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92歳 三石巌のどうぞお先に 30
三石巌が1994年から産経新聞に掲載していた「92歳 三石巌のどうぞお先に」の記事を掲載させたいただきます。(全49回)
NK細胞とがん細胞
ひっきりなしに跳びはねる
キトサンやキチンもひとつの物質じゃない。そのなかには化学処理をしたいろいろな物質が含まれてる。キトサンのはたらきについて前にいったのは、NK(ナチュラル・キラー)細胞の活性化だった。がん細胞の天敵をいきおいづけることだ。
いいことを聞いた。さっそく(キトサンを含む)カニの甲羅のくすりをやってみよう、とがん患者が考えたとしよう。これは名案なのかどうか。
医者先生にがんだといわれたとき、それがあたっていたとして、問題の細胞の数はすでに十億をこしているんだ。それを根こそぎやっつけることが、NK細胞にできると考えていいのかどうか。
サルノコシカケがいいとかカワラタケがきくとか、よくいわれるだろう。きくとすれば、それはキトサンのはずだとボクは思う。キトサンには、NK細胞を賦活(ふかつ)するはたらきのほかに、NK細胞を増やすはたらきもある、という話もある。こっちのほうはホントかどうか知らんがね。
ここまでの話で、キミはNK細胞をがん予防の切り札みたいに思ったんじゃないかな。それでなけりゃカニの甲羅なんかにカネを出すいわれもないわけだろう。
そこに水をさすつもりはないが、NK細胞とがん細胞との関係について、もう少し考えてみる必要があるんだ。
NK細胞は血中にある。そのおなじ血中にがん細胞もあるとしよう。話を簡単にするために、どっちの細胞も一つずつとしておこう。NK細胞はどうやってがん細胞にからみつくのだろうか。
どっちの細胞も泳げるわけじゃないから、NK細胞が追いかけることも、がん細胞がにげることもないわけだ。しかし、血液は流れているんだから、両方ともそれに流されている。
ところが、どっちも勝手にヒョイヒョイとひっきりなしにとびはねるんだな。水の分子がすごいスピードでぶつかって、細胞をはじきとばしているからなんだ。おもしろいだろう。
むかしとちがって健康状態をつかもうとすると、すぐに血液検査とくる。そこにはわんさと数字がならんでいるだろう。GOTとかなんとか、そこには書いてある。あれのほとんど全部は、水分子にはじきとばされてとびはねているんだ。NK細胞や赤血球やコレステロールで、血中はごったがえしなんだな。
三石巌
1901年 東京都出身
東京大学理学部物理学科、同工学部大学院卒。
日大、慶大、武蔵大、津田塾大、清泉女子大の教授を歴任。
理科全般にわたる教科書や子供の科学読み物から専門書にいたる著作は300冊余。
1982年 81歳の時、自身の栄養学を実践するために起業を決意し、株式会社メグビーを設立。
1997年 95歳で亡くなるまで講演・執筆活動による啓発につとめ、
生涯現役を全うした。