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米国株の展望

さて、8月23日にジャクソンホール会議にて、FRB議長であるパウエル氏の発言からは9月のFOMCで利下げが発表される公算が高まりました。
これを受けて8月上旬より下落傾向にあった株価は、ほぼ元の値段に戻している状態です。

これからの米国株全体を見た時、このまま順調に上がっていくのか、それとも2番底が待っているのかを考えてみましょう。


AI株ブームとハイプサイクル

まずはAI関連株としては筆頭となるNvidiaの決算が8月29日に控えています。
現在のAI株ブームを牽引する銘柄であるため、Nvidiaの決算とそれを受けた市場の反応は注目する必要があるでしょう。
NvidiaがコケたらAI関連株は軒並み下落する、といった可能性は十分に考えられます。

Nvidiaの決算

では、Nvidiaの決算はどうなるか?
これは実際にフタを開けてみないとわからないのですが、おそらく発表内容は悪いものではないと思います。
売上や利益はしっかりと出ているハズですが、問題はそれを市場がどう捉えるかにあります。
このところアメリカの大手テクノロジー企業、いわゆるマグニフィセント7と呼ばれるGoogleやMeta、Microsoftなどの決算発表は、いずれも決して悪い内容ではないにも関わらず失望による売りが発生していました。
そのため今回のNvidiaの決算も、投資家の期待を維持するためには普通の決算内容ではなく、目を見張るような良い決算でなくては市場が失望に転じる可能性があるため、非常に難しい決算発表になると考えています。

そしてもし、ここでNvidiaが市場の期待に応えることが出来る内容の決算であれば、AI株ブームはまだしばらく継続するとみていいんじゃないでしょうか。
逆にこのタイミングでNvidiaが決算ミスした場合は、AI株ブーム全体に暗い影を落とし始めると思います。

AIハイプサイクル

なおITに関する調査、報告を主に行うGartner社から、生成AIのハイプサイクルは、既にピークに達した可能性があると発表がありました。

ハイプサイクルとは、新しい技術が市場に出たときに、市場がその技術を時間の経過とともにどのように受け入れていくかを表したものです。
新しい技術は市場に受け入れられる段階として黎明期、期待のピーク期、幻滅期、啓発期、安定期に分けられると考えられています。
黎明期はその市場の研究や基礎的な技術が商業的に開始され、一部の先行者によって実験的に取り入れられていきます。
それを経て技術に対する期待が高まると、本来その技術が持つポテンシャル以上に市場の期待が高まり、技術への投資やメディアでの露出が過剰に高まる時期、それが期待のピーク期となります。
その後、幻滅期が来ると、過度な期待は翻って失望に変わる時期が来るとされています。もっと出来ると思ってたのに...とか、こんなことも出来ないのか...みたいに、過度に祭上げられた期待の反動で、勝手にガッカリする時期ですね。
それが過ぎるとようやく、その技術の本来のポテンシャルが見直される啓発期を経て、市場や社会に不可欠な技術として浸透する安定期を迎えるとされています。

Gartner社はAIはピーク期にあると言っています。
これはつまり、今は投資や期待が過剰となっている時期、ということを意味します。
ハイプサイクルに従うなら、次に来る幻滅期にAI関連の投資は一度下火になるはずで、そのタイミングで関連株が軒並み下落することは十分に考えられるわけです。

次のNvidiaの決算なのか、はたまたその次か、もしくはまだもっと先の決算かはわかりませんが、Nvidiaの決算に陰りが見えたタイミングが、幻滅期の到来を告げる警笛になると考えています。

9月の利下げ

さて、おそらく9月に控えている米国の利下げを見てみましょう。
現在の米国政策金利は5.25~5.50%とされています。
8月に入ってからの主な米国の経済指標としてはISM非製造業景気指数、小売売上高などは若干上昇していました。
これは少し景気が持ち直していることを示しているため、9月に控えた利下げ予測と相まって現在の株の反発があると考えられます。

しかし問題は相次ぐ雇用統計の下方修正、つまり雇用状況の悪化です。
景気が完全に持ち直しているならFRBは利下げする必要は無く、今回の利下げはこれ以上、雇用状況を悪化させない意図があると思われます。
雇用状況は悪化し始めると急激に悪化し、過去も大きな景気後退を招いてきました。
FRBはこれに対し、利下げで先手を打つことで雇用状況の悪化を食い止める思惑なのでしょう。
このまま上手くいけば、いわゆるソフトランディング達成で、インフレを退治し、なおかつ景気後退も招かない理想的な経済状況を作り出すことに成功するわけで、その暁にはより一層の株高が期待されます

市場は既に9月の利下げは織り込み済みで、焦点は利下げ幅が0.25%なのか0.5%なのかに移っています。
利下げはゆっくりと0.25%づつ行われて行けば、市場の混乱も少なく、また経済状況に対してFRBの政策が後手に回っていない事を示します。
しかしこれが0.5%の利下げが複数回にわたって行われる状況だと、FRBの対応が経済の減速に対して後手に回っている状況を示します。
その場合は近い将来、もしくは既に景気後退に突入している可能性があるため、株価はしばらく低迷することになるでしょう。

米国株が低迷すると、必ず日本株にもその影響が及ぶため、日本株しか取引きしていない投資家も、今後のアメリカの政策金利には引き続き注目する必要があります。

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