”LA LA LAND” と出会って3年、新たな気づき
2019年2月9日、私は家でLA LA LANDを観て、恋に落ちました。
その前の日の金曜日に金曜ロードショーで放送されており、
その録画を観ていました。
その時はデイミアン・チャゼル監督の最新作『ファーストマン』の宣伝も
兼ねており、地上波初放送でした。
La La Landを観たのも奇跡的と言えるかもしれません。
その前の週には、スターウォーズの『ローグワン』が放送されており、
ライトなスターウォーズファンだった私はそれを観ていました。
金曜ロードショーのCMには次週放送される作品の宣伝も含まれています。
そこでLa La LandのCMをみた私はLa La Land を観ようと思ったわけです。
この映画は私の人生を変えました。
この映画を観て映画そのものに引き込まれた私はそこから映画のことが大好きになりました。
先日の2月9日で初めて観た時から3年たち、同時に私が映画を大好きになってから3年経ちました。
このメモリアルな自分だけの日を大切にしたいと思い、
3周年を記念してLa La Landを再鑑賞しました。
もう何度も観ており、それまでの2年半で考えてきた感想や考察は下の記事でまとめてありますのでよかったら読んでください。
何度観ても新たな気づきを与えてくれるのがLa La Landの一つの魅力であります。
この記事ではそんなメモリアルな日に新たに気づいたことを書いていきたいと思います。
そしてこの大好きな作品をもう一度観てみようと思っていただければ本当に嬉しいです。
一度観た方に向けて書いているのでネタバレにはご注意ください。
映画を守りたい
セブはジャズを守りたいから、自分のジャズバーを持つことを夢見ていました。バンドのキースとの会話でもジャズを守りたいとセブは語っています。
しかし消えゆくのはジャズだけなのでしょうか
ミアが女優を目指す理由として「映画を守りたい」と明言することはありませんが、映画が消えてしまうかもしれないと思わせるようなシーンはいくつかあります。
ボーイフレンドの兄弟との会話では映画館の質が落ちたことが言及され、映画館に行ってもガラガラの席が目立ちます。
そして追い打ちをかけるようにフィルムが焼き切れ、リアルトは閉館してしまいます。
消えゆくジャズを守ろうとしていたセブと共にいたミアは、映画も消えてしまうかもしれないと感じたことでしょう。
知らない間に大好きなものを守りたいと思っていたのかもしれません。
その思いがなければ最後のオーディションに臨むことも、その後の大活躍もなかったかもしれません。
メタ的にはなりますが、その姿をデイミアン・チャゼル監督に落とし込むことができると思います。名作へのオマージュに溢れながらも、新たな世界で愛を表現していくその姿はミアと共通するところがあるでしょう。
ミューズ
芸術においてミューズが示唆されることが多くあります。
ミューズはギリシア神話の詩と音楽の神であり、広く芸術の女神として芸術家に霊感を与える存在です。
最近観た『フレンチディスパッチ』ではレアセドゥ演じるシモーヌがミューズを示唆させるようでした。
ミューズが女神であることももちろん影響すると思いますが、女性が芸術家である男性にインスピレーションを与える、という描かれ方が多いです。
しかしLa La Landにおいてはセブがミアのミューズであると考えることができると思います。この物語において客観的にみれば成功を収めたのは圧倒的にミアです。
セブがいなかったらミアが芸術家として大成しなかったでしょう。
男性でもミューズになれる。
女性でもミューズから力をもらえる。
La La Landはそんなことを教えてくれたのではないでしょうか。
City of Starsは2度ある
City of StarsはLa La Landで一番好きな曲という方も多いのではないでしょうか。
この曲は劇中で2度歌われており、その場面について考えたいと思います。
一度目はミアをジャズバー・ライトハウスに連れて行ってジャズの素晴らしさと自分の夢をミアに語った後にセブが一人で桟橋の上で歌います。
City of stars
Are you shining just for me?
City of stars
There's so much that I can't see
Who knows?
Is this the start of something wonderful and new?
Or one more dream that I cannot make true?
スターの街よ
その輝きは俺のため?
スターの街よ
俺には見えないものがいっぱいあるだろう
誰がわかる?
これは素晴らしく新しいことの始まりか
それとも叶えられない夢か
自分の夢をミアに語ったことで、改めてその夢を見つめ直したのでしょう。
今まで自分の中だけだった夢を共有することでこれは本当に叶えられる夢なのか、それとも叶わぬものなのかわからなくなります。
セブは不安になります。
ロサンゼルスはそんな不安にかられる夢追い人を数えられないほど見てきたはず。
だからそんなスターの街に答えを問う。わかるはずもないが。
そんな思いが溢れた歌なのでしょう。
それでは2回目のシーンを見ていきましょう。
この時、ミアはセブに脚本を書いてみたらと言われ、自分の一人芝居に熱心に取り組んでいます。
一方のセブはミアを応援するために、バンドに入って試行錯誤していました。
二人ともそれぞれを通して自分の夢との向き合い方を考えた、そんなタイミングで歌っています。
夢とは何であるのか。そんな思いを乗せてスターの街に問う。
夢追い人をたくさんみてきたスターの街に。
夢追い人が出会うスターの街に。
黒い服と最後のシーンの考察
La La Land において衣装、特に衣装の色はしばしば注目されます。
セブとミアの服の色がその時の感情を表しているのではないか、と。
具体的には、青を着ている時は気持ちがブルーの時、明るい暖色の時にはハッピーな時、そして黒を着ている時はやりたくないことをしている時。
このような考察をされることが多いです。
もちろん、様々な考察があるからこそ受け取り手の豊かさが生まれるわけですが、この考察に則ってしまうと最後のシーンでミアは好きでもない男性と結婚しているのではないか、と考えられてしまうのです。
その可能性を否定することはできません。しかし、ミアの表情や振る舞いからそんなことはないのでは、と個人的には思っています。
そこで私の考える黒の意味を書いていきたいと思います。
私の考える黒の意味は「たった一人の特別な人」であることです。
黒というのは派手な色ではないので、着る人が輝いている必要があります。
他の色では衣装によって個性を出すことができますが、黒を着るならば着る人が自分だけの色を持ってなければなりません。
La La Land で黒い服を着ているときというのは、冒頭のハイウェイで星の数ほどいた、まだ何者にもなれていない者から、代わりのきかないたった一人の特別な存在になった時なのです。
黒い服を着ているシーンを見ていきましょう。
キースのバンドに入ってからセブはずっと黒い服を着ています。
これは世間的に見てセブは一人のアーティストとしてみられていることを表しています。このバンドの人気は凄まじいものでした。そのバンドを支えるキーボードであるセブはきっとLAで成功した個性溢れる人間に他の人からは見えていたと思います。
注目すべきはライブの場面です。この場面はミアの視点から描かれています。
ライブの始まりでは暗い背景に黒い服を着ていたのでセブの服はもちろん黒く見えます。ミアは他の観客と同様にセブを一人のアーティストとしてみていたのでしょう。
しかし、照明が一変し、曲調も一変します。後ろの赤い照明のせいでセブの服は赤く見えるようになります。セブが本当にやりたいことをやっているわけではないことに気づいたミアの視点では、代えのきかないアーティストではなく、夢を叶えていない何者でもない存在になってしまったのです。
次に口論する場面を考えます。
この場面ではミアとセブ以外の人物は全く登場しないので完全に二人だけの世界になります。
楽しく食事をしている場面では二人とも黒色の衣装を着ており、それぞれにとって「たった一人の特別な人」として描かれていました。
しかし、口論に発展すると二人の顔のみがアップで写され、服が見えなくなっています。特別な存在であることの象徴が消えたのです。
そして舞台も見逃してミアが帰ってしまったあと、バンドをやめて結婚式でピアノを弾くセブの服はベージュです。
周りの人から見てアーティストではなくなり、「たった一人の特別な人」ではなくなってしまったのです。
以上のように考えると、ミアが最後のシーンで黒い服を着ていたのは
大女優「ミア・ドーラン」として誰の目から見ても「たった一人の特別な人」になったからであり、決して彼女の人生が悲しいものではないと考えることができます。
一方のセブは焦げ茶の服を着ています。彼の夢はジャズバーを持ってジャズを守ることです。自分のジャズバーを持ち、夢に一歩近づいた彼は自分自身の色を持ち始めていますが、世間的に見て「たった一人の特別な人」ではないので黒を着ることは許されません。
ミアは夢を叶え、黒が似合うようになったが、
セブはまだ黒を着ることはできず、まだ夢を追う必要がある。
この切なさがLa La Landの魅力なのかもしれません。
以上になります。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
何度見ても新たな発見を与えてくれるLa La Landですが、
この作品を好きになるきっかけになってくれば本当に嬉しいです。
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