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Bounty Dog【Science.Not,Magic】上

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遠く、でもいずれ来るだろうこの世界の未来を先に走る、とある別の世界。人間達が覇権を握るその世界は、人間以外の全ての存在が滅びようとしていた。事態を重くみた人間は、『絶滅危惧種』達…
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2024年5月の記事一覧

Bounty Dog【Science.Not,Magic】45

45

 カイ・ディスペル捕獲任務を担っている”侵入者”の1体が”追跡者”に勘付いた。通信機を取り出して電源を入れる。真横に居る”犬”を一瞥してから武器を掴んで踵を返した。

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Bounty Dog【Science.Not,Magic】43-44

43

 此の船にはシルフィとセグルメントが推測した通り、人間の乗組員が居た。船の舵も人間が手動で行なっており、貨物の検品を終わらせて、操舵手以外の人間達は休憩室に集まっていた。
 誰1人として、船の見回りをしようとしない。悍ましい存在が一緒に乗っているからだった。
 船は民間の、極々普通の運搬会社が所有する貨物輸送用の大型船だった。機密品だと言われて受け取り、現在輸送している、とある企業の荷物は

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Bounty Dog【Science.Not,Magic】41-42

 画期的で優秀な技術を生み出して保持すると、必ず奪い取ろうとする存在が沸き出てくる。

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 絶滅危惧種の保護は、生き物でも”人間が作った文化品”でも、人間達との闘いが主な任務だった。
「我々の敵は、何時でも人間だ」
 彼女の最も信頼している人間は、新米保護官だった頃にこの言葉を良く呟いていた。彼女も真実だと信じて疑っていない。人間の活動を邪魔する存在は、9割9部で同じ種である人間だ。
 現在

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Bounty Dog【Science.Not,Magic】40

40

 カイはコンテナとコンテナの隙間を潜り抜けながら冒険していた。お供の鼠はうきゅうきゅ鳴きながら、勇者カイに付いていく。
 勇者の武器は精霊の加護を受けた伝説の剣では無く、2000ページ超えの分厚い理学本と”魔法”である。但し勇者は己が使える特殊能力を”魔法”だと思っていない。特殊能力という創作御伽噺のような認識も全くしていない。
 スーパーハイパーウルトラスペシャル、ダサい必殺技名を勝手に

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Bounty Dog【Science.Not,Magic】39

39

 此の世界で、今から数百年前。世界中の人間達が『インターネット』と呼ばれる通信網を利用して生活をしていた。電話用機器を改造して作られた小型通信装置を1人の人間が何台も所有しており、産まれたばかりの赤ん坊にも利用させる親が何処にでも極々当たり前に存在していた。
 人間の生活が通信によって劇的に改善された一方で、人間が作る物全てに当てはまる”悪用”も徐々に多発するようになった。通信が一般人に普

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Bounty Dog【Science.Not,Magic】37-38

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 不気味な唸り声を無視していたのは侵入者全員だった。特に気に留めていないのは、人間以外の生き物に直接的な関わりが全く無い1人の人間。己自身も、他の侵入者達から全く認識されていない。
 西洋の隠密とも称される“生きた幽霊”は、幽霊という機能を発揮させながら己の任務を続けていた。暗視ゴーグルを外して、エメラルドグリーンの双眼が月明かりに照らされる。マラカイトグリーンに変色した絶妙な大きさの目で

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Bounty Dog【Science.Not,Magic】35-36

35

 暗闇の中に、水が弾ける音が聞こえてきた。

 『世界生物保護連合』3班・亜人課の現場保護部隊専用支部がある某小国には、7月中旬に3日間に渡って盛大に行われる、国を挙げた祭りがある。
 『蟹エビ貝蛸・酪農牛乳祭り』と呼ばれる其の祭りは、丘が多いイメージだが海と隣接しているという事実、及び商業施設が充実している隣国よりも暮らしやすいと世界的に認知して貰う為に国民総出で立ち上がって始まった、海

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Bounty Dog【Science.Not,Magic】33-34

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 ファンタズマ(幽霊)になって12年間、此の世を漂っているが、人間として死んで12年経っても、闇は煩わしいだけの存在だった。
 望遠機能付きの暗視ゴーグルを目に掛けた小麦色の肌と黒髪を持つ青年は、監視対象(ターゲット)を丘の彼方此方にある林のひとつに紛れながら、遠隔で見つめていた。亜人らしき獣耳を生やした子供の姿を確認すると、”会ちょ”に連絡するか考える。
 若き西洋の隠密は、主人への連絡

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