IX 焚き火(続)
5年前からマチュラン親方の親戚の女が家に住んでいた。
その女の名前はエリザベート・ヴェルディエだった。彼女の夫は大きな厩舎の厩番であり、彼女は宮廷のリネン室で働いていた。
夫が亡くなり、未亡人は目が悪かったためにささやかな仕事を辞めざるを得なかった。
この女の境遇を聞いて心を痛めた国王の叔母たちは200リーヴルの年金を与えた。しかし、エリザベート・ヴェルディエには娘がいて、2人が食べていくにはその年金では足りなかった。
マチュラン親方には欠点になる性質があった。伝統に対する崇拝を誇張する機会があれば、親方は一族の責務を尊重することを犠牲にまで高めた。
親戚のニコラ・ヴェルディエの未亡人が窮状を明らかにするとすぐに親方は支援を申し出て、彼女の重荷を軽くするために自分の家の3階に小さな一画を与えた。
それはジャン-ルイが勉学[の続行]を断念した頃だった。
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