自己探求は、一生かけてゆっくり、そして楽しみながら。

自分の上司や部下、同僚、そしてパートナーの価値観や癖、大事にしているであろうこと、目につくことは分かるのに、「じゃあ、あなたはどうなの？あなたはどんなことを大切にしながら生きているの？あなたの強みは？」と問われると、どれ程の人が分かっているだろうか。

断言できる。私は40数年間生きてきていても、まだまだ自分のことを知り尽くしていない、と。そして、そのこと自体を最近は楽しめるようになった。

昨日も大事な大事な仲間から

「ゆっこちゃんは、色んな世界を持って、そこを管理できる人だね。そして、そこのドアの鍵を持っていてさ、かちゃかちゃ、って開けて、すっとその世界(部屋）に入っていける人。」

「お母さんでいることがさ、実は自分の中の癒しになっていて、どんどん豊かさをもらっているんじゃない？」

「自分が楽しむより、人を楽しませることで幸せを感じる人だよね。」

と言われて、「あ～！そうかも。」と、もうビックリする位腹落ちして、自己理解が深まり、自分のことが好きになれた。そう、その彼女のお陰で、そんな心揺さぶられる瞬間に出会うことができた。

以前は、「私の強みは？私って何に向いているの？私ってどんなことに心が動くんだろう？」「私って自分のことを全然理解出来ていないわ。」と必要以上に焦って自己探求・自己理解を図ろうとしていた頃があったけれど、ようやく分かってきたのは

自己探求・自己理解は、一生かけてゆっくり、のんびり、そしてそのプロセスを『楽しみながら』やることが大事である。なぜならば、人生とは自己探求・自己理解の旅そのものだから。

自己探求・自己理解とは、人との関係性において深まるものである。

ということ。

小さな子供の頃から、自分の本質・真の望みに素直に生きてきた人はきっと、まるで空気を吸うようにすっと自分の心と繋がり、自分が望む世界をイメージし、自らにたぐり寄せ、望む世界に向けて行動していけるのだろう。そういう人も割合は少ないだろうが、世の中には確実にいる。

しかしながら、多くの私たちは育つ過程で、周囲との関係性において「こうせねばこうなる」「これをすればもっとこうなる」「もっとこうしなければどうなる」と、自分の本質・真の望みとは必ずしも限らない行動も重ねながら、ときに、自分の本質・真の望みは見なかったこと、または無かったことにしながら、葛藤しながら一生懸命に生きていている。

本来人間とは「人」の「間」と書くように、自分を取り巻く「人」との関係性において、生きていく社会的な生き物だから、そうあるものだし、それ自体は決して悪いことではない。人間の宿命である。

ただ、大人になっていざ目の前に、自分が生きる世界を「はい、ご自由にどうぞ歩んでください。」と委ねられると、戸惑うのである。

「え？私って、何を大事に生きていきたいんだろう。私は何が出来たら嬉しいんだろう。」と。

特に、コロナによって、不確実で、複雑で、変動的で、曖昧なVUCAの時代（※）に拍車がかかり、多くの人はこのような葛藤を抱え始めているだろう。企業研修等々で日々沢山の方々と出会う中でひしと感じ、改めて「自己探求・自己理解」つまり「自分を生きる」「自分で生きる」が出来ていることの重要さを感じ始めている。

そして、どうしたら「自己探求・自己理解」が深まるのか、という「問い」に対する「解」が上記の２つなのだと、私なりに思っている。

私たちは自分のことが一番分かっていない、という前提に立つのであれば、自分と異なる多様な人と関わり合うことで、深まっていくのではないだろうか。人生100年時代、私は一体どんな人とどんな関係を築いて行く過程で、どんな自分に出会うのだろうか。そう考えると、この先の人生、ワクワクしてこないだろうか？正直、今の私は毎日がワクワクで溢れている。

「あー、こういわれると私はこう感じるんだな。つまり私ってこんなことを大事にしている人間なんだな。」「あー、あんな素敵な生き方をしたいな。」「この人と・チームと一緒にこんな働き方をしていると、自分はこう感じるんだな。」「この人と時間を共にしたいなぁ。」

こうした内なる自分の声を丁寧に聞きながら、多様な人と臆することなく関わり合い、関係性を築くこと。そして、時に自分に対して本質的なフィードバックをしてくれる存在を近くに置いておくこと。これらは、これからの時代を幸せに生きていく上でとても重要な要素である気がする。

そして、「不安・心配・恐怖」からくる「問い」を自分にかけ続けるのはやめて、人とのより良き関係性を築くための「問い」に転換していく、更に、一つ一つの出会い・出来事を楽しむための「問い」に転換していくこと。

「自己探求・自己理解」を深めるためには、上記の2つに加えて、自分自身に向ける「問い」の質を見直していくことも大事になるだろう。

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（※）VUCAとは、Volatility（変動性）、Uncertainty（不確実性）、Complexity（複雑性）、Ambiguity（曖昧性）の頭文字を取った略語で、1990年代後半にアメリカ合衆国で軍事用語として発生したが、2010年代になって世界ダボス会議等、ビジネスの業界でも使われるようになった言葉。