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【フィナンシェ話#4】実体験こそが教育になる(環境教育編)

 様々なバックグラウンドの方に伺う、幼少期のお小遣い、お年玉、寄付や投資のこと。そこから自分の子供につながるフィナンシェなヒントを探ります。

 今回は、フィナンシェの会に関わっていただいている、ゴールドマン・サックスの西村万祐さんにお話を伺いました。小学校1年から高校3年生まで米国カリフォルニア州で受けた金融教育や環境教育とはどのようなものだったのでしょうか。

▪️当事者として環境問題を議論する授業

── 西村さんが環境問題に関心を持たれたのはどのような背景からでしょうか。

西村さん:小学生の頃から、ボランティアが身近なところにありました。その中で、木を植えるボランティアがあったことも、環境問題を意識するようになったきっかけの一つです。授業の中でも、環境問題や温暖化に関する授業があったのを記憶しています。その授業で、「環境保護」と「環境保全」の違いは何か?というテーマがありました。学生たちの間でこの2つの違いをディスカッションをするんです。

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──大人でも難しい問いですよね。恥ずかしながら、私も答えられる自信がないです。他にも何か習ったことはありますか?

西村さん:学校ではオーガニック(※1)やカーボンフットプリント(※2)についても学びました。普段利用するお店の商品にカーボンフットプリントが付いているものは多かったです。食べ物に関しても、農薬が使われているのかどうかもきちんと表示されています。学校教育だけではなくて、生活圏においても、どのような商品を買えば地球に悪影響を及ぼさないのか、ということを考えられる機会が多かったです。

オーガニック(※1):化学合成農薬や化学肥料に頼らず、土壌の持つ力を活かして環境への負荷をできる限り少なくする農法

カーボンフットプリント(※2):商品やサービスの原材料調達から、廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全体で排出される温室効果ガスの排出量を示したもの。

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`(カーボンフットプリントは
国ごとでマークが異なる)

▪️長く物を使うことが当たり前

──環境問題を意識していたのは小学生ころからですか?

西村さん:買い物の時に、この製品の原料はサステナブルなのかどうか、ということを考えたのは中学生のころからだと思います。両親も環境問題に対する意識が高かったこともあり、環境に配慮した買い物をすることは自然なことでした。
 もちろん、経済面からエコを選ぶこともあります。たとえば車。カリフォルニアでは15才半から車を運転していました。学生なので、やはりガソリン代が少なくて済む低燃費の車が良いよね、と友人も話して選びました。


──学校教育だけではなくて、家庭環境や生活環境も「環境問題」に対する意識を高める要因になっているんですね。

西村さん:そうですね。学校生活で日本と異なると思う点は「教科書は学校のもの」であること。ですので、私が使ったのは先輩たちが代々使ってきた教科書。たまにインラインなど書き込みがあったりもするのですが。

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西村さん:環境問題だけではなく、ボランティア活動が非常に身近だった点も異なるかもしれません。小学生の時から、ボランティアをすることは当たり前。参加できるボランティアのプログラムリストと参加する友人の名前が見れるようになっていました。仲の良い友達と一緒に参加することも多かったです。
 クラスの子がガールスカウトで寄付集めのためにクッキーを売りに来たのも日常的なことでした。クッキーだけでなく、寄付をどのように使うのかを説明するパンフレットも一緒にもらった、ということもあり、寄付の必要性を幼少期から体感していました。


──前回のフィナンシェ話でも学校での寄付活動についてお話を伺いましたが、西村さんの学校でも同様でしたか。

西村さん:そうですね。参加費を寄付するチャリティランもありましたし、手作りの作品を売って収益を寄付するクラフトフェアもありました。実際に学校や住んでいる地区に寄付をしたら、体育館が新築になったんです。寄付をするだけでなく、きちんと還元されたことが良く分かりますよね。そんな経験があって、ボランティアも寄付も身近に感じているのだと思います。


* * * * *

 学校の教科書ひとつ取ってみても環境に配慮されているカリフォルニア州。日本では毎年使わなくなった教科書は捨てられています。このように教科書を受け継ぐというのは環境教育の視点からも重要。ぜひ日本でも導入してほしいです!

西村さんから伺った金融教育については、【フィナンシェ話#4】実体験こそが教育になる(金融教育編)をご覧ください。

お話を伺ったのは・・・
西村万祐さん
1994年東京都生まれ。2001年から12年間カリフォルニア州サンノゼ市に暮らし、現地の高校在学中に米ディアンザ カレッジで環境科学を学びGPA 4.0を取得。帰国後、米ハーバード ロースクールのCopyright Law (著作権法)のDiplomaを取得しつつ、東京大学法学部を2017年に卒業。新卒でゴールドマン・サックス証券に入社し、為替営業を経て規制当局への報告やガバナンス強化に関する業務に従事。ゴールドマン・サックス ジャパン ウーマンズ ネットワーク(JWN)のCOOを2018年から務める。2018年11月から日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)の運営委員に就任。

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写真:Unsplash
取材・文:Mari Kamei(2019年10月)

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