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【一人暮らしの徒然】洋風おでんか和風ポトフか

 結衣子は、今日の夕飯はおでんを作る、と決めていた。
 時間のかかる煮物をする時は、ちょっとした時短をする。帰ってきたら、真っ先に調理に取り掛かるのだ。かろうじてするのは、買ってきた牛乳を冷蔵庫にしまい、手を丁寧に洗うだけ。
 あとは着替えもせずコートも椅子の背に引っ掛けておいて、お弁当の容器も出さずに台所に立つ。
 おでんといっても具は3種だけ。大根、じゃがいも、ウィンナー。洋風おでんといおうか、それとも和風ポトフといおうか。大根とじゃがいもの皮を剥いて面取りし、ウィンナーの封を切る。沸かしたお湯に具を入れて、料理酒、みりん、醤油、顆粒だしと塩で調味。ひと煮立ちしたらあとは弱火でひたすら30分。それでようやく、結衣子は落ち着いて身支度をする。
 パジャマに着替えて、職場の制服とコートをハンガーにかける。リュックサックから、家計簿をつけるのに財布と手帳だけ取り出す。常備している小物入れの缶に一口チョコレートを補充した。巾着とお弁当の容器を出して、おでんの調理で出た洗い物と一緒に洗って片付ける。今日買ったもののレシートを出して家計簿をつけ終える頃には、おでんが煮えた。
 近況報告も兼ねて、料理を作るたび母に写真を送る。程なく、珍しくあちらも写真をつけて返事をよこしたと思ったら、実家もおでんだったということだ。結衣子が作ったよりも遥かに具沢山のおでんが、懐かしい器に盛られて写っていた。いいね。またちょっと寒くなってきたから、あたたかいおでんが美味しいよね。そうコメントを送った。
 出来立てのおでんを出汁まで飲み切って、すっかりあたたまる。冷えないうちにシャワーを浴びてしまおうと立ち上がった。

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