第29回 いい会社をつくりましょう
ー PROLOGUE ー
2024年10月マンスリーゲストは、伊那食品工業株式会社 代表取締役社長 塚越英弘さん。長野県伊那市へ、逢いにいってきました。
「かんてんぱぱ」でも有名な伊那食品工業株式会社は、創業67年。日本の伝統産業である寒天製造において国内トップシェアを誇る会社です。
今回は特別に、インタビュアーとして、鎌倉投信株式会社 代表取締役社長の鎌田恭幸さんにもご一緒いただき、スペシャルな対談が叶いました。
ー INTERVIEW ー
鎌倉投信プレゼンツ「Finding the GOOD」今月のマンスリーゲストは、伊那食品工業株式会社 代表取締役社長 塚越英弘さんです。また、今回はインタビュアーとして、鎌倉投信株式会社 代表取締役社長の鎌田恭幸さんにもご一緒いただきます。引き続き宜しくお願いします。
ここで、伊那食品工業株式会社の社是についてもお話伺いたいと思います。社是「いい会社をつくりましょう」。どこか、メッセージにも聞こえるような、優しい社是だなという第一印象があります。どういった意味を持つ言葉なのでしょうか。
(塚越さん:以下、塚)社是というものは、会社の目指すべき方向を表す一つの形であり、羅針盤のようなものです。大事なのは、わかりやすいことです。みんなが理解していないと意味がない。ちゃんと理解して、納得できていることが一番大事だと思っています。
「いい会社をつくりましょう」という社是は、誰もが一度で覚えられますし、簡単にイメージが湧いてきます。仕入れ先からも、販売先からも、地元の方からも、誰からも、「いい会社だね」と言ってもらえる会社をつくりましょう、と。また、当社の社是には、サブタイトルがあります。「たくましく そして やさしく」。企業である以上、利益を上げる「たくましさ」は必要です。そして、人に「やさしく」なければ意味がない。当社の社是には、そういった想いが込められています。
鎌倉投信は「いい会社」に投資するというメッセージを掲げていますよね。一方で、伊那食品工業の社是にも「いい会社」という表現が含まれています。一体、「いい会社」とはどんな会社でしょう。お二人のお考えを教えてください。
(鎌田さん:以下、鎌)鎌倉投信の場合、いろんな会社に投資をしていますが、「いい会社」といっても、100社100通りなんです。私たちが一番最初に投資信託を始めた頃、自分たちの投資を通じて、「これから、どんなコンセプトで世の中を良くしていくのか」を考えていました。その時に大きなヒントをいただいたのが、伊那食品工業の社是「いい会社をつくりましょう」でした。将来、伊那食品工業のような「いい会社」に投資できるような運用会社になろうというのが、当時の鎌倉投信の一つの目標になったのです。私たちなりに掘り下げ、考えた結果、『本業を通じて、社会に貢献しようと、本気で努力している会社』を「いい会社」と定義しようと決めました。
塚越さんはいかがでしょうか。
(塚)「いい」と「良い」の使い分けにこだわっています。「良い会社」と表現すると、業績や数字の良さ、つまり、目に見える部分が思い浮かぶと思うのですが、「いい会社」と表現すると、目に見える部分の他に、雰囲気や企業イメージなど、目には見えない部分も表せるのではないかと考えています。単に業績の良さなどの目に見える部分だけでなく、雰囲気やイメージも含めて、「いい会社」であることが大事だと考えています。
伊那食品工業に関わる全ての人にとって「いい会社」であることが大事なのですね。
(塚)おっしゃる通りです。社員、お客様、仕入れ先、そして、地域の皆様にとっても、「いい会社」でありたいと思っています。まだまだ出来ていないことが沢山ありますが。
鎌田さん。改めて、とても素敵な社是ですよね。
(鎌)そうですね。「いい会社」とはこういったものなのだ、と押し付けるものではなく、社員自らが自発的に考えられるものであることが大切なのだと思います。『100人中100人が「いい会社」だと感じる会社とは、一体どんな会社だろう。』そう問いかけてくれる社是なのではないかなと思います。さらに「いい会社をつくりましょう」と、ある種、呼びかけにも聞こえるような表現であることで、自分も仲間に入れるような雰囲気がありますよね。
また、サブタイトルの「たくましく そして やさしく」がやはりキーワードですね。単に「やさしい」だけではなく、会社としての強さ、「たくましさ」もみんなでつくっていこうというメッセージも感じます。
まさに、その「たくましさ」の一部が、独自の「研究開発」にあるかと思います。現在、およそ600名の社員のうち、その1割にあたる、60名ほどが「研究開発」に携わっていると伺いました。具体的にどんな研究を進めていらっしゃるのでしょうか。
(塚)大きく分けると3つの研究開発分野に分かれています。一つは基礎研究です。寒天やその類似品の新しい物性を発見、加工するなどして、それらの基礎的な機能を研究しています。二つ目はお客様の要望に沿った商品開発をするための研究開発。そして三つ目は、『かんてんぱぱ』シリーズに代表されるような、自社製品の研究開発です。400年以上前に伝統産業品としてできた寒天ですが、今も、新しい物性が発見されたり、新たな寒天ができるなど、まだまだ可能性があります。
「研究開発」は継続が命ですね。「研究開発」への長年の取り組みが、伊那食品工業の増収増益を支える基盤となっているのだと思いますが、ただ一方で、着々淡々と、研究を進めている印象があります。商品展開する上でのスピード感やスケールバランスについてはどのようなお考えをお持ちなのでしょうか。
(塚)まさに『年輪』のように、「少しずつ」がいいと思っています。木は大きくなるにつれ、年輪の幅が狭くなっていきますよね。その方が木は強くなる。一方で、急成長はいい結果を生まないと考えています。毎年、必ず、「少しずつ」良くなる。常に希望が持てるこの状態が、人間にとって一つの幸せの形であり、その結果として、永続があるのだと思います。
単に続ければ良いということではなく、健やかな永続が鍵なのですね。社員一人ひとりの幸せがあってこそ、永続が叶うということなのでしょうか。
(塚)おっしゃる通りです。
(鎌)以前の『寒天ブーム』の際に、昼夜稼働して商品を量産されたことを後悔されていましたよね。
(塚)そうですね。当時は稼働せざるを得ない状況でした。ブームが起きた時、塚越寛最高顧問(当時:会長)は、『当社にとって最大の危機だ』と言っていました。
最大の危機、ですか。その時点では収益は上がっていたのですよね。
(塚)はい、そうですね。その時は収益は上がっていました。ただ、ブームは長く続きません。予想した通り、原材料価格が上がり、当社にとってよくないことが起きました。
もしも、また再び『寒天ブーム』がやってきたら、どうされますか。急成長をとるか、最適な成長をとるか。
(塚)断固、お断りしますね。急成長は絶対にあり得ません。
(鎌)ここまでお話を伺っていますと、創業当初から現在に至るまで、経営に対するお考えに一貫したものを感じます。逆に、塚越さんが社長になられてから、意識的に変革した部分はあるのでしょうか。
(塚)いいえ。社会情勢の変化もあり、やはり時代と共にやり方を変えている部分はありますが、基本的な考え方は一切変わっていないです。これは、決して、無理に守ろうとしているのではなくて、私自身が『年輪経営』の考え方が最も正しいと納得しているからこそ、今後も変えるつもりはないですし、むしろ変えてはいけないと思っています。
(第30回 あるべき姿を考えるということ に続く)
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ー CONCEPT ー
〜これからの社会に本当に必要な「いい会社」に投資する〜
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全国を飛び回りゲストとクロストーク。
ものごとの「よさ」とはどこにあるのか。
さぁ。「いい」を探す旅に出よう。
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写真家モロイユウダイ撮り下ろしインタビューショット
イラストレーターほりはる描き下ろし線画など
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