110万人の歴史を歩く
青い空が続いている。
久しぶりにの快晴を目の前にして心が躍るはずだけど、この場所ではそうなれなかった。
今日はポーランド8日目。アウシュヴィッツ強制収容所にいる。
遠くまで伸びる青い空と、平坦な芝生が続くここで110万人の人が亡くなったと言われている。本当にあの残虐な出来事は起こっていたのかと疑いたくなる。それくらい穏やかな土地だった。
ポーランドの光ってこんなにも柔らかいんだ。
初めて感じるポーランドでの太陽はいつも見ているものよりも1.2枚のフィルターを噛ませたかのように本当に柔らかく、繊細だった。
ここで写真を撮ることに抵抗感を感じながらも、この歴史は確かに存在していて自分の心がアウシュヴィッツにいたという証を残すために、ただ撮った。
どんな歴史があっても光というものは世界を照らして揺らぐことのないものなのか。いや、揺らぎ続けているからか。罪深いものは美しさを宿すのかと思いながら遠過ぎない歴史をひたすら歩き続けた。
崩壊している建物はこの真実を隠蔽するためにナチスがわざと壊したものらしい。
この日を迎える前から「死」という存在に興味があって毎日のようにこれについて考えている時期があった。自転車に乗っている時、車と衝突して跳ねられることもあった。何度も死ぬ夢をみた。
そのどれよりも死に近い1日だったと思う。
この歴史と場所が存在していることは自分の中で確かなものになり、死という恐怖以外に人という生き物(自分自身)にも同等の怖さを持つようになった。
この日はポーランド滞在中で1番晴れた日だった。