見出し画像

「どうしたら女性管理職が増えるのか?」を考える前に。

現在外資系企業、IT企業を中心に企業研修講師&ビジネスコーチをしている、ファインディングライフ(株)川島雪子(かわしまゆきこ)です。
現在高2息子、中2娘の母でもあり、妻でもあります。

今年はご縁あって、東京都産業労働局主催の「女性管理職のスキルアップ講座」で女性管理職向けのセミナーで登壇させて頂いたり、企業、自治体を対象に「女性活躍推進」「女性管理職登用」「仕事と育児の両立」などをテーマに企業研修を多数実施させていただいたり、女性リーダー・管理職を対象としたコーチングをさせていただいたりする機会に多く恵まれました。

政府が2020年までの目標として掲げていた「指導的地位に占める女性の割合30%」にはまだまだ到達しない企業が多く、これから加速度的に進む超少子高齢化からくる人材不足を視野に入れると、企業・組織にとって女性の登用は取り組むべき喫緊の課題であることは間違いないでしょう。おそらく多くの人事部門やダイバーシティ推進部門の方々は、「どうしたら女性を組織の重要なポジションに登用できるか」、「組織で活躍する女性リーダーを育成できるか」に関して日々試行錯誤されているのではないかと想像します。

女性を組織の上位職へと登用して行くためには、それをリードする「会社・経営層」、そして「女性を育成する管理職」、そして当事者である「女性社員」それぞれのマインドセットを変えていくことが必要かと思いますが、今回は「女性社員」に必要なマインドセットという観点から、女性社員が何を理解して組織で働いて行くことが求められているか、を書いてみたいと思います。

①女性リーダーや管理職が増えることのメリットを正しく理解しよう

女性リーダーや管理職が増えることによる社会・会社・自分、そして未来の人材(自分の子供世代)へのメリットは沢山あります。具体的にどんなメリットがあるのか、を女性社員が自分事として考え、「確かに女性リーダーや管理職が増えると、こんないいことがある」ということを理解することがまず第一歩ではないかと思います。

②「管理職になる」と聞いて不安を抱くのは健全だと知ろう

しかしながら、頭でどんなに女性リーダーや管理職が増えると社会・会社・自分、そして未来の人材への好影響があると分かったとしても、女性社員の方々を対象に、「管理職として働くことに対してどんなイメージを(心で)持っていますか?」と伺うと、よく出てくるのが次のようなお声です。

・やりがいを感じられなくなりそう。
・忙しそう、大変、辛そう。
・自信がない、自分はそんな器ではない。
・時短勤務だから難しそう。
・仕事と家庭の両立が難しそう。
・ロールモデルがいないから、そもそもイメージが湧かない。

中でも女性が管理職を希望しない理由で最も多いのが「仕事と家庭の両立が難しそうだから」だそうです。(※(出典:プランインターナショナルによる日本における女性のリーダーシップ2021)

この結果は、人によっては「根拠のない、なんとなく抽象的な不安だな」と思われるでしょうが、この「不安」を否定したり、「そんなの大丈夫だよ」と説得したりするのではなく、その感情がその人の中に『ある』ことを、関わる周囲の方々が許容することが、第一歩だと考えます。

人には誰しも「女性性」と「男性性」が共存していますが、この「女性性」とは「共感する・受け容れる・調和する・安定する・依存する・感情的」な性質を表します。(それに対して「男性性」とは「行動する・解決する・与える・成し遂げる・支配する・自立する・論理的」な性質です。)従って、上記の不安は「女性性」が持つ本質的な願いからくる、当然且つ健全な感情だと言えるでしょう。

このお話を女性のご受講者の方々にさせていただくと、「やっぱりそうなのか、気持ちが楽になった!」「健全な感情だったんだ、安心した。」「分かってもらえた気がして、前に進めそうな気がする。」「身近にいる(男性)管理職のようには働けないと思っていたので安心した!」「モヤモヤが晴れた!」などの声が沢山あがります。それはそれは沢山。

女性性とは「共感」されたい、「理解されたい」性質です。従って、「これからは女性も活躍しなければならないから」「女性管理職3割を目指してあなたも管理職を目指しましょう」とあるべき論を繰り返し伝える前に、女性である自分の中にあるがままに存在する感情を受け容れ、周囲もそれに共感することから始まるのだと思います。受け容れられて、初めて会社や上司の期待に耳を傾けられるようになる、の順番だということです。

『女性性』が持つ性質を正しく理解し、「どんな感情を持っても良い」と女性である自分も周囲も受け入れることが大切な一歩。

③女性性特有の無意識の思考癖があると知ろう

上述の通り、「女性性」ならではの性質がありますが、更に「女性性」特有の思考癖について、踏み込んで書いてみたいと思います。

女性特有の思考の傾向としてよく知られているのは「インポスター症候群」です。(1978年に心理学者のポーリン・R・クランスと、スザンヌ・A・アイムスによって命名。)これは、仕事で成功し、客観的な評価をしっかり得られているのにもかかわらず、自分自身を過小評価してしまう自信の無い心理状態のことで、比較的女性に強く見られる傾向だと言われています。

また、エグゼクティブコーチとして有名なサリー・ヘルゲマン、マーシャル・ゴールドスミス氏の著書である『コーチングの神様が教える「できる女」の法則~女性特有のキャリアアップを邪魔する12の悪癖』の中では、女性特有の思考癖として次の12項目が記述されています。

  1. 自分の実績・功績をきちんと言わない

  2. あなたの仕事ぶりを他の人が自然と気づいて報いてくれると期待する

  3. 専門性を過大評価する(まだスキルや専門性がないから、と足踏みする)

  4. 人間関係を築くだけで活用しない

  5. 初日から協力者を得ない

  6. キャリアよりタスク(目先の仕事や作業)を優先する

  7. 完璧主義の罠に陥る

  8. 喜ばせたい病(みんながいい気分になれる人になろうとする)

  9. 自分を小さく見せる、割り引いたり自らを否定する

  10. やりすぎる

  11. 反芻する(起きた過去の出来事に固執する、自分を責める)

  12. 自分のレーダーで注意散漫になってしまう
    ※引用:「コーチングの神様が教える「できる女」の法則」

特に男性性の強い方が見ると、「なぜそんなことを考えるのか?」と思われる思考癖もあると思いますが、私自身、このリストの中の多くにチェックがつきましたし、毎度研修でセルフチェックをしていただくと「分かります!」「これ私のことです!」のように、多かれ少なかれいずれかにチェックが入り、大変盛り上がります。自身の思考癖に気づくことで、なぜ今まで自分にとって不本意な現実が繰り返されていたのか、がその場で紐解かれるケースも多々あります。

勿論、いずれの思考癖も、持っていてはいけないものでも、すぐ手放さなければならないものでも決してありませんが、「自分にそういう思考癖がある」ということに気づき、自らの意思で小さく見直していただく選択をしていただくことが大切なのだと私は考えます。人は人から言われて変わるのではなく、自ら気づき、変化を決意して、初めて行動が変わるからです。

いずれの思考癖も見ていただくとお分かりの通り、強く持ち続けると、人の力を借りることが困難になったり、「忙しい、忙しい」が口癖になったり、自分に自信が持てなくなるリスクがある思考癖です。もちろんこれらは女性に限って見られる傾向では決してありませんが、女性管理職への階段を上るためには、克服する必要があるものもありそうです。

女性性が持つ、愛すべき性質を正しく理解し、受け容れよう。そして「これは手放した方が良い」と思える思考パターンに気付いたら、そのタイミングで小さく手放そう。

④仕事と家庭が中途半端になる、という罪悪感を手放し、周囲への感謝に書き換えよう

今年様々な企業で育児休業復職者研修や、女性リーダー・管理職研修を実施させて頂いた中で大変驚いたのは、子育てと仕事を両立しようと頑張る女性の方々の中にある「罪悪感」です。

そもそも、新たな命をもたらし、その大切な命を育むということ以上にこの世の中で大切な仕事はないと思うのですが、自らがその大切な命を育みながら、更に組織に所属し、貢献しようと頑張っていることに対して、誇りに思えない、むしろ子供にも職場の人にも「罪悪感」を持ちながら働いている、という女性が多いことは大変残念なことです。由々しき事態であり、海外の企業ではあまり考えられない話です。

ネットで繰り広げられる残念な議論の中には、「仕事もプライベートも手に入れようとするのが図々しい」などのように、短期的な物の見方しか出来ない、視点の数が少ない残念な方が言及する醜い内容もあるようですが、そのような意見は耳を傾ける必要がない、というのが私の持論です。

外側から何を言われようと、自分にとっての「仕事と両立の状態とは?」を自分の内側でしっかり定義すること、そしてその理想の状態を実現するために、「誰から力を借りるべきなのか」を明確にし、そのご恩に感謝をしながら、働き続けること。今の日本人の女性に必要なのは、これら2つをやり抜ける強さを持つことではないか、と感じます。

女性が「罪悪感」を持つことによって、メリットを受ける人は誰一人いない。「罪悪感」からくる”ごめんなさい”よりも、「感謝」からくる”ありがとう”を選ぼう。

女性を組織の上位職へと登用して行くためには、「会社・経営層」、そして「女性を育成する管理職」、そして当事者である「女性社員」それぞれのマインドセットを変えていくことが必要ですが、今回は「女性社員」のマインドセットという観点から書いてみました。外資系企業で男女関係なく18年余り働いてきた経験や、企業研修講師として多様な企業で働く女性の方々と交わる中で感じたことを自由に書いてみましたが、一つの意見として読んで頂けたら嬉しいです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?