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翻訳『狂えるオルランド』第14歌

※『狂えるオルランド』の中でマンドリカルドが登場する部分を抜粋してイタリア語原文から翻訳。

あらすじ

 エステ家[イタリアの古い家系、13世紀~16世紀にかけてフェッラーラ公爵領を治めた。アリオストの父はエステ家の代官であった]のアルフォンソ1世への賛辞が捧げられる。サラセン人[もともとはシリアやアラビアの砂漠に住む遊牧の民のことだが、広くイスラム教徒やアラブ人を指す]の軍勢に関する説明の後、マンドリカルドが初登場する。マンドリカルドは、トレミセンネ[アフリカのどこかにあると考えられる架空の王国]王のアルツィルドとノリツィア[アルジェリアにあるトレムセンのことだと考えられる]王のマニラルドの復讐を遂げようとオルランドを探し求める[両者とも第12歌でオルランドに討たれた]。その道中、マンドリカルドは、アルジェとサルツァの王のロドモンテと婚約したドラリーチェに遭遇して誘拐する。その間、アフリカ王のアグラマンテはパリを攻略しようとする。シャルルマーニュはパリ防衛の準備を進め、神の加護を祈る。神は、「シレンツィヨ(沈黙)」と「ディスコルディア(不和)」を探し出してともにシャルルマーニュの軍勢を助けるように大天使ミカエルに命じる。サラセン人がパリを攻撃し、ロドモンテが奮戦する。

※訳注は最終的には割注ではなく脚注にします。noteには脚注をつける機能がないためです。読みにくいと思いますがご了承ください。

30節~64節

 数日前、アフリカ王の軍営に1人の戦士が到着した。西方諸国にも東方[Levante、主に地中海東岸地域の古名]諸国にもその者よりも勇敢な者はいなかった。その者はタタール王の強健なるアグリカーネの世継ぎだったのでアグラマンテ王は彼を大いにもてなした。彼の名前は獰猛なるマンドリカルドであった[14-30]。

 数々の勲功で彼は知られ、その名声は化外の地にあまねく響きわたっていた。何にもまして彼には優れた功業がある。すなわち、彼は不思議ですさまじい冒険によってシリアの仙女の城で千年前にトロイアのヘクトルが身に纏っていた胸甲[usbergo、胸部を覆う鎧]を手に入れたが、それはたとえ恐怖に駆られても当然のことである[14-31]。

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