翻訳『恋するオルランド』3巻第1歌
※『恋するオルランド』の中でマンドリカルドが登場する部分を抜粋してイタリア語原文から翻訳。
あらすじ
マンドリカルドは父アグリカーネの仇討ちのために徒歩で武具を纏わずにタタールを出立した。道中、マンドリカルドは罠にはまって泉の乙女の虜となった。乙女は、アエネアス[アンキーセースとヴィーナスの子、トロイ戦争におけるトロイ軍の勇士にしてローマの建設者]から受け継いだというヘクトルの武具を手に入れるために試練を受けなければならないと告げた。ただ試練に挑戦する前にグラダッソ[中央アジアのセリカーナ(絹の国)の王]を倒して武勇を示す必要があるという。かろうじてグラダッソを打ち負かしたマンドリカルドは試練への挑戦を認められる。試練に向かう前にマンドリカルドは盗賊のマラプレーザを倒す。
5節~66節
フランスのピピノ・マンテンネの息子のシャルル王[原文はre Carlo de Pipino Mantenne in Franza、シャルルマーニュのこと]の王国が富み栄えていた時代、北方から1人のサラセン人がやって来た。北方はほとんど壊滅していた。朝に太陽が昇るところはどこであれ、道があるところはどこであれ、世界中、否、地上すべてを見回してもその者よりも勇敢で頑強で獰猛な者はいなかった[III-1-5]。
異教徒のマンドリカルドはあまりに強く勇猛だったので、いかなる武者であれその大胆不敵さに匹敵する者はいなかった。マンドリカルドはタタールの皇帝であったが、あまりに驕慢で残酷だったので、戦いにおいて優れているわけでもなく強いわけでもない者を連れて行こうとしなかった。そうした者すべてに死が与えられた[III-1-6]。
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