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秋の初めを想う

 立秋。涼風至。暦の上では秋だというのに暑さが残る日々を送りつつも、私は早々はやばやと秋風を求めて小さな旅に出た。
 襷掛けをした袖には何の重みも存在せず、故にそれは空と結ばれる。結ばれた空に無弦琴の音を響かせれば、何処からともなく金色の絹糸が漂い始める。空に浮かぶ金糸は千々に切れ、その様は祝福の紙吹雪を思わせる。これが私が感じた立秋の風景の一部である。
 移ろう季節に美しさを感じ、私もまた自然と共に歩もうと思い、秋風に一切を預けて心を空へと至らせる。

 立秋に付箋外して本を捨てる

 楽園へ至れど道の根無し草

 空っぽの器を満たす自然哉

 枯れ落ちてしまった葉は二度と枝には戻らない。落ち葉は土へと還り木々の養分となるのみ。季節は巡り廻るけれど、同じ風景になることは一度も無く、全てが新しい世界であると見る。自然と共に歩むことは変化と共に歩むことである。そして変化に必要なのは「常に空っぽの器」である。入ったものは留まらずに出ていく。その繰り返しである。もし器が満たされることがあるならば、それは愛でなくてはならない。

 分岐点違えた道は別次元

 風吹いて道を見守る綿毛飛ぶ

 野を焼いて新芽伸ぶ空の穏やかさ

 名も呼ばれぬ雑草が愛おしいと思う夕方に筆を擱く。

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