【生活】虫嫌いは野菜を育てよ
田舎育ちのくせに虫が嫌いだ。
あいつらって急に動いて、パーソナルスペースガン無視でこっちに来たりする。
足の数も多い。フォルムが気持ち悪い。
●すと変な汁出たりする。そして臭い。飛ぶ鳥は行儀が良いが、虫は跡を濁す。
僕にあいつらへの対抗策は持ち合わせていない。出会ったら絶望。
そんな僕でも、最近やっと、少しだけ、虫を●すことができるようになった。
農業に虫はつきもの
虫への抵抗感が少し和らいだのは、野菜を育て始めた頃からだった。
大袈裟にも食糧危機を懸念して「これから農業の時代が来る」と思い立ち、家の近くの畑を借りて野菜を育て始めた。
なんか偉い社長って、リタイア後にこぞって野菜を育て始めたりしがちだったりする。思いついたときは「若いのに、ついに僕もその境地に至ったか」とひとり悦に入ったりしたもんだ。
でも農業は甘くない。たった3畝を管理するだけでも大変だった。
土を掘り起こして土中の病原菌や幼虫を●す「寒越こし」、肥料の散布、畝づくり、ビニール貼り、そして収穫と、とにかく腰に来る作業満載。
苦労を経て育てた野菜は、まるで我が子の様にかわいいのである。僕に子供はいないが、大体こんな感覚だろう。
そんな我が子の葉が、緑色の芋芋したやつに食べられているのを発見したら、皆はどうだろうか?
人の子を食べておきながら、成長したら罪の意識も感じさせないほどに軽やかに飛んでいくあいつを僕は許さない。
虫への畏怖などどこかへ彼方だ。怒りにまかせて●してしまう、農業は連続殺虫犯へと僕は姿を変えてしまったのだった。
最も嫌いなクモ、野菜を守る相棒に
農業前の僕が最も嫌いな虫はクモだった。足が多くて気持ち悪いから。
でも、農業において奴は強力な味方になる。
農作業中に耳を煩わせる「蚊」はもちろん、よくわからん虫なんかもきっちり処理してくれる。
やつらにかかれば農薬は出番なし。有機栽培への道が開かれるのである。
それからというもの、クモは僕の天敵から、共通の敵を持つ相棒となったのだ。昨日の敵は今日の友とはまさにこのこと。
第一印象で決めつけるのは、もうやめよう
虫に教えられたことがある。第一印象で判断しては駄目ということである。
相変わらず気持ち悪くて嫌い気味ではあるが、クモは同業たる虫を食う“益虫”なのだ。
最近は家の近くにできたクモの巣は取り除かず、虫を守る門番として同居するようにしている。
でも、こういったことって虫に限った話ではない。
ネットでやたらと嫌われがちな中国人や韓国人だって、実際に会ってみたら「良いやつじゃん」となることだってあるし、同じ日本人にだってクズはいる。
虫というカテゴリーでひとくくりにして、「虫ならすべて嫌い」というのであれば、それはあまりに差別主義的だし、もしかしたら「野菜の葉を食う芋虫の中でも、いいやつがいるのかもしれない」。知らんけど。
「大事なのは、個別具体的に人虫物事に向き合うことだ」。農業がそう教えてくれた気がする。
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