぞお先に」の記事を掲載させたいただきます。(全49回)


NK細胞の減少

ストレスがいちばんの敵

 NK(ナチュラルキラー)細胞をふやすための条件はなんだったっけ。それは高タンパク食であり、キトサンであり、笑いでありってことになったが、それだけで十分だなんていっちゃいない。
 もうひとつだいじな条件があるんだが、そいつはあとまわしにして、NK細胞が減る話をしなくちゃならん。これはふだんの心がけにかかわってくる大問題なんだ。
 キミは、うんとくたびれたときや、心配ごと悩みごとのあるとき、カゼぎみになった経験をもっているんじゃないかな。
 ストレスってもののあることをキミは知っているだろう。過労も心配もそれだ。いや、飢え・渇き・暑さ・寒さなんかもそれだ。ストレスを野放しにしたらからだはまいっちゃう。そこで、副腎(じん)皮質は抗ストレスホルモンをだしてストレスに対抗する。コーチゾンがその代表。いわゆるステロイドホルモンだ。
 意地のわるい話なんだが、NK細胞にはコーチゾンをうけとるポケットがついている。それをうけとって、すましこんでいられるならいいんだが、死んじゃうんだ。NK細胞にとって、コーチゾンのなかまは毒薬みたいなものだ。
 つまり、ストレスがあるとNK細胞の数は減るってことだな。
 ステロイドホルモンがきく病気は二百もあるそうだ。だから、ステロイドホルモンをのまされるケースはうんとある。それがNK細胞を殺すってことは、おぼえておいたほうがよさそうだな。
 ここまで話がわかってくると、NK細胞のいちばんの敵はストレスだってことになる。これはわすれちゃいかん。
 ストレスについてはもうひとついやなことがある。ストレスがあると抗ストレスホルモン、つまりステロイドホルモンがでてくる。これがこわいんだな。
 抗ストレスホルモンは副腎皮質でつくられるやつなんだが、これをつくるとき活性酸素がでてくる。これだけですめばいいんだが、それを分解するときにも活性酸素がでてくるんだ。
 こいつは以前から書いているように、電子ドロボーだよ、おぼえているだろう。
 ストレスってやつは精神的なものだが、肉体的なものよりしつこい。活性酸素がひっきりなしにでてくる。NK細胞はがた減りだ。
 スカベンジャー(老化などの元凶とされる活性酸素をしまつする物質の総称)不足だと、がん細胞がじゃんじゃんわく。転移がん細胞は大手をふるって血管の旅をつづける。おそろしい話だろう。

三石理論研究所


三石巌
1901年 東京都出身
東京大学理学部物理学科、同工学部大学院卒。
日大、慶大、武蔵大、津田塾大、清泉女子大の教授を歴任。
理科全般にわたる教科書や子供の科学読み物から専門書にいたる著作は300冊余。
1982年 81歳の時、自身の栄養学を実践するために起業を決意し、株式会社メグビーを設立。
1997年 95歳で亡くなるまで講演・執筆活動による啓発につとめ、
生涯現役を全うした。


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