『鳥獣戯画糊』
そのニュースを耳にして、俺はこれだ!と思った。
『国宝鳥獣戯画に新発見』
踊る見出しの内容はこうだ。あの誰もが知る鳥獣戯画は、実は墨絵ではなく貼り絵だった。しかも特殊な糊(鳥獣戯画糊と名付けられた)により兎や蛙は生きたまま貼り付けられているというのだ。
これが、相棒を解放してやる手がかりになるかもしれない。
俺はすぐさまその研究所の場所を調べあげ、そこへ向かった。
無論、一般の人間がすんなり入れてもらえるわけがない。何度も門前払いを食らった。その度に相棒が言う。
「根性だ!根性!」
こういうとき相棒は頼りになる。
ようやく研究所長に会うことができた俺だったが、そこで肩を落とすことになる。
「鳥獣戯画糊の解明は進んでいなくてね。どうやって貼り付いているかさえ不明なんだ。剥がす方法なんてそのまた先の話さ」
そう所長は言った。
あの事故から数十年、ようやく相棒を救ってやれると思ったのに。
そのとき、胸の辺りで声がした。
「がっかりするなよ、ひろし。オイラはこれでもお前と一緒で幸せなんだぜ」
シャツに貼り付いた平面カエル。その優しさに俺は泣いた。涙をぬぐったトックリシャツの袖が少し濡れた。
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