じゃがアンソロ裏話
この記事は2022年5月29日第三十四回文学フリマ東京で頒布する「煮ても揚げてもふかしても じゃがいも文芸アンソロジー」の制作過程です。
年末の振り返り企画「創作TALK」用の個人的な記録ですが、メイキングみたいなのが好きな人はよかったらどうぞ。
芋アンソロ、じゃがアンソロ
それはじゃがいもに関する文芸作品ばかりを集めたアンソロジー
構想としては2020年からあり、シネマ芋先輩(泡野瑤子さん)には「やりたいんですよねぇ」と奥多摩湖のほとりでアイスを食べながらこぼしたりしていたが(アイスをこぼしたわけではない)、イメージはまだ曖昧模糊としたものだった。
声をかける予定の人も2~3人のこじんまりしたもので、所属サークル三日月パンと星降るふくろうの合同誌を編纂してきたこれまでの要領でやればどうにかなるだろう。そのうちそのうちと土の中で眠らせておいた。
2021年、Twitter内で芋仲間が増えた。
たこやきいちご(宮田秩早)さんがじゃがいも栽培に精を出し、
湖上比恋乃さんが芋写真をUPするたびに品種クイズに挑戦してくれ、
三宮のえるさんが家庭菜園で類を見ない多品種栽培を展開し、
氷上リホさんがじゃがいもの替え歌を作り、
農業ライターのお仕事を持つじゃがいも好きひらまりこさんまで、日々ワイワイしてくれるようになった。
そのほとんどが芋そのものを送り合うような間柄に急接近である。
しかもみんな素敵な創作をなされる。
おおん?
これは機が熟したかもしれぬ。
休眠を打破して芽が出始めたのだ。
私、雲形ひじきがジャガイモにはまって3年目のことであった。
2021年9月要項作成
お招きしたい人が増えた以上、勝手知ったる間柄のサークル内でやっていたようなゆるい運用ではうまく伝わらないこともあるかもしれない。
共通の認識を持ってもらい、個別の問い合わせの数を減らすための要項が必要だ。
要項作成に当たっては服部匠さん主宰の「蒼衣さんのおいしい魔法菓子公式アンソロジーみんなのスペシャリテ!」の参加要項を大いに参考にした。
私自身のアンソロ参加経験が少なく、手元にある要項がそれしかなかったのである。アンソロの勝手を知らない初心者がよくやろうと思ったな!I☆KI☆OI!
たたき台を作り、アンソロ主宰経験のあるシネマ芋先輩に添削コメントをいただいて改良。
主宰自身がどういう本を作りたいのかというイメージをなるべく具体的に伝えることがポイントだと学んだ。
今回は公募ではなく私が書いてほしいと思う人を勧誘し、承諾を得られれば参加してもらう形となる。
この要項をもって、いよいよ、お声がけだ――!!
もちろんじゃがいもと創作は結び付けられませんと断られることも想定していたが、
なんと全員ご快諾
びっくり。
日頃から雲形ひじきがどこまで芋が好きで、どんな文章を書き、どんな本を作るのかある程度伝わっていたこともあるだろうし、
締め切りに余裕があったのもよかったのかもしれない。
2021年10月じゃがアンソロ通信発行開始
すんなり参加メンバーが確定し、原稿作成にあたっての要項も渡した。
次にやったことは、参加メンバーから質問があった事項を全メンバーに共有することである。
参加メンバーはまだメンバー間でも正式公開していなかった。全員が全員お知り合いというわけでもないし、途中で脱落する人もいるかもしれないし、いちはやく誰かが脱稿して他の人を焦らせるのもなーと思って。
私だけに情報が入り、私の判断で回答することになるが、1人が気になったということは他の人だって同じことを知りたい可能性が高い。
なので「じゃがアンソロ通信」という名前でこれまで質問があった事項やスケジュール、共有しておきたい内容をA4PDFにまとめて、不定期に配信した。
壁新聞みたいなやつ。締め切り・発行まで余裕を持たせたため、参加者からしたらその間になんにも動きが見えないとモチベーションが保てないかなと心配だったので、(なんかちょっとは動いてるんだ)と少しでも安心してもらえたなら成功なのだがどうだったのかな?わからん。
私が「見て見てかまって」したかった自己満足だったので、こういうのが必要だったかはともかくとして、作ることは苦ではなかった。
2021年11月タイトル決定、題字依頼
12月までにアンソロジーのタイトルを決める
これは題字を依頼するための目標期日だった。
芋研ゼミ生でもある湖上比恋乃さん(@hikonorgel)が素敵な字を書かれるので、そして題字をお仕事として依頼できるように活動されていたので、今回お願いすることにしたのだ。
タイトルは……近頃、ダジャレみたいなタイトルばっかり考えていたので、どうやるんだっけと感覚を思い出すところから。
いやダジャレでもいいんだけど、一人の作品の本ではないからテーマを明確に表しながら、どの作品にも当てはまるよう包括的に使えるような言葉が入れられたらという感覚があった。
その昔、弊サークル、三日月パンと星降るふくろうの合同誌のタイトルはたいていこのひじきがつけていたのですよ。
いくつか案を出してメンバーにアンケートして票が多い奴を採用していた。
今回も複数案出してメンバーに選んでもらおうと思っていたのだが、
……ん
1つしか浮かばなかったわ!
頭が固くなってるのか……もうこれでゴールしてもいいかなって。
なので、決定事項としてメンバーには知らせて、題字を依頼。
これがね、すごく楽しかったの!
湖上さんが、開口一番にいいタイトルですね好きですって言ってくれことにめちゃめちゃ救われた。よかった、みんなの代表で顔になる言葉だからほっとしたよ。
流れとしては湖上さんがまず書いてくれたのを見て、
こっちの方向性がいい、ああこれもいいみたいなのを選んで
また書いてもらって、この文字はこっちのこれがよくて、この文字はあれがよくてとセレクトしていった。
こんなに1文字単位で選べると思ってなかったので、文字とにらめっこしてゲシュタルト崩壊しそうになった。
表紙担当の氷上さんもすぐに見てくれて、的確な意見をくれたのがよかった。
3人でわいわいやってる感じ。本を作る上でとても好きな部分。
そんな感じで11月末には完成形の題字データを入手。あとは氷上さんに託す。
原稿提出1番乗りは11月28日に現れた。9月末募集で2か月、早い~。
わがサークルメンバー、星野真奈美さん。
来年の手帳はプロジェクト進行を見落とさないようにガンチャート式にしたのにな。
年越さないで一抜けじゃないの。
2022年1月執筆者に掲載時のペンネームの確認
アンソロを主宰したことがなさ過ぎて、氷上さんから裏表紙に参加者一覧入れますか?って聞かれるまで失念していたわよ
のちのち、TwitterアカウントやBOOTHのQRコードを載せてもいいか確認することになったので、
参加してくれるって決まった時点か、
このとき一緒に確認しておけば、皆様の手間が省けたな。次回があるなら活かそう。
2抜けは
Twitterで早くから参加を匂わせしてくれていたたこやきいちごさん
2022年2月原稿どんどん届く
2月に入ると提出者が増えていく。
DMやLINEが頻繁に入るため、私かまってもらえているちやほやされてる!って勘違いしてご機嫌なひじき。
設定した締め切り前に送ってくれる人が7割で、その分チェック作業も進んでありがたかった。
組版してPDF化したものを返して、誤字脱字修正点をチェックしてもらう。
主宰は校正なんてできませんので、自分で気づいてね。
提出いただいたどの原稿も、この人にお願いしてよかった!この作者ならではのお芋文芸だとニヤニヤするものばかりで、はやく本にしたい~との思いが強くなる。
その間も氷上リホさんは、表紙の進捗を頻繁に送ってくれて
私は「すごい!」を連呼し続けていた。芋は品種によって描き分けられているし、中の各物語とめちゃくちゃ連動しているのにまとまりがある。天才だな。
メイキングツイートあるよ
2022年3月編集そして入稿
提出期限に間に合わなかった人には裏締め切りを設けておいた。
予想通り、尻を叩くべき遅刻者はだいたい見慣れた身内のお尻だったので、叩くというよりは撫で回しておいた。
その辺はサークル合同誌でも、サラリー仕事でもリマインドや提出物の取り立てをやっているので気持ち面で慣れてんですよ。
最終的な原稿が揃ったのは3月13日。想定内。
誰一人脱落することなく、原稿を書き上げてくれた。素晴らしい。
参加者もタイトルも登場する芋の品種(私は品種が好きなので結構重要視)も確定したので、じゃがアンソロ通信で参加者にはお伝えした。
その数50だよ!農業専門誌かよ!
そろそろ中扉や奥付を作り始める。
主宰最大の山場は並び順を考えることである。
こればっかりはすべての原稿が揃ってから、だれにも頼ることなく一人で決めなくてはならない。
季節だったり、品種だったり、話の要素だったりをなるべく汲み取りながらパズルのように並び替える。
男爵やメークインが多いのは予想していたが、
とうやっていう品種が、なぜか人気でしたね。いいお芋ですよ。
並び順、もっと最適解があったかもしれないと思うのだけど、ない頭とジャガイモへの愛をふりしぼって一応考えて並べたので何かしら気づく人は気づいてくれたら嬉しい。
アンソロ用のハッシュダグ「 #じゃがアンソロ 」を事前に決めておいたので、
参加者も使ってTwitterでつぶやいてくれるようになった。
本当は字数も少なく言葉にしやすい「芋アンソロ」を使いたかったのだが、既存であるかを確認したときハッシュタグはなかったけど名称としては微妙だったのよね。
2022年3月19日~21日の3連休が仕上げ
頁が余ったら品種について書こうと思ったら、5ページ書いていた……余ってたのそれは本当に?
調べ物が脱線というか「なぜ大宅壮一文庫(雑誌図書館)に行こうとしている?」と暴走したりもした。
いや、表紙担当の氷上さんが「朱美呼ヴェガ織姫(※ジャガイモの品種名です)の画像が見つからない」というので、
WEBで見られる官報公示やら家にあった雑誌「現代農業」やらをひっくり返して
じゃがいも好きひらまりこさんにもDMで相談したりして
もう直接農場に連絡しちゃうかと過激行動も検討し
結局、関連記事から該当書籍を導き出して、日曜の仕事の後に本屋によってビンゴを引いたので、1日で解決したのだが。
国会図書館行くはめにならなくてよかった(卒論ですか?)
だいたいまとまったところで青川先輩に原稿チェックをお願いした。
品種紹介ページチェックはじゃがいも好きひらまりこさんのお力も借りる。
第三者の目は、必ず気づかなかったことを見つけてくれるからすごい。
それで抜けがあったとしても、見てもらえたという安心感もだいぶ違う。
連休最終日には氷上さんの表紙も完成、3月23日入稿
200ページ近くあるので、背表紙もあります!すごい!
宣伝用素材を作って(ずっとWordを使っていたのでPowerPointをいじれるのが嬉しいパワポ好き)
3月25日昼に情報公開(表紙と執筆者、BOOTH予約開始)
3月26日本文入稿
うーん、皆さんが協力的すぎて、この券使わずに終わってしまった。
平日はまったく作業しなかったし、
睡眠時間ゴリゴリ削ったりとか、そういう修羅場がなかったですね。
ただただ楽しくきゃっきゃとしてたら出来上がったという感じ。びびりすぎだったか。
4月2日データチェックにひっかかった表紙を氷上さんに修正してもらい再入稿
そのあとは、各執筆者の本文から抜き出した試し読み文章の画像を作ってみたり。
人によって最初のフックまで、早かったり文字数を割いたりしているのでどこで切るか悩ましい。
4月5日から週2回火曜日と金曜日のお昼に試し読み放流~
↓こっからスレッドツリーになっております
11人もいるので1ヶ月はかかる
ちょろちょろ流してあなたの記憶にサブリミナル
2022年4月本が手元に届く
具現化した……じゃがアンソロが具現化した。
足りないよりはええやろといっぱい刷ったけど
こんなにたくさん届いてしまってはたして頒布しきれるのかと不安もありつつ
イベントが俄然楽しみになる。
参加者にも一刻も早く届けたかったが
献本は同梱するための返礼ジャガイモ待ちですこし間が空いてしまった(農家に無理を言って非売品レア芋を頼むからだよ)
4月22日頃発送
ちょぼちょぼご注文いただいていたBOOTHもGW前に1度発送
ファミマのBOOTH発送は任せろ、フィナンシェヤクザという情報系同人誌がバズったときに大量(当社比)に出したことがあるので慣れている。
宮田秩早さんが書いてくれた熱量のすごいほぼ全作品レビューもよかったら見てってよ。ネタバレなしなので安心!
2022年5月文学フリマ東京で頒布するよ!
そして今に至る。
頒布方法としては
BOOTH
架空ストア
イベントは2022年5月29日の第三十四回文学フリマ東京にサークル名「三日月パンと星降るふくろう」で参加する。
たこやきさんの全力でレビューする冊子を無料配布するので、紙で欲しい方はぜひスペースまで遊びに来てほしい!
今後のアンソロに関するお知らせはTwitterで随時つぶやいていくので、気になる方は「#じゃがアンソロ」タグをチェック願いたい。
ちなみに、
この本の奥付の発行日は2022年5月30日になっている。
初売りイベントの文学フリマ東京は5月29日で、これは別に勘違いしたわけではない。
5月30日は、ジャガイモのふるさとペルーでは「全国ジャガイモの日」としてお祭りが開かれているのだ。
何百種類ものジャガイモの仲間が集まるらしい。震えるね。
前にマチュピチュを見にちょっとペルーまで行ったときは
高山病っぽくなって現地の草と油で速攻治ったり
事故で道路が動かなくなって絶対乗らなきゃいけない列車に乗るために崖沿いの線路をダッシュしたりはしたのだが
ジャガイモに興味なかったのが悔やまれる。
次行くならこの祭りに合わせたい。
長々とお読みいただきありがとうございました。
素晴らしい参加者のおかげで本当に面白い本になったと思うので、
ジャガイモ好きな人に届きますように。