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成人病の予防とその自然治癒について-4

三石巌の書籍で、現在絶版して読むことができない物の中から、その内容を少しずつですが皆様にご紹介させていただきます。

全7回シリーズの第4回目となります。講演(口語)を文章にしているため、読みにくい部分もあるかと思いますが、三石巌の考え方を知ることができる貴重な内容ですので、是非お読みいただけますと幸いです。

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第4回目(全7回シリーズ)

 こちらには、お医者さんがいらっしゃるのですけれども、高血圧の話をさせていただこうと思います。
 皆さんもご承知のように、ハワイには、大勢日本人がいます。
 沖縄の方も行ってらっしゃるでしょうが、ハワイには、日系の人と、白人の系統の人とが、ほぼ半数ぐらいずついるんですね。
 この人たちについて調べてみますと、どうも、統計的に高血圧が日本人の系統の人に多い。そして白人系の人には少ない。
 これは昔から知られていることなんですけれども……。

 ハワイ大学に、ヒルカーという先生がいらっしゃいまして、これは日本人は漬けものだの、味噌汁だので、食塩をたくさん摂っている。塩辛いものを食べているから、それで血圧が高くなっているのだろうと、こう思ったんですよ。それではひとつ実験をしてみよう、といっても人間でするわけにゆきませんから、ネズミを使ってやりました。
 ネズミの群れを二手に分けまして、こちらの群れには日本食を、もう一方の群れには洋食を与えてみたんです。すると、案の定、日本食のネズミは高血圧になりました。洋食を食べたネズミのほうは高血圧にならなかったんですよ。そこで、これはてっきり塩けのせいだと思って、日本食から塩けを取ってみたんです。さっぱり塩けのない日本食を与えたんですね。それでもやっぱり、日本食ネズミのほうが血圧が高かったんです。そこでヒルカー先生はどのように考えたかというと、日本人の食事はタンパク質が少ない。するとこれは、タンパク質が少ないと高血圧になるんであって、塩けが多いせいではないと、こういうように結論付けたわけです。
 みなさんは、たぶんお魚をたくさん食べていらっしゃるでしょうから、タンパク質をじゅうぶんとっていると思っていらっしゃるかもしれません。けれども、私にいわせれば、それはまたあやしいことになります。
 実は、世界中ーーー世界中というと、アメリカも、イギリスも、ドイツも、フランスも、日本も、中国も、まだいっぱいありますが、すべての国の人で、タンパク質をとり過ぎている人はひとりもいない、ということになっているんです。けれども、こういうことは、日本の厚生省(現厚生労働省)では言わないんですよ。日本人は、タンパク質は足りていますと、厚生省はいっています。けれども、これはウソなんです。でもそれは、ウソをつくことになるのも無理はないと言えば言えるんですよ。
 そういうことはあります。というのは、もし日本人の全部がタンパク質を十分に摂ったとすると、これは足りません。タンパク資源は足りないんですよ。世界的にも、無論足りません。
 国連に、世界保健機構というのがありますね。これは、世界の人びとの健康状態などを調べている機構ですけれども。そこではもう、苦肉の策といいますか、窮余の策として、タンパク質はそんなにたくさんいらないんだという発表をしたんです。
 昔、国連では、体重1キログラム当たり1.01グラムのタンパク質が必要だ、と言っていました。それが数年前になりまして、これを訂正して、0.59グラムでよろしいと変えました。
 こういうインチキな数字を出してきたんです。ずっと体重1キロ当たり1.01グラムといってきたのに、0.59グラムに変えてしまいました。これは、こういわないと、世界中でタンパク質が足りなくなるからです。つまり、一人ひとりの割り当てを減らされたわけです。
 これは政治的に決められたことになります。しかし、自然の自己運動というものは、政治的なものではありませんから、身体の中のことは自然によって起こっているんだから、そんな取り決めなんかとは無関係であって、身体の要求は0.59グラムよりも多いんですよ。
 自然の自己運動の中で身体の要求するタンパク質の量は、国連が前に言っていただけ必要なんです。体重1キログラム当たり1.01グラムですね。それを半分近くに切り下げちゃった。そういう政治的なことがあるんです。

 日本の厚生省が発表していることも、まあ政治的見地であると、こうぼかして言っておいた方がいいでしょう。日本人は、平均すればタンパク質を体重当たり1.01グラム摂っていることになっています。
 日本人の食生活は、アフリカとか、インドネシアとかに比べると、ずっといいですから、はるかにタンパクを多く摂っています。1.01グラムより多いでしょう。すると、それならいいじゃあないか、とこうお考えになるかもしれませんが、タンパク質というものは、いろいろ”質”がありまして、良質タンパクと非良質タンパクとがあるんです。そして、さっきお話したことは、良質タンパクで1.01グラムでなくてはいけないと言ってるわけです。ところが、厚生省の言う、日本人はタンパクを十分摂っているということは、非良質も良質も全部ひっくるめちゃってるんです。そのために、数字がウソになってしまっているんですよ。
 要するに、日本人の食事ーーー和食では、タンパク質は足りません。そのことは、ハワイ大学のヒルカー教授の実験によって分かっている通りです。和食ばかり食べているとタンパク質が足りない。そのために高血圧になる。これはまったく自然の自己運動であって、それ以外のものではありません。
 それでは、高血圧はどのようにして起きるのか、と言いますと、これはタンパク質が多いか少ないかによって決まることを申し上げましたが、それ以外の要因もあるのです。これについては、後でお話しましょう。

 まず、タンパク質が多いか少ないかで決まるということですね。これもネズミによる実験がありまして、ネズミを二手に分けます。
 そして、タンパク質をたくさん与えたネズミと、少ししか与えなかったネズミとで比較をする。その結果というのは、解剖して動脈をくらべたわけです。
 解剖して、動脈をひっぱりだして、こんな具合にひっぱってみるんです。ちょうどゴムを伸ばすようにですね。すると、タンパク質の足りないネズミの動脈は、すぐに切れてしまうんですけれども、タンパク質を十分に与えたネズミのは、二倍ぐらいに引き延ばしても切れないんですよ。そこでそれはどうしてなのか、という話をしなければなりません。
 それには、動脈硬化という言葉がありますね。これについてお話しすることになります。動脈硬化というのは、細い動脈の細小動脈硬化と、大きい動脈の硬化と、二種類ありまして、細小動脈硬化というのが、直に高血圧に繋がってくるわけです。
 細い動脈、これは細動脈といっても、小動脈といっても、細小動脈と言ってもよろしいんです。

細小動脈の硬化ーーーこればどんな現象なのかといいますと、動脈というものは、大体こういう管です。

 この図は管を切ったところとしますね。こんなふうに三つの層からできています。真ん中に筋肉の層があって、外にコラーゲンというものの層があります。
 コラーゲンと言ってるものも、筋肉も、タンパク質です。内側は内皮と言うところですが、今ここでは、これは別にして、筋肉層とコラーゲン層と、この二つを問題にします。これはどちらもタンパク質です。これが問題になるんです。
 コラーゲンというタンパク質は、たとえば電気釜のような、かなり多い電流を通すものでは、コードの外側に編んだようなものがかぶせてありますね、糸で編んだようなものが。動脈もちょうどそういうぐあいのものなんです。コラーゲンも、糸のようなものーーー繊維ですから。これは繊維状タンパクとよばれています。
 コードには、被覆と言いますか、カバーと言いますか、そういうものが一番外側にあるが、動脈にも丁度ああいう具合に糸が通っている。その糸のことをコラーゲンというんだと思っていただいて結構なんです。
 このコラーゲンというものは、糸が絡み合って、ねじれて、螺旋になっています。だからこれは、弾力を持っています。そういうものが、ずっと並んでいまして、それからまたそれに交差するように並んで、ちょうど網目のようになって、ここのところができています。

するとこれは螺旋ですから、ちょうど、バネみたいになっていますから、弾力があるんですよ。

 血液が動脈へ入っていきますと、圧力がかかりますから、血管は膨らむわけです。膨らまなければならないでしょう。膨らむ時に、コラーゲンはバネになっているから伸びます。弾力がありますから。そうしますと、血圧がここのところにかかったとき、ふわっと膨れてくれたら、圧力は高くならないですね。弾力があれば圧力は高くなりません。弾力がないと、血液が流れこんだとき、血管が膨らむことができないから、圧力が強くかかります。圧が高くなる。
 ですから、細小動脈の外側のコラーゲン層の弾力がなくなったら、これは高血圧というものになるんです。弾力がない、とはどう言うことかというと、コラーゲンがちゃんとしていない、三つ編みになっていないということです。
 コラーゲンの糸は、三本が集まって三つ編みになります。
 この三つ編みがきちんとできていないといけないんですね。さきほどコラーゲンはタンパク質だといいました。

 すると、私たちが毎日食べるタンパク質というのは、この血管のコラーゲンの原料でもあるわけですね。それからまた筋肉などもタンパク質ですから、そういうものの原料でもあります。

〜次回へつづく〜

三石巌全業績27『講演集I〜健康の自己管理について〜』P19〜26より
※本文中の表現は、講演内容を教え子たちがテープから文章に起こしたものを、出版当時(1982年)のまま掲載しておりますが、一部読みやすく編集しております。


三石巌 全業績 27 「講演集1」より抜粋
出版社:現代書林
発売日:1983/1/20



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