【脳科学と映画】その19 知的障害
タイムトラベル映画大好きのりゅうさんです。
「脳科学と映画」シリーズ。今回のテーマは「知的障害」について語ります。
「知的障害」は、一般的には読み書き・計算・言動など、日常生活を送る上での知的行動に支障があることを指します。
ちなみに、医学的には「精神遅滞」を用い、学校教育では「知的障害」を用いる形で使い分けられているそうです。
「知的障害」は、他にも「知恵遅れ」、「気違い」、「馬鹿」、「精神薄弱」、『クルクルパー」などいろいろな言い方がありますが、ほとんどは差別的な用語であり今ではほとんど使われなくなっています。
しかし昔の映画見るとまだそういう言い方がアーカーブ的に残っていてハッとさせられます。
どんなに言い方を変えてもそこに存在する軽蔑や迫害の気持ちが無くならない限り、それは差別的な言葉に変化して、また新しい言葉が生まれるだけなのだと思います。
「知的障害」には多くの原因がありますが、脳科学的には脳内のシナプス(神経細胞間の接続点)の発達不全などにより引き起こされると考えられています。
またMRIなどの画像診断では、「知的障害」のある個人の脳では、特定の脳領域が小さかったり、形が異なっていたりすることが確認されており、これらの活動の低下が、情報処理能力や学習能力に影響を与える可能性があります。
特に、正常な脳であっても、成長期の適切な教育が知的発達においていかに大切かを示す例として、インドの「オオカミ少年」やウクライナの「犬少女」などがあげられるでしょう。
■オオカミに育てられた少年、ダイナ・サニチャー
1872年、インド北部のジャングルで、6歳くらいの男の子がオオカミの群れに混じり、這い回っているのが発見されました。
男の子は孤児院に連れて行かれ、「ダイナ・サニチャー」という名前を与えられます。
サニチャーは肉だけを食べ、服を着ることを嫌がりました。そして言葉もしゃべらずに狼のような鳴き声を上げました。
彼はその後30年近くを、孤児院で過ごしましたが、人間らしい様子はほとんど示さず、最後まで言葉を話すこともなく、最後は結核で死亡しました。
■犬に育てられた少女、オクサナ・マラヤ
1983年ウクライナで生まれのオクサナ・マラヤは、3歳のときにアルコール依存症の両親から育児放棄にあい、3歳から7歳まで犬に育てられました。
マラヤが発見されたとき、会話ができず、4つん這いになって走り回り、吠えたり、床の上で寝て、犬と同じものを食べるなど、犬のようなふるまいをしていました。
その後、マラヤは精神障害児の施設に移されます。大人になるにつれて、マラヤは次第に犬のような行動を抑えるようになり、普通に言葉を話すようになりました。
後に彼女は牧場で牛の世話 をして暮らすようになりましたが、やや知的障害が残ったままだということです。
これらのケースは、脳の可塑性、つまり脳が経験に応じてその構造や機能を変化させることを示す端的な例です。幼少期はこの可塑性が最も高い時期であり、この時期に人間としての基本的な社会的・言語的スキルを学ぶことが脳の発達にとても重要である事を示しています。
扁桃体と前頭前野は、社会的認知や感情調節に不可欠です。これらの領域は、表情や感情を読み取ることに重要な役割を果たします。
「知的障害」を描いたいくつかの映画作品を紹介します。
昔から「知的障害」はその素朴さゆえに愛される存在である事もありますが、多くの場合は社会的活動の困難さから、社会の中でも虐げられたり迫害の対象となりがちです。
『アルジャーノンに花束を』(2006)
知的障害のある主人公が外科手術で天才に生まれかわる。しかしその手術の効果は一定期間しか続かないことが分かり、彼は元に戻る事を防ぐために研究を重ねる。
『I am Sam アイ・アム・サム』(2001)
7歳程度の知能しか持っていないことから、娘を引き離されてしまった父親が裁判で娘を取り戻すべく奮闘する。
『道』(1954)
旅芸人のザンパノと知的障害のあるジェルソミーナとの悲しい人生。
『チャンス』(1979)
知的障害のある普通の庭師が、周囲の人間に勘違いされて大統領にまで担ぎ上げられてしまう。
『フォレスト・ガンプ 一期一会』(1994)
知的障害があるが、足の速さと純真さだけは誰にも負けない主人公が次々と人生で成功を収めて、周囲の人間に幸福の意味を悟らていく。
『ギルバート・グレイプ』(1993)
田舎町で知的障害を持つ弟の面倒を見ながら無意味に暮らす兄が、自由な旅暮らしをする女性と出会い人生を見つめ直す。
『幸せの太鼓を響かせて〜INCLUSION〜』(2011)
メンバー全員が知的障がいを抱える長崎県の和太鼓グループ「瑞宝太鼓」のメンバーやその家族を描くドキュメンタリー。
これらの作品は、知的障害のある人々とのコミニュケーションや社会に対する理解を深める手助けとなります。
りゅうさんでした。
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目次
序章: 映画と脳科学の交差点
第一部: 脳の基本機能と映画
1.1脳が映画を認識する仕組み
1.1.1 脳の情報処理メカニズム
1.1.2 映画音楽が脳へ与える影響
1.1.3 映画における脳の時間認識
1.1.4 大スクリーンが脳に与える影響
1.1.5 「吹き替え版」と「字幕版」の脳への影響
1.1.6 人はなぜフィクションである映画を楽しめるのか?
1.1.7 面白い映画とつまらない映画の違い
1.1.8 人はなぜ青春時代に観た映画や音楽に親しみを感じるのか?
1.1.9 早送りで映画を観る時の脳状態
1.1.10 サブリミナル効果
1.2 五感と映画
1.2.1 視覚と映画の表現
1.2.2 聴覚と映画の表現
1.2.3 触覚と映画の表現
1.2.4 臭覚と映画の表現
1.2.5 味覚と映画の表現
1.3. 感情と映画
1.3.1 感情の脳内プロセス
1.3.2 脳は観たい映画をどうやって決めるか?
1.3.3 男性はなぜポルノ映画を観たがるのか?
1.3.4 人はなぜ暴力映画を観たがるのか?
1.3.5 人はなぜホラー映画を観たがるのか?
1.3.6 人はなぜミュージカル映画に惹かれるのか?
1.3.7 人はなぜつまらない映画を見ると眠くなるのか?
第二部:人工知能と映画
2.1 AIが映画に与えた影響
2.2 バーチャルリアリティと脳科学
第三部:脳科学から見た映画
3.1 サヴァン症候群
3.2 認知症
3.3 記憶喪失
3.4 前向性健忘症
3.5 夢
3.6 恐怖症
3.7 心的外傷後遺症
3.8 言語障害
3.9 植物人間
3.10 多重人格
3.11 依存症
3.12 アスペルガー
3.13 摂食障害
3.14 サイコパス
3.15 うつ病
3.16 睡眠障害
3.17 妄想癖
3.18 知的障害
3.19 LGBTQ+
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