第27回 食文化をつなぐ創意工夫
ー PROLOGUE ー
2024年10月マンスリーゲストは、伊那食品工業株式会社 代表取締役社長 塚越英弘さん。長野県伊那市へ、逢いにいってきました。
「かんてんぱぱ」でも有名な伊那食品工業株式会社は、創業67年。日本の伝統産業である寒天製造において国内トップシェアを誇る会社です。
今回は特別に、インタビュアーとして、鎌倉投信株式会社 代表取締役社長の鎌田恭幸さんにもご一緒いただき、スペシャルな対談が叶いました。
ー INTERVIEW ー
鎌倉投信プレゼンツ「Finding the GOOD」今回は鎌倉投信株式会社 代表取締役社長の鎌田恭幸さんにもご一緒いただきます。鎌田さん、宜しくお願いします。
(鎌田さん、以下、鎌)宜しくお願いします。
長野県伊那市にやってきました!
(鎌)はい。私も久しぶりに来ましたが、この世界観、そして空気感は、いつ来ても抜群ですね。
そうですね。伊那市は長野県南部にありまして、東には南アルプス、西には中央アルプス、そして、その間を流れる天竜川沿いには豊かな平地が広がっています。人口はおよそ7万人。まさに緑に囲まれながら、収録を行なっています。今回は、そんな伊那市に拠点を構えている伊那食品工業株式会社に伺っています。早速、今月のマンスリーゲストをご紹介いたします。伊那食品工業株式会社 代表取締役社長 塚越英弘さんです。宜しくお願いします。
(塚越さん:以下、塚)宜しくお願いします。
まずは、伊那食品工業株式会社について、ご紹介いただけますでしょうか。
(塚)はい。伊那食品工業株式会社は、元々、日本の伝統産業である寒天の製造から始まった会社です。おかげさまで、国内で最も多い、およそ80%のシェアを誇ります。今では、寒天製造から派生した、業務用寒天や食品の原材料となるゲル化剤の販売、そして、家庭用のデザートの素などを製造販売する「かんてんぱぱ」というブランドも展開しています。
寒天というと、原材料は海藻ですよね。伊那市は長野県の内陸ですが、海のないこの地域で、なぜ寒天製造なのでしょうか。
(塚)寒天は、江戸時代から製造が始まりました。では、寒天をどうつくるか。色々な作り方がありますが、本来は、「冷凍して、解かして、水分を抜く」。これを繰り返すことで、乾燥させて作ります。いわゆる天然のフリーズドライです。つまり、「凍る場所」じゃないと寒天はできないんです。ですから、海で獲ったものを、わざわざ長野県の諏訪から伊那にかけての地域に持ってきて、天然の寒天産業が始まったんですね。
伊那地域は、冬はもちろん寒いのですが、昼間はしっかり太陽が当たって、結構気温が上がるんです。つまり寒暖差があるので、凍っても溶ける。伊那地域は寒天産業に適していて、江戸時代から寒天を作ってきました。農家の副業だったんですよ。冬だけの。その流れで、元々あった伝統産業を近代化する工場をつくろうということで立ち上がったのが、伊那食品工業株式会社なんです。
そういったルーツがあるんですね。寒天は、この地域の食文化としてしっかりと根付いているものなのですね。伊那食品工業は、今、創業何年になるのでしょうか。
(塚)創業67年ですね。創業当時は事業がなかなかうまくいかなかったみたいです。そこで関連会社から派遣されたのが、私の父、塚越寛です。無我夢中で立て直しに取り組んで、だんだんと軌道に乗り始めて、少しずつ今の形になっていったということです。
(鎌)当時はまだ、寒天を扱うお店がたくさんありましたよね。おそらく、寒天を「加工販売する」という発想よりも、どちらかというと「相場で儲ける」ことが主流だったのではないかな、と。そんな中で、寒天の「近代化」に挑戦して、新しい食文化を作っていくという視点が重要なターニングポイントだったのかと思いますし、また、塚越寛最高顧問が合理的に近代化を進めるプロセスにおいて、相当ご苦労もあったかと思います。かなり勇気のある挑戦だったかと。
(塚)そうですね。創業した当初は、寒天メーカーが40社以上あったそうです。当時、寒天を最も使っていたのは菓子業界でした。しかし当社の場合、最後発のため、なかなか使ってもらえませんでした。ですから、菓子業界以外の、他の業界にもアプローチをして、使い道を一緒に探してもらったということが大きかったかと思います。
(鎌)後発だからこそ、創意工夫をして、商品を開発していったのですね。
(塚)そうです。いろんなところに、いろんな案内をして、触ってもらったり使ってもらったりしながら、色々と考えていきました。今、一番使ってもらっている業界が、ヨーグルトです。
ヨーグルトですか!
(塚)そうなんです。カップに入っているハードタイプのヨーグルトとか、よく見ると、表示に書いてありますよ。このように、いろんな業界に寒天を使ってもらうためにも、これまで寒天を使ったことがないという方に向けた一般向けの商品が必要だと考えて、家庭用商品のブランド「かんてんぱぱ」が生まれました。それが、1980年くらいです。
まさに核家族化が進んで、家庭が一気に成熟し始める頃ですね。そういった時代の波も捉えていたのでしょうか。
(塚)たまたま運が良かったのかもしれません。今は「かんてんぱぱ」製品だけでも、300種類以上の商品を揃えています。
300種類!その商品開発だけでも大変なことですよね。
(塚)そうですね。ただ、「研究開発型の企業になること」も、一番大事な柱の一つとしています。塚越寛最高顧問は、当初から、「社員の1割を研究開発に充てる」と明言していました。今も、社員数600名程度に対し、研究開発スタッフは60名ほどいます。これは、いわゆる「商品開発」だけが目的なのではなく、とにかく新しいことに「挑戦する」ということなんです。企業として、その姿勢が大事であると考えています。
チャレンジ精神という企業文化が、しっかりと仕組みにも組み込まれているということなんですね。
(第28回 年輪経営という哲学 に続く)
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ー Podcast ー
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ー CONCEPT ー
〜これからの社会に本当に必要な「いい会社」に投資する〜
鎌倉投信が提供するラジオ番組『Finding the GOOD』
全国を飛び回りゲストとクロストーク。
ものごとの「よさ」とはどこにあるのか。
さぁ。「いい」を探す旅に出よう。
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写真家モロイユウダイ撮り下ろしインタビューショット
イラストレーターほりはる描き下ろし線画など
見つけた「いい」を集めています。
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