個の強さを学ぶ:連載「ラグビーに学ぶチームマネジメント」
連載「ラグビーに学ぶチームマネジメント」。
2023年9月にラグビーワールドカップが開催されるのを機に、皆さんと一緒にラグビーからチームマネジメントについて学んでみたいと思い、キックオフしました。
学生時代に日本一になるくらいラグビーに取り組んだ経験は、Andyコーチの今にかなり繋がっているので、自分自身の経験も含めご共有できればと思います。 いままでラグビーの試合を観てこなかった方も、「ちょっと1試合観てみようかな」と興味を持って下さったら嬉しいです。
今回のテーマはこちらです。
個を強くするのはなぜ?
個の強さは、ラグビーではもちろん仕事でも重要な要素です。
ラグビーは、サッカーのフィールドとほぼ同じサイズの大きなフィールドで、手と脚も使ってよいし、(危険すぎない程度の)タックルもOKなスポーツ。ボールの形は完全な球体じゃないので、地面に落ちたときどこに跳ね返るかわからないこともあり、手段と可能性がたくさんある「ボール運び戦略ゲーム」であるラグビーは、10のポジションがあり15人でプレイします。
ボールを持って走ってトライを決める人、パスをつなぐ人、相手にタックルして妨害する人、ボールを蹴ってパスや得点につなげる人。10の役割を一人ひとりが果たしていかないと勝利につながらない。だから、個を強めていく必要があるんですよね。
ぜひこのCMを観ていただきたいです。観るたびグッときます。。。
働くという場面においても、「強み」という概念は常にセットですよね。
就活や転職活動でも「あなたの強みは何ですか?」と聞かれたり、会社の中にいても強みについて問われたり、その強みの強化をを期待されたり。従業員を雇う企業にとっては、従業員が一人ひとりの生産性を高めることで企業としての成果を上げることを求めるので、従業員に個を強めてほしいというのは合点がいきますよね。
でも、ラグビーと仕事を比較したときに、少し違いがあるなと思うのは個を強める本人の動機です。
ラグビーをする人は、ラグビーをする目的として「勝つ」という共通の目的を持っているので、勝つために個の強みを磨くという前提を共有できています。個を磨くことの必要性を同じ前提をもって伝えることができます。
(サークルなどの場合は、「ラグビーという競技を楽しみたい」という方もいるかもしれませんが、部活としてラグビーをやっている場合は目的は1つなことが多いと思います。)
でも、仕事をする目的は全員同じではなく人それぞれですよね。
・日々の生活のために
・実現したいこと、貢献したいことのために
・キャリアアップのために
など。
仕事をする目的が違うからこそ、この強める必要性を自ら感じられる人もいればそうでない人もいたり、同じことの動機づけでもその適切な方法は変わってきます。
チームとして成果を上げたいマネジャーは、もちろん各メンバーが個の強さを高めてほしいと思っていると思いますが、その動機付けは各々の目的に合わせて行っていくことが重要であると言えます。
楽しいこと・得意なこと・貢献できることがイコールではないこともある
ラグビーはポジションによってやることが全く違うスポーツなので、そのポジションに合わせて個を磨く練習に励む必要があります。
なので、ラグビー部に入部すると、まずポジション選びをします。
まずは先輩の練習や試合を見てやってみたいと本人が思うところや体格、基礎能力をベースに選び、自分に合っていなければ別のポジションに移動します。
自分も楽しくて、得意でチームにも貢献できるのであれば最高なのですが、練習をしていくと、やっていて楽しいポジションと得意なポジションが違うことも出てきます。
やっていて楽しいポジションは、何より楽しいのでそのポジションを本人はやり続けたいと思うんですよね。でも、「チームで勝つ」という共通の目的があるので、その目的を踏まえて、自分のやりたいポジションではなく、得意なことの方がチームには貢献できるかもしれません。
また、自分にとって一番得意なポジションだったとしても、自分よりももっとそのポジションが得意な人がいた場合、自分はチームに貢献しにくくなることもあります。
(もちろん、交代要員として各ポジションベンチメンバーはいますが。)
走ってトライするポジションばかり層が厚くては、チーム力は上がっていかないです。
その場合、一番得意なポジションではなく、チームの中で比較的弱いポジションを担いそのポジションを強めていくことの方が貢献できることもあるのです。
だから、ラグビーにおいて、本人が楽しいこと・得意なこと・貢献できることはイコールではないこともあります。
仕事でも同じようなことが言えると思います。
本人が楽しくて得意でチームに貢献できるポジションだったら最高なのですが、全員をこの3つそろったポジションにつけることは至難の業です。なので、チームとしては、本人があまり楽しくないと思うこともやってもらうことが必要だったりします。
しかしながら、ラグビーと違ってチーム最適なポジションにするのが難しいのは、先ほどもお話しした個人の働く目的の違いがあるからです。
ラグビーでは、「チームで勝つ」という共通の目的があるので、自分にとって初めは楽しいことでなかったとしても、練習して個を強めていき、チームにそのポジションで貢献できるようになってくると、自然と自信と楽しさで満ちてくるんです。
でも、仕事の場合は個々人の働く目的が違うので、同じようにはならないと思います。
ラグビーに学ぶ仕事のチームでの個の磨き方
チームにおいて個を強めていくことをラグビーに習うとするならば、次の2つではないかと思います。
①チームの目的と個人の目的をリンクさせる
ラグビーでは、チームの目的と個人の目的が「試合で勝つ」と共通しているために、強みを磨く動機も共通で、どこ強みを磨くかという議論もしやすいです。
しかしながら、何度も書いている通り、仕事では必ずしもチームの目的と個人の目的が一致しないケースが出てくるでしょう。
マネジャーとしては、下記を行っていくことで、チームの目的と個人の目的を繋げていくことが重要になってくると考えます。
・チームの目的をメンバーに発信、共有する
・個々人の仕事をする目的や価値観を知る
・個人の目的がチームの目的につながるように意味づけをする
②健全なライバル意識・厳しさでお互いを高め合う
ラグビーでは1ポジション1~2名しか試合に出れないので、各ポジションでチーム内で1番か2番でないとなかなか試合には出られません。
試合に今は出れないとしても「次はスタメンになるぞ」と練習に励みますし、今スタメンだったとしても次の試合までに他のメンバーが力をつけたらスタメンを譲らないといけないので、スタメンに選ばれたらより一層練習に励みました。
これには学年に関係ありません。完全に実力社会。
でも、お互いに蹴落とし合うのではなく、仲間でもありながら良きライバルでもあるという健全な競争を行うことで、お互いを高め合い個を強くしていくことができていました。
ここには、健全な厳しさがあると考えています。
皆さんの仕事のチームには健全な厳しさがあるでしょうか。
マネジャーとして、本当は言うべきことを言えなかったことという経験はありませんか。
そこには、「嫌われたくない」「良く思ってほしい」といった思いなどがある方もいるかもしれません。
マネジャーからメンバーへだけではなく、メンバーからマネジャーへ、そしてメンバー同士でも健全に厳しさを出すことで、お互い成長できるような状態を作っていけたらとても理想的であると考えています。
どうなったら個が強いといえるのか
個を高めることに関しては上限がありません。
では、どうなったら「個が強い」チームと言えるのか。
ラグビーそして様々なチームでの仕事経験を踏まえ、Andyコーチが考える「個が強い」状態というのは、「チームメンバーがお互いの個を活かし合えている状態」です。
なぜなら、そもそも個が強い状態でないと活かし合うこと自体ができないと考えるからです。
ここには「組織の強さ」、チームワークという要素が大きく関わってきます。
「組織の強さ」については、次回の連載「ラグビーに学ぶチームマネジメント」にてお届けしようと思います。
次回もお楽しみに!
ワールドカップ開幕まで、日本代表候補たちが練習試合を行っています。お住まいの地域でもテレビ放映されてるかもしれないので、よかったら観てみてくださいね!
実はAndyコーチもとある試合リアル観戦してきます!楽しみ!