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【脳科学と映画】その17 妄想癖
タイムトラベル映画大好きのりゅうさんです。
「脳科学と映画」シリーズ。今回のテーマは「妄想癖」または専門用語で「妄想性障害」について深掘りします。
「妄想癖」とは、現実とは異なる固定的な信念を持ち続ける精神的な状態を指します。この症状を持つ人は、証拠がない、あるいは事実とはまったく反対であるにも関わらず、自分の考えに強く固執してしまいます。
妄想の内容も色々で、
迫害妄想:他人から嫌がらせをされている、危害を加えられると思い込む。
微小妄想:自己の価値や能力を低いと確信してしまう。
誇大妄想:逆に極度に自分の価値や能力を過大評価してしまう。
被影響妄想:自分が何かに操られていると思う
恋愛妄想:自分が相手に愛されていると思う
などいろいろ分類されています。
脳科学的には、妄想癖は認知の歪みによるものと考えられており、特に情報処理におけるエラーが関与しているとされます。具体的には、脳の「扁桃体」と「前頭前野」が重要な役割を果たしています。
扁桃体:は感情を処理し、特に恐怖や不安を感じる際に活発になる部位です。妄想癖の人々では、扁桃体が過剰に反応し、非脅威的な状況も脅威として認識してしまうことがあります。
前頭前野は 複雑な思考や意思決定を行い、社会的行動を制御します。この領域の機能不全は、現実と虚構の区別をつける能力の低下を招き、妄想的な思考につながりやすくなります。
妄想癖は現実と非現実の混同している状態が日常化している状態ですが、妄想以外の症状はほとんどなく、普通に生活を送れるし、普通に仕事もできることがほとんどです。
そのため、周囲もそれを病気だとは思わず「ただの変わった人」という認識しか持たれていないケースも少なくありません。
ちなみに、妄想と空想は全くの別ものです。空想は現実世界とは全く関係のない想像を脳内で思いめぐらすことであり、妄想のように現実と混同してしまうことはありません。
例えば「鳥のように空を飛べたらどんな感じだろう」と想像するのが空想です。
同じく、妄想癖と混同されやすい言葉に虚言癖があります。こちらは日常的に普通では考えられないような嘘をついたりします。
しかし、虚言癖は自分の言っていることが嘘だと認識しているため、こちらも真実ではないことを信じ込んでいる妄想癖とは根本的に違うものです。
また、妄想は「偏執症(パラノイア)」や「統合失調症」の一部として捉えられることもありますが、両者は完全に同じではありません。
妄想性障害は妄想以外の症状がほとんどありませんが、統合失調症は、妄想の他にも、
・幻覚(幻聴が多い)
・まとまりのない発語
・意欲低下、感情平板化、自閉
など様々な症状があるのが特徴です。
ちなみに、「どこまでいくと妄想なのか」「妄想の定義は何か」と問われるとなかなか難しい問題です。
妄想とは、簡単に言うと「一般的な常識で考えれば明らかにありえないことを信じて疑わない思い込み」のことですが、一般的な常識というのは、その時代や文化背景によって異なります。
例えば、数百年前に「夏休みは南の島のプールサイドでカクテルを片手にくつろぐ」と言えば妄想として扱われてしまったでしょうが、現在では十分可能なことですので妄想にはなりません。
ちなみに妄想癖は必ずしも悪いわけではありません。被害妄想のようなネガティブなものもありますが、「私は〇〇さんに愛されている」と思ったり、「俺ってやっぱり天才!」と自己肯定できて幸せでいい気分になることができます。
また、クリエイティブな職業など妄想癖が向いてる仕事もあります。そういった意味で適度な妄想は想像力が豊かな証拠なのかもしれません。
「妄想癖」を描いた映画の例としては以下の作品があります。
『ビューティフル・マインド』(2001)
妄想癖のある実在の数学者ジョン・ナッシュの生涯を描いた作品。
『カミーユ・クローデル ある天才彫刻家の悲劇』(2013)
実在の天才彫刻家カミーユ・クローデルの晩年を描く。
『高台家の人々』(2016)妄想癖のある女性と、人の心を読める高台家の御曹司の恋物語。
りゅうさんでした。
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目次
序章: 映画と脳科学の交差点
第一部: 脳の基本機能と映画
1.1脳が映画を認識する仕組み
1.1.1 脳の情報処理メカニズム
1.1.2 映画音楽が脳へ与える影響
1.1.3 映画における脳の時間認識
1.1.4 大スクリーンが脳に与える影響
1.1.5 「吹き替え版」と「字幕版」の脳への影響
1.1.6 人はなぜフィクションである映画を楽しめるのか?
1.1.7 面白い映画とつまらない映画の違い
1.1.8 人はなぜ青春時代に観た映画や音楽に親しみを感じるのか?
1.1.9 早送りで映画を観る時の脳状態
1.1.10 サブリミナル効果
1.2 五感と映画
1.2.1 視覚と映画の表現
1.2.2 聴覚と映画の表現
1.2.3 触覚と映画の表現
1.2.4 臭覚と映画の表現
1.2.5 味覚と映画の表現
1.3. 感情と映画
1.3.1 感情の脳内プロセス
1.3.2 脳は観たい映画をどうやって決めるか?
1.3.3 男性はなぜポルノ映画を観たがるのか?
1.3.4 人はなぜ暴力映画を観たがるのか?
1.3.5 人はなぜホラー映画を観たがるのか?
1.3.6 人はなぜミュージカル映画に惹かれるのか?
1.3.7 人はなぜつまらない映画を見ると眠くなるのか?
第二部:人工知能と映画
2.1 AIが映画に与えた影響
2.2 バーチャルリアリティと脳科学
第三部:脳科学から見た映画
3.1 サヴァン症候群
3.2 認知症
3.3 記憶喪失
3.4 前向性健忘症
3.5 夢
3.6 恐怖症
3.7 心的外傷後遺症
3.8 言語障害
3.9 植物人間
3.10 多重人格
3.11 依存症
3.12 アスペルガー
3.13 摂食障害
3.14 サイコパス
3.15 うつ病
3.16 睡眠障害
3.17 妄想癖
3.18 知的障害
3.19 LGBTQ+
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