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スウェーデンの幼児教育を体験中その1
我が家では娘2歳と共にスウェーデンの幼児教育を絶賛体験中だ。
スウェーデンには保育園と幼稚園を合わせたようなFörskola (フォーシュコーラ) という学校がある。自治体が運営している学校と、教会が運営していたり、モンテッソーリ教育など独自の教育を行う民間の学校がある。また、Öppenförskolaといって保護者と子どもが一緒に参加する形の幼児教育や、個人宅でFörskolaを提供するDaghem(ダーグヘム)という形もある。ちなみにÖppenförskolaは0歳から6歳までの子どもが対象で親子で一緒に参加する形だ。私の暮らす自治体では1日2時間ほどで週5日、アクティビティや他の親子のとの交流を提供している。予約が必要なだけでその他の事前申請は不要だ。
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多くの子どもが1歳まではお家で過ごす
最も一般的な就学時教育機関はFörskolaだ。Förskolaは満1歳から5歳までの子どもが対象で、何歳から入学するかは親次第。1-2歳のうちは、親が働いている(傷病休暇中も)、学校に通っている、求職中や(兄弟の)育休中の場合に利用が認められる。利用時間は最大で勤務時間と通勤時間を合わせた時間。休職中や育休中の親の場合は、1日3時間から週最大15時間まで利用できる。3歳からは全ての子どもが少なくともこの条件で通学できるようにと自治体に義務付けられている。
スウェーデンでは子ども一人当たり480日の育児休暇が認められていて、保護者の間でいつどのように取るか調整できる。ただし保護者一人当たり90日の割り当てがあり、この90日分はもう一人の保護者に譲渡することができない。子どもが12歳になるか5年生を修了するまでに育休を取るか、そのまま権利を放棄するかの二択だ。
育休中のお財布事情
育児休暇中の収入はというと、主にFörsäkringskassan(保険庁)から支払われる。給付金の金額は傷病休暇時の給付金と同じであり、毎年上限の金額が変わる。金額はPrisbasbelopp(ぷリースバースべロップ)という毎年変動する指数があってお役所はこれをもとに公共サービスの料金や、給付金の額などを決める。普段の収入がPrisbasbeloppを越える人は育休中に月の収入が大きく減ってしまうことになるが、この場合労組と雇用主の契約によっては雇用主から育児給与というものが支払われる。この補填分によって育休中の収入減は大体15%ぐらいに抑えられるようだ。ただ、育児給与は数ヶ月分しか補填されない場合が多いので、こういった制度も両方の保護者が育児休暇をとるように促しているのではないだろうか。
保険庁からの給付金も480日のうち90日は金額が大幅に下がり、1日あたり180 krとなる。我が家の場合は、蓋を開けてみたらほぼ半々で休暇を取得しており、2人合わせて200日強の育休がまだ残っている。子どもが4歳になったら残しておけるのは96日までらしいので権利を行使し切りたいところだ。
ところで、我が家ではどうしてかなりの育休日数が残っているのか。保険庁が保障する育休日数=給付金の権利がある日数で、給付金が必要なければ期間限定であるものの、丸っととっておける。給付金は週あたり5日分を申請したので6ヶ月でざっと140日分の育休を使ったことになる。
私も夫も6ヶ月ほどフルタイムの育休を取得した後にフルタイムで職場復帰したのだが、多くの家庭では25%、50%といわゆる時間短縮勤務の形で育休を継続する。幸い夫と私の勤務時間がなんとも都合よく互い違いになっているので、子どもが小さい今は、時短で迎えに行く必要なく収まっている。
Förskolaに入学
どこのFörskolaに通うかは、一応希望がだせるが、家から一番近いところになることが一般的だ。(民間運営の学校はこの限りでは無い。)
利用料は、通学頻度と時間、親の収入から算出され月毎に支払う。申し込み時に収入を申告しない場合には自動的に最高額になる。子どもに対する補助金が毎月出るので、最高額を支払っても差し引き約500−600 krで収まる。3歳からは週15時間までの利用料が無料になる。料金の中には、食事も含まれていて、朝食と昼食の他に果物タイムとおやつの時間がある。
朝は子どもを起こして着替えさせ、歯磨きをしたらあとは学校へ送るだけ。6時台から受け入れてくれるので、8時の朝ごはんまで腹持ちのため、Vällingという穀物と牛乳ベースの飲み物を飲んでいったりするが、朝ごはんを作って食べさせる一仕事を省けるのは本当にありがたい。
Förskolaの先生方はPedagog(ペダゴーグ、教諭または教員などの意)と呼ばれている。伝統的に女性が多い職業でFröken(フローケン、女性の敬称や未婚の女性の意)と呼ばれていたが、近年地位が上がり所定の学習課程を納めて資格を得る職業となっている。厳しい労働環境と子育て世代の教員が多いこともあって、いつでも人員不足の職業でもある。
ゆるい慣らし保育
我が家では、娘が1歳になってすぐにFörskolaを利用することにした。入学前に顔合わせがあって、持ち物や1日のスケジュールなど、オリエンテーションが個別に行われる。そして初めの1-2週間はinskolingと言って、いわゆる慣らし保育に当てられる。どのくらい時間がいるのかは、子どもの次第なので、この期間はゆるーく設定されている。
娘の慣らし保育はあっけなかった。むしろ親が教員とじっくり話して確認し預ける準備をする時間にすら思えた。今思うと、少し大きくなってからの入学だったらもう少し時間が必要だったかもしれない。娘が1歳の時は、あんまり周りの状況を理解していなくて、お腹いっぱいで、眠たくなくて、周りの人が優しいし、もうそれでごきげんという感じだったのだろう。
Förskolaの先生方が子どもたちに必要なものを色々教えてくれる。暑い日はショートパンツの方が良いとか、そういう基本的なところから、娘はどうやら5本指の手袋の方が好きかもしれない、という個別のアドバイスもくれる。オムツや着替えのストックが切れる前にリマインドしてくれる。それでいて指定の服装や持ち物は特になく、親が判断することになっている。
慣らし保育の初日はお天気が不安定で、教室内にいると雨が降ってきた。子どもたちが室内に帰ってくるのかな、と思いきや…先生方がレインウェアのぶら下がった台車を引っ張り出してきて、外にいる子どもたちに着せ始めたではないか。よく見れば各教室のエントランスに長靴専用の靴置き場がある。
スウェーデンにはこんな諺がある。
Det finns inget dåligt väder, bara dåliga kläder.
悪い天気などない、ただ服装が悪いのだ。
だそうだ。
というわけなので、氷点下だろうと子どもたちはお外で遊ぶ。冬にはスキーウェアのようなオーバーオール、水を弾きかつ保温効果のあるスノーブーツ、そしてスノーグローブが必需品だ。どの装備も新品だと大人用より高額だったりするのだが、幸いセカンドハンドが充実していて、低年齢の子ども用だととても良い状態の掘り出し物がよく見つかる。
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冬のスウェーデンで子どもたちは大体この格好
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外はレインウェア仕様、内はモコモコ
ズボンはつなぎになっている
保護者に手間なし
お天気に左右されず目一杯泥んこになった子どもたちの装備は、内側が汚れない限り、お家でのお洗濯は長いお休みごとに一回程度だ。学校に冷蔵庫のような形をしたTorkskåpという乾燥機があって、それでなんとかなる。ちなみにTorkskåpは低温での乾燥がとても便利で、一般的な乾燥機にかけられない衣類の乾燥にもってこいだ。アパートの共有洗濯室にも、一軒家の一般家庭でもよく見かける設備でもある。
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低温でも直ぐに乾く
小さい子たちは、それぞれの必要に応じてお昼寝する。大抵お外で遊ぶ時間にお昼寝時間がくるので、子どもたちは外で、しかもベビーカーでお昼寝をする。ベビーカーは保護者が毎日持ってくるか、そのまま置いて置くか選べて、校庭にはベビーカーの保管スペースがある。家で使っているブランケットとお昼寝用のオーバーオールがあれば寒空の下でも気持ちよくお昼寝ができる。寝具の購入も洗濯もないので保護者の経済的負担も手間も本当に少ない。
夏の必需品はサンスクリーン、帽子そして水筒。どこのメーカーのなんだって良い。子どもが使いやすいものを用意して名前を書くだけ。
とにかくスウェーデンのFörskolaは持ち物の決まり事が本当に少ないように感じる。日本の保育園では、園指定のコップを購入し、指定の寸法と色のコップ入れの巾着を自宅で作り、指定の頻度でコップを巾着に入れて持ち帰って洗う、みたいなことがあると聞いて戦慄した。スウェーデンではFörskolaの敷居が低くてしかも保護者にとって労力がほとんどかからないし、費用も最小限で済む。働く保護者の立場からするととてもありがたい。
スウェーデンの幼児教育を体験中その2では娘の発達を見て思うことを綴りたいと思う。