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お風呂は面倒、面倒、面倒だけど、
満たされないが故のさみしさやかなしみのようなものに、ぼんやりと支配されている。
こないだは、頭痛がするほど長い残業にくたびれ果てて帰ってきて、それでも何とか晩ご飯を2品3品と作って食べた。そこで電池が切れて、食器も片付けず歯磨きもせず電気をつけっぱなしのまま寝こけて、翌朝シャワーを浴びる羽目になった。
そこから、ボタンを一つ掛け違えたままのような生活を送っている。
部屋の床に埃や髪の毛が落ちているのが見えるたび、一つ憂鬱が溜まるのに精算しないまま先送り。
心の底に溜まる鬱々としたむなしい何かに足首を浸したまま数日過ごした。
今日も残り物で夕飯を済ませてから、何をするでもなくぼんやりしていた。人間の頼もしいところは、怠惰に陥っても、その怠惰にも飽きる瞬間がくるのだ。――これではいかん、と俯き気味だった顔を思い切り振り上げる。
まず、歯を磨く。夜は食後に薄いカフェオレを飲む習慣があるので、寝る前にもう一度磨くことにはなるのだが、歯磨きは気分転換するに一番手軽でもってこいの行為だ。
口の中がスッキリしたのに励まされて、オラオラと自分を急き立て動き出す。食器を片付けて全部洗う。だいぶ前に止まった洗濯機から洗濯物を回収して干す。
あとはお風呂だ。シャワーを浴びられたら、今日だけはカフェオレに砂糖を入れてもいい。そんなご褒美を設定して、着替えを抱えて浴室に突進する。
お風呂に入るのはとにかく面倒くさい。化粧を落として洗顔して、髪を洗って体を清めて、それだけで終わらない。浴室を温かいシャワーと冷たいシャワーで交互に流す。上がってざっと体を拭いたら、乾燥肌なので全身に保湿クリームを塗る。やっとパジャマを着込んだと思ったら、ミスト化粧水で軽く顔を潤してから浴室に引き返す。浴室じゅうの水滴をタオルで拭き上げるためだ。入浴のたび、必ずやる。狭い浴室でも、壁に窓、ドアに浴槽の外側、拭く範囲は広い。毎回面倒ではあるが、それによって掃除が楽になるのだ。
タオルを絞って外のハンガーに干して、ミスト化粧水での顔の保湿を追加して、リビングに戻った。
髪に洗い流さないトリートメントを馴染ませ櫛で梳かし、顔をフェイスパックで覆ってからドライヤーで髪を乾かす。概ね乾いたあたりでトリートメントを少しだけ髪に追加してまた櫛を通す。乾ききったらフェイスパックを剥がして、美容液、乳液、フェイスクリームの順でじっくり保湿する。
頬に手を当てると吸いつくほど潤った皮膚ができ上がると、毎度のことながら達成感だ。こんなことを毎日しないといけない。面倒だ。けれど、下手な省略を続けると確かに落ち窪んでいく何かがある。
人生は放っておくと悲しくなる一方だから、小さな習慣で自分を引き上げることを繰り返すのだ。
さあ、お約束の甘いカフェオレを入れよう。いつもより多めに牛乳を入れよう。そしてタブレットを開いて、noteを書くのだ。