指定難病【膠様滴状角膜ジストロフィー】とは
「膠様滴状角膜(こうようてきじょうかくまく)ジストロフィー」は、羞明(しゅうめい)や流涙といった症状を伴う視覚障害の1つで、指定難病に含まれる病気です。
日常生活や社会生活に支障をきたす可能性が高く、就職の際には就労移行支援への相談・通所が推奨されます。
今回は、膠様滴状角膜ジストロフィーの概要と、症状を持つ方が利用できる就労移行支援について解説しています。
■どんな病気?
まずは、膠様滴状角膜ジストロフィーがどのような症状を伴う病気なのか、原因や治療法と合わせて見ていきましょう。
▽膠様滴状角膜ジストロフィーの原因
膠様滴状角膜ジストロフィーは、目の角膜部分に発症する進行性の病気です。
角膜(=黒目)は、表面から角膜上皮・ボーマン膜・角膜実質・デスメ膜・角膜内皮という5層で構成されており、この内の角膜実質にアミロイドと呼ばれるタンパク質が沈着することで発症します。
アミロイドの沈着は、遺伝子の変異によって角膜上皮のバリア機能が低下し、角膜の中へタンパク質が侵入してしまうことが原因であると考えられています。
膠様滴状角膜ジストロフィーは欧米と比べ日本人に多い病気で、国内の推定患者数は400名程度です。
両親に血縁関係(いとこ婚など)があるケースで発症しやすく、この場合は兄弟姉妹など家系内に膠様滴状角膜ジストロフィーの症状を持つ人がいる可能性があります。
▽主な症状
膠様滴状角膜ジストロフィーの主な自覚症状は、羞明・流涙・異物感・視力低下などです。
進行性の疾患であるため、多くの場合は幼少期(10~20歳頃)に羞明や流涙といった症状を自覚し、加齢とともに視力低下・眼痛を伴うようになります。
また膠様滴状角膜ジストロフィーは角膜全体に混濁や隆起が広がるため、見た目にも影響を与えるのが特徴です。
▽治療法と経過
膠様滴状角膜ジストロフィーの治療法としては、角膜上の隆起物の除去や角膜移植が挙げられます。
初期症状の段階であれば隆起物の除去で済みますが、混濁によって羞明や視力低下などの症状を伴っている場合には角膜移植が必要です。
ただし、膠様滴状角膜ジストロフィーは遺伝子に起因する病気であり、治療をしても完治は望めません。
手術後も100%の確率で膠様滴状角膜ジストロフィーが再発するため、生涯にわたって数年単位で角膜移植を行うことになります。
▽2019年度から医療費助成の支給対象となる指定難病に認定
膠様滴状角膜ジストロフィーは、2019年度に実施された「指定難病検討委員会」にて、指定難病の要件を満たす病気であると判断されました。
これにより、現在は膠様滴状角膜ジストロフィーの方に対する医療費助成が開始されています。
■日常生活を送るうえでの支障
膠様滴状角膜ジストロフィーに伴う症状の中でも、羞明(通常は苦痛を感じない光量に対して、まぶしい・不快と感じること)は日常生活に影響を与える厄介な症状です。
続いて、羞明の症状を抱える方が日常生活・社会生活で直面することの多いトラブルや悩みについて詳しく見ていきましょう。
▽日常生活における困りごと
・部屋の明かりがまぶしく、カーテンを開けられない、電気を付けられない
・明るい部屋にいると目の奥や頭部に痛みを感じる
・家族と感覚が異なるため、
理解を得られず自室へ籠りがちになってしまう etc...
▽社会生活における困りごと
・パソコン、スマホの画面を見ることができない
・太陽の光がまぶしいため、外出もままならない
・車での通勤ができない
▽一般的な解決策
膠様滴状角膜ジストロフィーの方がなるべくストレスを抱えず生活するための工夫として、以下のようなものが挙げられます。
・帽子、フードをかぶって光を遮る
・乗り物に乗っているときは目を閉じておく
・部屋の電気を間接照明に切り替える
・パソコン、スマホの輝度を下げる
・遮光眼鏡、サングラスを着用する
■向いている仕事内容
膠様滴状角膜ジストロフィーをはじめ、羞明や視力低下といった視覚障害をお持ちの場合、一般的な仕事に就くことが難しいと感じる方も多いかもしれません。
しかし、近年ではIT技術の進歩によって、視覚障害のある方でも対応できる仕事・業種が増えてきています。
膠様滴状角膜ジストロフィーなどの視覚障害を持つ方が数多く活躍している仕事として、以下のような職業が挙げられます。
▽あはき業(あんま・鍼・灸)などの技術職
視覚障害者の方に適した仕事として最も知られているのが、「あはき業」や「三療業」と呼ばれるあんまマッサージ師・鍼師・灸師の仕事です。
一般的に、視覚障害者の方は視覚以外の感覚に優れている場合が多く、手の感覚の鋭敏さを必要とするマッサージ師の仕事は適正が高いとされてきました。
最近では福利厚生の一環として社内にマッサージルームを開設する企業も増えており、ヘルスキーパーという形で就職できる可能性もあるでしょう。
▽オフィスにおける事務的職業
近年のIT技術の進歩により、膠様滴状角膜ジストロフィーといった重度の視覚障害を持つ方であってもパソコンを使った事務作業に対応できるようになりました。
音声読み上げソフトを使用したテキストデータの作成や、データの集計・計算などが可能となったことで、視覚障害者の方の仕事の幅は大きく広がったといえます。
■就労移行支援事業所を利用しよう
視覚障害を抱えた状態で就職・転職活動を行う場合、「働き続けられるか分からない」「障害に理解のある会社を見つけられるか不安」といった悩みを持つ方も多いです。
このような場合は、就労移行支援事業所のサービスを活用するのがおすすめ。
ここからは、就労移行支援サービスの概要と、視覚障害を持つ方におすすめの就労移行支援事業所を紹介していきます。
▽就労移行支援事業所のサービス内容
就労移行支援事業所とは、膠様滴状角膜ジストロフィーのような障害を持つ方が一般企業に就職・転職するためのサポートを行う福祉サービスのことです。
地方自治体からの指定を受けてサービス提供を行っており、全国には3,300か所を超える就労移行支援事業所があります。
就労移行支援事業所で受けられる主なサービスは以下の通り。
①就職したい職業に対応する職業訓練
②履歴書の添削・模擬面接などの就職活動サポート
③就職・転職に関する相談
④障害の特性に合わせた業種の提案やアドバイス
⑤職場実習の環境提供
⑥就職後の定着支援
なお、就労移行支援事業所を利用するには、以下の条件を全て満たす必要があります。
①18歳以上・満65歳未満
②一般企業で働くことを希望している
③身体障害・知的障害・精神障害・発達障害・難病などを持っている
障害手帳を持っている方はもちろん、持っていない方であっても医師の診断や自治体の判断によっては就労移行支援サービスを利用することができます。
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