風の診療所『調』"Retreat Garden"
僕は今医師免許取得に向けて受験勉強を始めた。来年度、北海道大学の医学部に合格することを目指している。そんな中で、そのことを友人に話したりする中で、僕は医者になったとして、何科に興味があるかという話になった。僕は現時点で、精神科と外科に興味があるという話をした。精神科は僕自身かかったこともあり、直接触れたことのある存在として、想像できることころもあり、興味があるといった、ところではある。外科に関しては、直接触れたことはなく、漫画の中でしか見たことのない世界ではあるが、いかんせん人の身体に肉薄する仕事ということで、僕は大変興味を持つ仕事なのだ。人の人体の奥に広がる宇宙に飛び込んでみたい。そんな自分の心の奥底からの声が聴こえる。僕はその声に耳を傾ける。やらなければならないことはたくさんある気がするけれど、それをこなしてでも辿り着きたい場所がある。そんなことを僕は僕に今語りかけて来ている。
いつも何度でも、を歌いたくなる。千と千尋の神隠し、を見たくなる。ある夜、僕は当時付き合っていた彼女と、都内の漫画喫茶の個室ルームで、千と千尋の神隠しを見た。僕は、はくが龍になって千尋と空を飛ぶシーンになった時、そのあまりの透明感に涙が溢れてとまらなくなったのを覚えている。嬉しい訳でもない。悲しい訳でもない。ただただ、透き通ったその風景に、物語に、演出に、言葉に、ただただ感動していたんだ。僕がすっかり置き去りにして来たもの、うっかり目を逸らして来たものがその映像の中に立ち現れて、僕の心身をどこまでも浄化していった。突き抜けてそして溶け出していったんだ。僕の身体に巣食っていた氷の塊のようなものを。僕の脳内に刷り込まれた頭を掻きむしりたくなる程の騒音を。僕の人生を支配する、どうしようもない劣等感と渇望感を。一瞬にして全て吹っ飛ばしてしまった。空っぽになったんだ。そこに意味は何もなかった。ただただ、そこにあるものがそこにあるだけで、世界はその時はじめて僕に笑いかけるようだった。
ああ、僕はいったい今まで何をこんなにも恐れていたんだろう。いったい何をこんなにも求めて来たんだろう。全ては僕の内側から生まれたものではなく、僕がいつのまにか関心を寄せるようになったものばかりで、それは全て外側にあるものだった。つまりそれは世界そのものとは切り離された存在。僕はその騒音の中で人生を考え、悩み、苦しんでいた。しかしそれは世界そのものではないが故に、ある意味では無駄な考えであり、悩みであり、苦しみであったのだ。本当に考え、悩み、苦しむとはどういうことか?それはその騒音の外に出て、自らの内側から湧き上がる声に耳を傾けるということ。そしてその声の中で考え、悩み、苦しむということ。本当に聴くということはそういうことなのではないかと思う。本当に歌うということはそういうことなのではないかと思う。
騒音を騒音として区別すること。まずはそこからはじめてみよう。区別出来る様になればなるほど、人生は深みを増していく。人生は楽しくなっていく。人生は希望に満ちたものになっていく。世界はその姿を表しはじめる。僕は僕のありのままを、世界に存在させる事ができるようになっていく。
記憶を取り出すには記憶を破壊して創造する必要がある。僕の記憶が僕を縛り付け、僕の記憶が僕を解放する。記憶もまた、騒音によって掻き消される。頭の中で鳴る騒音は本当に恐ろしい。危険だ。しかし、それもまた確かにそこにあるものなのだ。まずはそれを認めること。抵抗しないこと。観察すること。共にあること。排除するのではなく、共に生きる道を模索すること。
この騒音と僕はどうやって共存していく事ができるのか。それが今現在僕の直面している課題である。これはとても大切な事が。ここが明確になっていることは素晴らしい。この頭の中で鳴り響く騒音。しかし、彼らは彼らで何らかの役割を持ってこの世界に生まれて来たのだ。だから僕はその役割を見つけたい。害虫が人間が作り出した存在であるように、騒音というのも人間が作り出した存在だから。それすらもまた幻想なのだ。それすらもまた騒音なのだ。世界は空っぽであり、そこに本来意味はないのだから。
手を繋ごう。君と一緒に生きていこう。僕は君のことを愛している。愛し合ってるかい?と清志郎さんの歌う声が聴こえる。オーティスが歌う声が聴こえる。僕は愛している。この騒音を。僕は共に生きていきたいと思っている。この騒音を。止めることはできないから、共に生きる道を模索するのだ。悪いことも、変える必要があることも何一つありはしないのだ。ただそこにあることを認めるだけだ。ただそこにあるものと共にあることだ。"May the forth be with you"。フォースと共にあらんことを。
スターウォーズで語られていたことの真髄はその辺りにあるような気がする。この頭の中に鳴り響く騒音。その騒音を区別して、自分の内側から聴こえてくる声。それと共にいるということ。それだ、それなんだ。自分の内側から聴こえてくる声と共にあること。それがフォースと共にあるということなんだ。そのために騒音と自分の内側から湧き上がる声とを区別する必要があるんだ。騒音は、例えるなら暗黒面の力だ。それはとてつもない力を持っているのだ。暗黒面に引きずり込まれないように。フォースと共にあることだ。自分の内側から湧き上がる声と共にあることだ。フォースは実在する。
スターウォーズを小学生の時、近所の友人の家で大きなテレビ越しに見ていたのを思い出す。あの時間も大切なものだったのだ。今の僕に繋がる、大切な大切な思い出。僕は、彼の、篠塚君の家で、良く遊びに行っていた。スターウォーズのパソコンゲームにも熱中していた。すごく楽しかった。何もかも忘れて没頭していた。画面越しに広がる宇宙に心を奪われていた。そこにはあらゆる世界の秘密や、それを伝えるための技術が凝縮されていた。僕と彼との間だけで分かち合われる秘密だった。スターウォーズのパソコンゲームが僕をつくる訳ではない。僕がスターウォーズのパソコンゲームをつくるのだ。その事が今ようやく分かった。その事自体は、そのもの自体は何も生み出しはしないし、何も奪いはしないのだ。そこに触れた時、自らが何を失うのか。そこに触れた時、自らが何を生み出すのか。全てはそこから始まり、全てはそこは集約されていく。言葉が世界を創るのだ。僕は言葉の奴隷であり、僕は言葉の使者でもある。言葉の力は絶大だ。僕は今その可能性に直面して、震える程の興奮を覚えている。言葉で何でも作り出す事ができる。言葉で何でも深くまで潜る事ができる。言葉で世界を探求する事ができる。
今僕が見てるこの瞬間の景色すら、僕の言葉が生み出しているものなんだ。今僕が見ているこの瞬間の景色すら、僕は僕の言葉で創作する事ができるのだ。これはとてつもない事だ。驚くべき事だ。興奮を抑える事ができない。僕は僕を超えて、ついに僕として生きることのできる入り口に立つ事ができたのかもしれない。僕はやるんだ。新しい朝日に照らされて。僕は歌うんだ。古い夕日に支えられて。僕は創るんた。今この瞬間に目の前に存在する奇跡そのものを。僕は表すんだ。知らないことすら知らない世界を。言葉で創作するんだ。まだ誰も見たことのない美しい調べを。
調という男の子が1人いる。彼とは織座農園で、2020年の5月か6月頃に出会ったろうか。はじめましての印象は、照れ屋でわんぱくな男の子。それはある意味今でも変わってない。しかしそれ以上に僕の中で彼の存在は
とても大きいのだ。彼は2021年6月頃に僕が当時住んでいた自分の家で台所ライブなるものを開催した時、ライブ後に2人で過ごす時間が1時間くらいあった。その時僕は、ブルーハーツの、"歩く花"という歌を弾き語りしたのだが、その歌を聴いている時の彼の眼差し、佇まい、態度に僕は心打たれてしまった。じっと耳を澄ませてその歌の世界の中に没頭している。彼にはいったい何が聴こえていたのか。彼にはいったいどんな景色が見えていたのか。彼にはいったいどんな想いが湧き上がって来ていたのか。僕には知る由もないが、それでも彼がその時、音楽というものの深みに潜り込んで、その真髄に触れ、頭の中でオーケストラの演奏を指揮しているだろう事が想像できるような彼の表情だったのだ。僕は非常に嬉しかった。森の中にひっそりと佇む僕の家、その一部屋が、まるで宇宙空間を遊泳しているかのような、壮大な響きと広がり、空間の深みへと誘われ、記憶が記憶へと連鎖を起こし、まるで数千年前にもこの時この場所で同じ事が起きたかのような錯覚に囚われるほどに時を超え、自分を超え、世界を超えていくような瞬間が立ち現れていたのだ。
僕は調の中に、偉大な音楽家の存在を感じとった。彼の中に存在する音楽家は、森の風を呼び、水の動きを感じて、月の光を浴びながら、星の軌道を心に浮かべて、空間に散りばめられた光の粒子を集めて、星座の中に空高く放り投げ、流星のごとく輝く音にして世界中にその幸せをばら撒いていく。僕はその音楽に平伏すような思いで身を委ねる。とてつもない安心感と、包み込まれるような優しさ、そして温かさ。誰も置いていかないし、誰も取り残しはしない。全ての存在がその中に含まれている。本当に大きな器の中で、僕は安心して遊ぶ事ができる。何をしても良い訳じゃない。自分の声を歌い上げること。ただひとつそのことに尽きるのだ。そして皆が皆、自分の声を歌い上げる場が生まれた時に、オーケストラは息をひとつに合わせて、聴いたこともない交響曲を宇宙に響かせる。それは地球交響曲だ。この地球だからこそ歌えること。この地球だかこそ奏でることのできる旋律があるのだ。僕はその音楽を聴いて、全てを忘れた。未来なんて空っぽで、過去なんて空っぽで、現在なんて空っぽだった。もうどうでもよかった。ジョナサン。音速の壁に。ジョナサン。きりもみする。本当そうだよな。どうなっても良いよな。本当そうだよな。どうなっても良いよな。
一発目の弾丸は眼球に命中
頭蓋骨を飛び越えて僕の胸に
二発目はやはり鼓膜を突き破り僕の胸に
それは僕の心臓ではなく
それは僕の心に刺さった
リアルよりリアリティ
リアルよりリアリティ
リアルよりリアリティ
リアルよりリアリティ
リアル
Retreat Garden
母さんあなたの言葉は正論で
ぐうの音も出ない僕は僕のことを知らない
何者であるかは問われない
試験勉強にはもううんざりしてきたとこさ
運転手さんそのバスに僕も乗っけてくれないか
行き先なら北の国が良い
ブルーハーツの青空を何度も歌った
横浜駅の路上の夜空は真っ黒だった
君が結婚すること昨日の電話ではじめて知ったよ
嬉しかったなそして少しの寂しさもあった
長渕剛の乾杯を歌ってあげたくなったよ
キャンドルライトの中の2人を今こうして目を細めてる
そうだこの歌を君の結婚祝いに捧げよう
愛してるの響きだけで強くなれる気がしたよ
大丈夫だろって言ってくれたよな
その言葉想像以上に騒がしい未来を俺にくれそうだぜ
どんな苦しいことがこれまであった?
どんな楽しいことがこれまであった?
ゆっくり語る時間もないのなら
こうして歌の中で想像を膨らませてみる
お前の0.1%も俺は知らないけど
俺の知ってる0.1%のお前を俺は愛してる
もっと見せてくれなんて言うつもりはないぜ
ただ可能性の塊であることだけは伝えておきたい
告白するけど俺はお前が羨ましかったんだ
着実に必要なことを積み重ねながら人生を楽しんで生きてるお前のことが
今だってそんな気持ちがないでもないよ
結婚しちゃったかあ置いていくなよ
なんて思う俺もいる訳さ
別に置いてかれてる訳じゃないのにご苦労さんだよな
何で俺なんかと連絡取り続けてくれるのかって思ったりもしたけど
きっと俺のセンスとお前のセンスがどうしようもなく俺たちを繋いでいるんだと思う
あんまり長くなっても仕方ないから
この辺で本題に入ろうか
君に贈るよ
最初で最後のありったけのラブソング
Retreat Garden
あの頃持ってたものは
Retreat Garden
全て土の中に溶けていく
Retreat Garden
あの頃持ってなかったものは
Retreat Garden
全て空から降ってくる
Retreat Garden
今しかできないことが
Retreat Garden
全て土の中に溶けていく
Retreat Garden
僕にしかできないことが
Retreat Garden
全て空から降ってくる
Retreat Garden
あの頃持ってた苦しみは
Retreat Garden
全て土の中に溶けていく
Retreat Garden
あの頃持ってなかった喜びは
Retreat Garden
全て空から降ってくる
Retreat Garden
君に幸せあれ
Retreat Garden
君の愛するあなたに幸せあれ
Retreat Garden
人生は短い
Retreat Garden
愛せない人を愛してる暇はねえ
Retreat Garden
また一緒に踊ろうぜ
Retreat Garden
永遠のど真ん中で一瞬を歌う
Retreat Garden
カラオケで俺に歌ってくれたよな
Retreat Garden
世界はそれを愛と呼ぶんだぜ