決算月が業績を左右する
はじめに
会社を設立した時、決算月をどのように決めましたか?
6月に設立するから消費税の免税期間を目一杯とって5月決算にした。なんとなくキリが良いから3月や12月決算にした。こういったパターンは良く耳にします。
それで良いのでしょうか?
インボイス制度の導入により消費税の免税期間を考慮することはほとんど意味がなくなりました。既に免税期間が経過し課税事業者となっている会社にとっては、免税期間を考慮して決めた決算月を継続する理由がありません。
会社の決算月は業績に少なからず影響します。改めて決算月を戦略的に考えてみませんか?
本記事では業績にプラスとなる決算月の選び方をご紹介していきます。
決算月が業績に及ぼす影響
影響その1「節税効果」
納税額を抑えキャッシュを会社に残すことは、中小企業において重要な経営課題のひとつです。決算月の良し悪しは節税効果に影響します。
例えば利益に季節的変動がある場合、毎年夏場(6~8月)の利益が大きく膨らむ会社があるとします。
この会社が5月決算である場合と8月決算である場合ではどちらが節税に有利でしょうか?
答えは断然5月決算です。
5月決算であれば夏場(6~8月)に稼いだ利益の額に応じてその後約1年かけて節税対策ができます。8月決算ではそうもいきません。何もできず決算日を迎えるかその場しのぎの対策となってしまいます。
節税という観点からは「利益が出る月の直前を決算月とする」ことが鉄則です。
影響その2「資金繰り」
資金繰りも中小企業経営においては重要なポイントです。赤字を出しても会社は潰れませんが、資金がショートすれば黒字でも会社は潰れます。
資金繰りを良くする決算月のポイントは次の2つです。
まずは節税の項目でも紹介した「利益が出る月の直前を決算月にする」ことです。
これにより利益から得られたキャッシュを資金繰りで1年間使い倒した上で納税するというサイクルができます。これに対して利益を出した月の直後に決算が来てしまうと獲得したキャッシュを活用する間もなく納税となり非常にもったいないです。キャッシュが右から左へ素通り状態です。
もうひとつのポイントは「銀行の決算月からの逆算」です。
銀行の決算月は銀行法第17条により3月と定められています。中間決算は9月です。
という事は決算前に成績を伸ばしたい銀行が融資に積極的になるのは、融資審査期間を考慮して2月と8月となります。
2月または8月に決算書ができあがるのは12月決算と6月決算の会社です。
融資審査の際に最新の経営状態を決算書で確認する場合と期中の試算表で確認する場合では、どちらが銀行にとって安心感があるでしょうか?
当然ながら決算書の方が信用力が高いです。
銀行が融資に前向きになるタイミングで出来たての決算書を提出することができれば、融資にはいくぶんか有利に働きます。
影響その3「税務調査」
決算月は税務調査にも影響します。税務調査が好きな方はいないと思います。できれば来ないで欲しい、来たとしてもお手柔らかにお願いしたいという方がほとんどでしょう。
では、税務調査と決算月はどのような関係があるのでしょうか。
税務調査には2つの波があります。秋シーズンと春シーズンです。
そして税務署の事務年度は6月末でひと区切りであり、7月には人事異動です。
これらから言えることは、春シーズンは6月末までに調査を結了したいという動機づけがなされるため短期決戦となり、秋シーズンの税務調査には6月末まで時間がたっぷりあるということです。
短期で終わる税務調査と長期におよぶ税務調査ではどちらが良いですか?
税務調査への対応に時間を割くということはそこにコストが発生します。税務調査中はやましいことがなくても心理的な負担が生じます。
なるべく税務調査は短期で終わらせたいものです。
ちなみに比較的春シーズンの調査対象に選定される可能性が高いのは6月~1月決算の会社です。
終わりに
いかがでしょうか。決算月は「節税効果」「資金繰り」「税務調査」という面から会社の業績に影響を及ぼします。戦略的に決算月を選定すれば、何となく決算月を決めた会社よりは有利に立てます。
そして決算月の変更は非常に簡単です。
株式会社であれば株主総会で決算月変更の決議をし、税務署等へその旨を届け出るだけです。
ぜひ貴社にとって意味のある決算月を考えてみてください。