【クリアレビュー】P3Rが見せてくれた”完璧なリメイク”の在り方【ペルソナ3 リロード】
2006年に発売され、長年人気を博してきた『ペルソナ3』
ポップでスタイリッシュなデザインとは裏腹に”死”をテーマにした本作は、ペルソナシリーズにおける変換点として有名だ。
今となっては超人気コンテンツとなったペルソナだけど、間違いなくその礎となったのはペルソナ3だろう。
4と5が発売されて爆発的に売れても、やはり「3が一番好き!」というユーザーは多かった。
僕もその口だ。中学生の時に初めてプレイしたペルソナ3。
子どもながらに必死で本作に秘められたテーマを読み取ろうとしてた。なんとなくオシャレなデザインとBGMに惹かれた。
しかし時代が経つに連れて、ペルソナ3に触れづらくもなってくる。
PS2時代のゲームだから仕方ないけど、グラフィックは粗いし、システム的にも不便なポイントが沢山ある。
もはやレトロゲーに片足突っ込んだペルソナ3
そんな本作が2024年に蘇る。果たしてどんな風にリバイバルされるのか?
楽しみと不安が半々の状態でプレイしたが、不安なんて最初の2時間で消し飛んでくれた。
断言しよう。
「ペルソナ3リロードはゲーム史に残る完璧なリメイクだ。」と
※多少のネタバレはありますが、核心部分には触れていません
・プレイ時間:160時間
・難易度:LUNATIC
・トロコン済
・ペルソナ全書100%
・裏ボス撃破
・ペルソナ1~5クリア済
グラフィック、演出面の強化
P3Rを起動し、プレイして最初に思ったのは「おい!めっちゃ綺麗じゃん!」だった。
ものすごく失礼なことを言うけど、アトラスのゲームにグラフィックは期待していない。
そしてムービー等の演出面にも期待していない。
どの作品にも、どこか安っぽさを感じてしまう。近年で顕著なのは『ソウルハッカーズ2」なんだけど、あれはもういいや。
しかしながら本作、とにかく絵面がリッチなのだ。
これには驚いた。プレイしていて安っぽさを感じる箇所が皆無
「あ、自分いま質の良いゲームしてんな」と感じられる幸せ・・。
アトラスのゲームでこんな気持ちになるだなんて。
演出面の強化も素晴らしい。
特に序盤で最も重要なシーンである”主人公覚醒”のシーン
PS2版ではアニメーションで表現されていた箇所をガッツリ3Dに変更している。
3Dになっても、原作にあった不気味さ・恐ろしさは健在
「おいおい、なんか主人公キマッってるじゃん」
この感覚を17年ぶりに思い出せた。やっぱいいよねキタロー
かっこいいわコイツ
もう一つ個人的に好きだったのは、初めて寮のドアを開ける時にカメラが上空に移り『PERSONSA3 RELOAD』と出る場面
不気味な緑色の空に浮かび上がる大きい満月、これから始まるであろう長い旅を思わせる一歩目
4と5で魅せた『ポップで親しみやすいペルソナ』とは違う異質さを画面上で完璧に表現していた。
また、5で全世界から賞賛されたUIも更に深化を遂げている。
魅せるUIを意識しつつも、直感的な操作も可能になっている。
テーマカラーである青を基調にしており、とにかく『美しい』と言うほかない。
ここまで品があるUIは中々ない。
デティールの拘りが上質なゲーム体験には重要であると改めて感じた。
親しみやすさが増したキャラクター達
ペルソナ3と言えばギスギス感
ビジネスライクな友情を隠しもしない仲間たちとのやり取りは、当時からネットでいじられていた。
主人公の相棒ポジである順平でさえも平気で盾突いてくる。
女性キャラたちもどこか一線を置いており隙がない。
先輩たちを頼りにしようにも何だか気まずい。
そんな微妙な人間関係を隠さず表現していたのがペルソナ3の魅力でもあった。
しかし、それは悪く言ってしまえば「なんかコイツら腹立つな」と感じてしまう原因にもなる。
ゲームの中くらい理想的な人間関係を築きたいのに、そうさせてくれないリアルさが好きでもあり嫌いでもあった。
リロードでは、そんな”ギスギス感”を上手く軟化している。
ボイスが一気に増え、キャラごとの心情表現が豊富になったからこそ、一人一人のエグ味が消えているのだ。
原作よりテキスト量が膨大になり、仲間の心情が分かりやすくなったのも重大なポイント。
みんなそれぞれに理由があって影時間と向き合っている。
そして、どの理由も決して無下にしてはいけないものなのだ。
主人公という特別な立場を通して彼らの気持ちに触れたとき、心から友情・信頼を感じられる。
柔らかさが増えたといっても、原作通りのギスギスもあるのでご安心ください。
特に6月‐9月は「んだよ、なんでこんなに気まずいんだよ」と何度も感じた。
こんな気まずい場面を過ごしても、それでもなお彼らは前に進むことをやめない。
個人の目的で集まった仲間たちが、『みんなの目的』のために動くようになる。
ビジネスライクから真の友情に成るまでの軌跡を丁寧に、じっくり描いているから、寮のメンバーが特別で堪らなくなるのだ。
「影時間を消すために活動しているのに、影時間の思い出が恋しくなる」
この矛盾をゲーム内のキャラとプレイヤーが共有できているのが素晴らしかった。
カレンダーが時を刻むに連れて、仲間と離れたくないという気持ちがどんどん増してくる。
この気持ちは年齢関係なく抱くものだろう。
上質なストーリー
ペルソナ3はストーリーがいい。
どう良いかというと、とにかくいい。
『メメントモリ(死を想え)』というテーマが示すように、このゲームには常に”死の香り”が漂っている。
物語の核心に触れるのは避けるが、ある場面で主人公たちが『死の存在』を間近にするタイミングが来る。
そこから物語は一気に佳境を見せる。シリアス一直線
楽しい雰囲気がなくなっていく。
失う怖さ、生きる意味、そして”死ぬ意味”をプレイヤーに問いかけてくるのだ。
前述した演出面のおかげで、シリアスなシーンの重厚さがグッと増した。
何気ない会話や言動に儚さを感じるようになったのだ。
人は生まれた瞬間に死へと向かっている。
この否定しようがない考えをゲーム内で何度も何度も突き付けてくる。
「長生きしたいのが当たり前」という考え
「どうせ死ぬのだから希望なんて持てない」という考え
「生まれたことに意味を持ちたい」という考え
全てが正解であり不正解でもある。
綺麗ごとでまとめようとする物語とは違う。
ゲームという媒介を通して生の尊さを教えてくれるのも、本作にしかない魅力と言えるだろう。
幅広いコミュ
ペルソナ3から導入された『コミュシステム』
主人公を取り囲む人物と交流を深めていくサブクエストのようなものだ。
サブクエストと言っても、コミュは話を読むだけ。完全なアドベンチャーパートとなっている。
この他にもコミュで登場するキャラはどれも魅力的な人間ばかり
原作準拠だから多少会話が無理やりだったり、展開が急なものもあるが全てが高水準のドラマとなっている。
同年代のキャラとのコミュは悩みの大きさもそれぞれ。
言ってしまえば”たかが学生”、しかしされど学生なのである。
思い返してみれば、学生時代なんて自分の半径1メートルで起きる出来事が全てだった。
ペルソナ3はそんな学生特有の『自分にしかなくて言いづらい悩み』をリアルに表現している。
そのリアルさにプレイヤーは感情移入し、最後までテキストを読みたくなるのだ。
魅力あるのは学生のコミュだけではない。
・女房と子どもに出ていかれ、夜な夜なクラブで飲んでいる僧侶
・悪徳商法でのし上がった社長
など、コミュキャラの境遇は様々だ。
歪んだ優しさで主人公を包んでくれる彼らも没入感の高まりに一役買っている。
高校生の主人公に対してカッコつけずにダサい部分を曝け出す大人。
そんな”カッコつけない渋さ”が前面に出ていた。
また、コミュに出てくるキャラは全員が”弱さ”を持っている。
そしてその弱さを隠さずに吐露してくれる。当たり前だが、現実でも一人一人にドラマがある。
それぞれに辛いことがあり、それを何とか乗り越えようとしている。
辛さを言い訳にせず、自分なりに答えを見せてくれるコミュメンバー
そんな彼らに勇気を貰いつつ、生きることや他者と繋がることの有意義さも感じられる。
無機質じゃなく、確かに意思を感じる各キャラ達もP3に無くてはならない存在だろう。
でもやっぱ神木だわ。
バトルがおもしれえんだ
P3Rはバトルが面白い。本当に飽きない。
バトルデザインはほぼP5と一緒。でもそれでいい。
コマンドバトルという時代錯誤なバトルシステムなのに、一切古臭さを感じない。
また、5にあったバトンタッチが輸入されたのも大きい。
P3Rでは「シフト」という名称になったが、とにかく使いやすくて気持ちがいい。
無印のころは単純に弱点を突くだけの単調なバトルになっていた。
しかしシフトが追加されたことによって、「誰でどう弱点を突くか」「SPの管理もしっかりしないと」という戦略が増える。
ペルソナ、メガテンのバトルは”相手に行動させない” "ずっと自分のターンにする”ことが何より重要だ。
弱点を突いて、シフトを回して相手に行動させずに一網打尽にする。
この気持ちよさは中々味わえない。
あと、シフトした時の演出が気持ち良すぎて意味がないシフトをしがち。
しょうがないよね。
テウルギアを考えた人にボーナスあげて
P3R特有のバトルシステムとして『テウルギア』が追加された。
これは各キャラに用意された必殺技のようなものだ。
このテウルギアが本当に、いやホンマにかっこいいし強い。
強すぎると感じるほどだ。
もちろん連発できるものではなく、テウルギアゲージを溜めて撃たなければならない。
この「テウルギアゲージを溜める」という戦略性が増えたのも、本作のバトルが面白い理由の一つだろう。
また、光闇属性の攻撃が即死だけではなくなったため、コロマルと天田が使いやすくなったのも嬉しいポイント
終盤になるにつれて、全員が等しく強いため誰をパーティーメンバーにするか迷う。
その中でもゆかりっちは別格の使いやすさだったけど、残りのメンバーは本当に横一線。
「使えないメンバーが一人もいない」ほど嬉しい悩みはない。
クリティカル率増し増しになった順平を信じろ。マジで強えぞ。
お気に入りのペルソナ紹介
たくさんやり込んでペルソナ作ったので、紹介させてください(懇願)
全部好きだけど、やっぱりタナトスが一番好きだ。
デザインだけじゃなく、タナトスに隠された背景も含めて大好き。
ここまで”主人公に付けたくなるペルソナ”って中々いない。
やっぱBGMよ
ペルソナと言ったらオシャレなBGMを思い浮かべる人も多いだろう。
本作でも、そのオシャレセンスは爆発している。
ほとんどの曲が無印の曲をアレンジしたものだが、新作BGMがどれも素晴らしい。
特に好きなのがこの「Color Your Night」だ。
夜の街、そこに佇む人々が浮かんでくるような幻想的な曲となっている。
この曲、ゲーム内で聞くと街の喧騒とマッチしてそれがまたいい。
何か起きそうで起きない”ありがちな夜”を表現するのに、これ以上の答えはないだろう。
他にも沢山紹介したい曲はあるけど、自分で聞くのが一番だよ!
不満点
個人的には100兆点のリメイクだったわけだけど、ゲームとして不満がないわけじゃない。細かいところだけど、いいゲームだからこそ気になる部分もあった。
ベルベットルームでペルソナ消滅ができない
いや、させてよそれくらい。
そもそもペルソナは頻繁にペルソナを付け替えするゲームだ。
バトルはもちろん、コミュを円滑に進めるためにもペルソナをとっかえひっかえする。
主人公のストックが12体と言っても、必ずパンパンになるタイミングはくる。
そこで合体や消滅を駆使して手持ちを揃えるのだが、だからこそベルベットルーム内でペルソナの消滅をさせてほしかった。
江戸川の話が長い
数ある授業の中でも、こいつの話だけ異常に長い。
授業の内容的に重要なことを言っているし、割と物語のテーマに触れるようなことを喋ってはいるのだけど。
でも長いよ、うん。まだボイス付きだったら聞けたかもしれないけど。
個人的には完全に”ハズレの先生”扱いだった。ごめんな。
Mass Destructionのアレンジが微妙
ペルソナ3を象徴する曲ともいえる『Mass Destruction』
リロードでは新ボーカルを迎えて新録されたんだけど、これがどうにも微妙
無印だと「ベイべベイベェー」なのに、リロードだと「ベイビベイビー」になっている。
・無印
・P3R
なんかこう、軽いねん。シティポップ寄りになってオシャレさは増したけど、バトル曲としてどっちが興奮するかと言われれば、、、
しかし、これは原曲があまりにも良すぎたってのもある。
普通に聞く分にはリロードのほう好きだけど、ゲーム曲としては無印のほうが好きだな~。
キャラの動きが不自然と感じる場面も
P3Rは全体的にクオリティーの高いゲームだ。
特にシネマティックムービーの箇所はどれもが美麗で心が躍る。
だからこそ、通常イベントシーンの挙動が気になってしまった。
走り方や身振り手振りの”機械感”が目立つのは非常にもったいない。ここがもっと改善されれば、ペルソナの弱点はなくなるだろう。
あと、アニメの作画がひどい場面も多い。これならアニメなしでムービーにしてくれたほうが、、、。
最高難易度でも簡単
最高難易度ルナティックでも言うほど難しくない。
序盤はSP管理や被ダメージに苦労するが、主人公側が強くなる後半は緊張感がなくなってしまうのが残念
敵が弱いというより、こっちが強すぎるのが問題だと思う。それはそれで気持ちいいんだけど、物足りなさは感じる。
ルナティックだけレベル差補正を小さくするとかあっても良かったかも。
緊張感を味わいたいならテウルギア縛りがおすすめ!
あんなにかっこいい技使わないの勿体ないけどね
総評
P3Rは『完璧なリメイク』だった。
2006年の空気感を纏いつつ、2024年に蘇った”現代のペルソナ3”としてこれ以上ない完成度だったと自信を持って言える。
どこか空虚が漂う日常、当たり前すぎて気づけない日常の尊さ、青臭い学生時代の気恥ずかしさ。
どれもがリアルに限りなく近いのに、影時間という圧倒的フィクションが『ゲームの世界』としてのバランサーになっている。
主人公に自分を重ねて、楽しくも苦しい青春を送るのもいいだろう。
あるいは完全にドラマを見る感覚で、物語を俯瞰するのも正しい楽しみ方だ。
キラキラで甘美な香りと死の恐怖がこれほど上手く混ざったゲームは中々ない。
一つのゲームとして「P3Rより面白い!」と感じるゲームは沢山あるかもしれない。
しかし、これほど心に突き刺さる”尊くて美しいゲーム”は他にない。
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