Bounty Dog【Science.Not,Magic】41-42


 画期的で優秀な技術を生み出して保持すると、必ず奪い取ろうとする存在が沸き出てくる。

41

 絶滅危惧種の保護は、生き物でも”人間が作った文化品”でも、人間達との闘いが主な任務だった。
「我々の敵は、何時でも人間だ」
 彼女の最も信頼している人間は、新米保護官だった頃にこの言葉を良く呟いていた。彼女も真実だと信じて疑っていない。人間の活動を邪魔する存在は、9割9部で同じ種である人間だ。
 現在、最重要保護対象を逃がそうとしている邪魔者も、人間である。但し相手は幼い子供だった。
 無垢で純粋な子供ですら、人間の子供は他の人間がする活動を、どんな活動であっても平気で頻繁に邪魔ばかりする。

 数え切れない数に膨れ上がっている此の星の『絶滅危惧種』達の中で、亜人の絶滅危惧種保護を担当している国際組織所属保護官ミト・ラグナルは、特別保護官兼『超希少種』の亜人ヒュウラに関しては邪魔だと思わなかった。但し、大人しくしていて欲しいとは心底に思う。
 足が速過ぎて見失ってしまったので、ミトは見張り台を降りて直ぐに、通信機を腰ポケットから取り出して”追跡”した。液晶画面に3個の点が映る。ヒュウラを示す赤い点から少し離れて右横に青い点、2つの点から斜め前方に在る黄緑色に塗られた長方形の図形の1つの中に、濃い青紫色の点が光りながら表示されていた。
『ラグナル。青の点はフウマ保護官。紫がローグよ。コンテナの中に隠れてるわね。恐らくカイも一緒』
 通信機の中から現上司のシルフィ・コルクラートの声が話し掛けてきた。己の心に格言を残した前上司の姉が、ざっくばらんな態度をしている男の声と短い会話をしてから、指示をしてきた。
『セグルメントに指示をして貰って、フウマにヒュウラを任せてる。フウマ曰く貴女とヒュウラ以外で”大きな気配を4つ感じる”そうだけど、船に乗組員が居る可能性が高いわ。舵は自動運転という可能性もあるけど。怪しい船よ、気を引き締めて頂戴』
「了解しました、リーダー」ミトは即答した。シルフィが誘導(ナビゲーション)を続ける。
『ヒュウラの御機嫌にも注意して。次吠えたら永久に煎餅禁止と脅しても良い。ローグとあの子を接近させないように。ローグにも充分に警戒して動きなさい』
「了解です」ミトは口角を上げて、言った。
「あんな手品鼠、地雷やダイナマイトやミサイルに比べたら、全然怖くないわ」

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