スナック忘れな草~ゆうき と みどり・2024マーチS~
トップ画像引用:JRA FUN 公式X
■ 水原一平
2024年3月23日(土)午後5時
-東京都某区 スナック忘れな草-
「どうなるんでしょうね、大谷翔平」
スマホを見ながら、蚊の鳴くような声を出したのは真一郎だった。大谷翔平の専属通訳、水原一平がドジャースを解雇されたニュースだ。真一郎は大谷翔平と同じ岩手県出身であり、同選手の活躍を自分のことのように誇らしげに語ることも多々あった。それだけに、最悪の場合MLBからの永久追放もありうるという報道に、気が気でない様子をにじませていた。
そんな真一郎の心情を察し、左隣にいたギョニ子も眉根を寄せた。
「まさかこんなことになるとはねえ・・」
マスターも麗子ママも、呼応するように本当にねえなどと相槌を打った。
「日本中が・・・いや、世界中がまさかと思っただろうが・・」
タコ社長が腕を組みながら言った。
「そのまさかには二種類ある」
「二種類ある?」
マスターが意外そうな顔で訊いた。
「ああ、二種類だ。ひとつは普通のまさか。まさかこんなことが起こるなんてのまさかだ。もうひとつは、本当にそう来たかのまさかだ」
「本当にそう来たかって、どういうことですか?水原一平がそんなことをいつかしでかすと思ってたんですか?」
真一郎がとがめるような口調でタコ社長に尋ねた。みんなもうんうんと頷いている。
「いや、そうじゃねえさしんちゃん、気を悪くしねえで聞いてくれよ?突拍子もねえ考えだが、俺は神様が大谷翔平という人間に嫉妬したと思ってるんだ。どんな神様だかは知らねえがな・・・あんなとんでもない選手、10年に一人とか100年に一人とかという次元じゃねえ。俺らが人生を一万回繰り返したって、同時期に生きることは二度とありえねえくらいの超スーパースターだ。それはわかるな?」
真一郎は深く頷いた。
「縁起でもねえ話だから今までは言わなかったが、俺は大谷翔平が交通事故なんかに遭わねえといいがなと、前からふと思うことがあったんだ」
「神様が嫉妬して・・・ですか?」
マスターが尋ねた。タコ社長が頷く。
「好事魔多しってやつかな?・・今回、彼自身の事故や不祥事ではなく、身内も身内、専属通訳の解雇という結果になって表れた・・・大谷翔平自身はおとがめがなく、無事プレーを続けられる可能性がまだあるだけいいってもんよ」
タコ社長はそう言って、水で割っていない眞露を一気に飲み干した。タコ社長だって悔やしいに決まっているのだ。それを神様の嫉妬という苦し紛れの解釈で、なんとかやりすごそうとしている―
■ 北酒場
「さて、マーチステークスでも予想しようじゃねえか!」
タコ社長はそう言うと、暗い雰囲気を一掃するように、手を叩き弾けるような音を立てた。
「そうね!あたしたちが心配したってどうなるものでもないわ!」
ギョニ子が明るく言った。グイっと2センチほど残っていたぬるい生ビールをあおると、麗子ママにジョッキを差し出した。
あいよ喜んでと麗子ママは居酒屋の若い店員のような威勢のいい声を出し、冷えた新しいジョッキに生ビールを注ぎ始めた。
「『こぶし競馬』があるからでしょうか・・」
真一郎が言った。
「2番と3番のキタノの並び。『北酒場』という曲を思い出しますね・・えーと歌手は・・・」
「細川たかしですね」
歌手名が出てこない真一郎に、マスターが手を差し伸べた。タコ社長が続く。
「そこは気になるよなあ。3番のキタノは石川裕紀人・・石川さゆりも『北酒場』はどこかで歌ったことがあるだろう」
「同馬主3頭に囲まれた1番はどうかしら?」
生ビールをギョニ子に渡し終えた麗子ママが言った。1番ヴァルツァーシャルは、北所直人の3頭に囲まれているという。
マーチS 14頭
8-14 ペイシャエス (北所直人)
1-01 ヴァルツァーシャル(斎藤新)
2-02 キタノリューオー(北所直人)
3-03 キタノヴィジョン(北所直人)
「そうか!ペイシャエスも北所直人だったんですね!冠名が違うからうっかりしてました」
真一郎が膝を軽く叩きながら言った。
「2番3番のキタノが浩二浩二で・・・」
ギョニ子がスマホ画面をピンチアウトし、馬柱を拡大しながら言った。
「字は違うけど、12番ブライアンセンスは『こうじ』にサンドされてるのよね・・・しかも調教師は1番斎藤新のお父さん・・・むずいわね?」
マーチS
8-14 ペイシャエス (北所直人)
1-01 ヴァルツァーシャル(斎藤新)★子
2-02 キタノリューオー(北所直人・萱野浩二)
3-03 キタノヴィジョン(北所直人・萱野浩二)
7-11 キリンジ (岡浩二)
7-12 ブライアンセンス(斎藤誠)★親
8-13 ミトノオー (牧光二)
「北所直人3頭に囲まれてるのが息子斎藤新。北所直人の2頭のキタノは調教師が『浩二』で、斎藤新の父斎藤誠は、『こうじ』にサンドされている」
マスターが言った。
「斎藤親子のワンツー・・・あるかもしれませんね」
■ シャンパンカラー
「高松宮記念のシャンパンカラーも気になるのよね」
麗子ママが意外な馬を口にした。タコ社長が疑問を呈す。
「シャンパンカラー?そりゃまたどうしてだい?」
「だって前走がフェブラリーステークスだもの。フェブラリーの次がマーチでしょう?」
高松宮記念
5-09 シャンパンカラー
(前走:フェブラリーステークス 16着)
「なるほど、それは盲点でした。ジャニュアリー、フェブラリー、マーチ。同じ英語月名レースということですね?」
真一郎の問いに、麗子ママはにっこりとほほ笑んで頷いた。
「そうなの。それで、高松宮記念に前走フェブラリーステークスの馬が出走したとき、裏のマーチステークスに飛んでないか調べてみたの」
● 2014/3/30(日)高松宮記念
5-10 シルクフォーチュン 10着
(前走:フェブラリーステークス 15着)
8-16(右)エーシントップ 4着
(前走:フェブラリーステークス 16着)
同日マーチステークス
8-15(右)ソロル 1着
● 2018/3/25(日) 高松宮記念
3-05 ノボバカラ 13着
(前走:フェブラリーステークス 13着)
4-08 レッツゴードンキ 2着
(前走:フェブラリーステークス 5着)
同日マーチステークス
(4-08)センチュリオン 1着
● 2020/3/29(日)高松宮記念
7-14 モズアスコット(逆5)13着
(前走:フェブラリーステークス 1着)
同日施行予定 マーチステークス
※降雪で順延 3/31(火)施行
6-12 スワーヴアラミス(逆5)1着
※ 16頭
「へえー!3回連続1着馬を教えてるってわけね?」
ギョニ子が感嘆の声を挙げた。麗子ママが頷いて言った。
「そうなの。その前の2013年は不発だったけどね。今回、梯子を外される可能性もあるけど、同じことをしてくれるならこの3頭よ」
高松宮記念
5-09 シャンパンカラー
(5枠右・正9・逆10)
(前走:フェブラリーステークス 16着)
マーチS
4-05 ニューモニュメント(逆10)
5-07 ゴールドハイアー (5枠右)
6-09 クリノドラゴン (正9)
「なるほどなあ・・」
タコ社長が言った。
「1着馬を指名してくれてるのはいいが、今回そろそろ途切れそうなのと、3頭指名ってのがな?・・・」
みんながうんうんと頷いた。面白いサインではあるのだが、先ほど挙がった斎藤親子と併せ、対象馬が逆に多くなってしまった。
■ 「ゆうき」と「みどり」
10分間の休憩を挟んだのち、新しい提案をしたのは真一郎だった。
「6枠に『ゆうき』がいますね!『こぶし競馬』の徳永ゆうきです」
6-09 クリノドラゴン(大橋勇樹)
「なるほどしんちゃん。それはいいかもしれません。6枠ですから丘『みどり』でもある。みどりとゆうきの枠ということになります」
マスターはそう言うと、パソコンを素早く操作しだした。
「ふむふむ。『こぶし競馬』が発表されてから、大橋勇樹厩舎は重賞はおろか、メインレース自体出走がないですね」
マスターによると、JRAFUNから『こぶし競馬』が発表されたのが3月7日。それ以降大橋勇樹厩舎からは延べ16頭が出走し、1着2回2着4回で(2.4.0.10)という成績だった。
「『ゆうき』と『みどり』が成立する6枠は、16回のうちわずか1回。その結果がこれです」
2024/3/16(土)
阪神08R ダート1800
5-08 プメハナ 1着
6-10 クリノクリスタル(大橋勇樹)14着
7-12 ルナビス 2着
「6枠またぎの5-7ね!」
ギョニ子が言った。マスターが頷く。
「このレースがさりげなく『ダート1800戦』というのがいいですね。マーチステークスと同条件です。二匹目のどじょうがいるなら・・」
5-07 ゴールドハイアー
(シャンパンカラーの5枠右)
5-08 ダノンブレッド
6-09(みどり と ゆうき)
6-10 ホウオウルバン
7-11 キリンジ
7-12 ブライアンセンス(斎藤誠)
「前回と同じ枠5-7をもう一丁やってくれるなら、シャンパンカラーの5枠右であるゴールドハイアーの枠と、斎藤親子からパパのほうブライアンセンスがいる7枠になりますね」
「よし!」
タコ社長が力強く言った。
「あれこれ買ったってしょうがねえ!枠連の5-7の一本でどうだい?」
みんながうんうんと頷いた。だが、麗子ママだけは津村明秀が乗る7番ゴールドハイアーの単勝も押さえたいという。
「伊藤英明が裏の中京にいるなら、英明をひっくり返した明秀の津村明秀。単勝は押さえてみたいの。伊藤英明のグランパパプロダクション。創設したのは津川雅彦だったわよね?」
マーチS
5-07 ゴールドハイアー(津村明秀)
※伊藤 英明 グランパパプロダクション
創設者:津川雅彦
マスターが大きく頷き、パソコンを操作しながら言った。
「ゴールドで7番といえば、有馬記念のゴールドアクターですね。あれは居城寿与オーナーの父、要さんの時代だったでしょうか?・・・ゴールドハイアーが勝てば・・・・・・居城寿与オーナーの重賞勝利は2016年オールカマーのゴールドアクター以来となります」
2015 有馬記念
4-(07)ゴールドアクター(居城要)
2016 オールカマー
(5)-06 ゴールドアクター(居城寿与)
マーチS
(5)-(07)ゴールドハイアー(居城寿与)
※勝てば居城寿与は2016オールカマー以来の重賞勝利
みんながいいねと同意し、スナック忘れな草の勝負馬券が決まった。
スナック忘れな草
マーチS 勝負馬券
◎7番ゴールドハイアー
〇10番ブライアンセンス
単勝:7番ゴールドハイアー
枠連:5-7