サッカー見て、じじいのサイドカーで爆走したマニラの夜 ~フィリピン旅行の記録、記憶~
カヤFCの日本人ストライカー
ホテルのドアマンが捕まえてくれたタクシーは良心的な価格で、スタジアムの入口前でおろしてくれた。
スキンヘッドでシフトレバーやセンターコンソールが鮮やかなピンクや青のLEDで飾られていて、ぼったくられるかなと不安だったけど。
警察車両が構える、物々しい雰囲気の入り口を通過して、チケット売り場らしき場所にたどり着く。
スタジアムの中からマリノスのチャントが響き渡り、マリサポもちらほら。
チケットを買おうとすると400ペソだという。え!もっと安いのがあったはず・・・と思い、いったんその場を離れマリノスの公式から事前にリリースされていたチケットの価格を調べる。
その間、現地の子供がこちらをじっと見ているがかまっている余裕は無かった。
チケット売り場に戻り、ゾーンBだと言うと、箱にしまってあったやつを渡してくれた。200ペソである。
ゾーンBは、メインスタンドのアウェイ側のことだった。適当な席に座ったのがウォーミングアップが始まるくらいのタイミングだった。
試合開始の頃には、ホーム側も席も埋まっているようだった。メインスタンド以外は個席ではないため、チケットの販売は無い。
キックオフして、メインスタンドしか客がいない状態に違和感を持ちながらもマリノスのチャントはいつも通り!カヤFCは、チャントはなかったが試合展開に応じて歓声は響く。
カヤFCで一人前線を駆け回る選手に目がいく。日本人ストライカー「#20 DAIZO HORIKOSHI」同点ゴールは彼の右足からで、それまで静かだったホーム側から大きな歓声が聞こえてきた。
その後も自然発生的にホーム側からチャントが聞こえてきた。
試合を通じて、DAIZOがサポーターから愛されていることを感じた。
異国の地で助っ人外国人として活躍する彼は素敵だった。
ポカリのお釣りの件
日本から持ってきた水もさすがに尽きたので、飲み物を買おうと、やせっぽちの売り子の兄ちゃんを呼び止め、このポカリはいくらかと聞けば、70ペソだという。高いのか安いのか。ここまでくるタクシー代が80数ペソだった。
手持ちの現金に不安があったが、水分は必要なので100ペソ札を渡すとポケットをまさぐりはじめた、う?釣銭切れか、と思ったが飛び切りの笑顔でくしゃくしゃになったお菓子の包み紙のようなものを渡してきた。
広げてみれば20と書いてあった。どうやら20ペソ札だ。
その後も彼は釣銭のないことを説明しているようだったが、さっとその場を立ち去って、普通にあちこちで商売をしていた。
どっと疲れが出た。早朝5時に起きてなぜかその日だけ天候が悪く、予定より何本か早い電車に乗って成田に行って、その日の夜にクソ蒸し暑いマニラのスタに居て、約1800ペソあった現金がホテルでデポジットだと1000ペソ取られクレカも止められ、タクシー、チケット、ポカリと現金が飛んでいき、この後、食事とホテルまでの帰りの足代と、現地の金銭感覚が掴めておらず、観光客はぼられやすいとか、負の要素がたたみかけてきた。
じじいのトライシクルに乗ったんだ
目のまえの試合も後半に入って膠着し、選手交代も効果は出ずで、不安をごまかすようにスマホを触りだし、何かを検索していたら大歓声があがり、誰かがゴールしたことを知る。フィリピンまできてゴールを見逃すという失態。負の要素だ。
スタには巨大なスクリーンがないのでメインスタンドとホームゴール裏の角にある大きめのスクリーンでリプレイ映像を見てヤンがゴール決めたことを知る。
そして1-2のまま試合は終わり、勝利を少しの時間だけ味わい、さぁ、問題の帰りだ。
スタを出て、大きいが暗い道をてくてく歩き、ホテルまで行きやすい道路に出てタクシーを停めやすそうな場所を探すと、後ろから小さくクラクションを鳴らされた。
振り返れば、赤いバイクにまたがるじじい。バイクの横にはサイドカー。
これならタクシーより安いのではないか、と思い、ホテルの名前を言ってハウマッチと言ってみたが通じず、Googleでホテルを検索してスマホを見せれば、そのスマホを勝手にナビモードにして、乗れという。ハウマッチと聞いても乗れとしか言わない。
ままよ、とサイドカーに乗るとゆるりと、じじいのバイクが動き出す。
おもしろそうな予感がした、そしてスピードを上げ始めると地面スレスレの目線が凄くいい、動画をとりたかったが、じじいがナビが見られないというので、俺はじじいにスマホが見れるように左手を突き出した姿勢のまま、サイドカーに乗り続けた。
じじいのバイクはどんどんスピードを上げる。クラクションを鳴らし鳴らされ車を追い抜き、煽り煽られ、エンジン音を響かせ突き進む。
スリリングで爽快な気分がたまらなかった。
途中で唐突にガソリンスタンドに入った。じじいはソーリー、ソーリーと言いながら、バイクを降りた。給油だったと思うんだが、1分程度で再出発。
(実際、給油したのかはサイドカーからはわからなかった)
再び、バイクはスピードを上げてホテルまでを疾走した。
ホテルに着き、じじいにハウマッチと聞けばちょっと考えるしぐさをして300ペソと言ってきた。行きのタクシーが80ペソで、帰りの粗末なサイドカーが300ペソなわけがない!
財布をあけると、200ペソ札があった。100ペソでも高いと思うが実際楽しかった、アトラクションとしては最高だった。
なので、気前よく200ペソ札を渡した。じじいは少し不服そうだったが、こちらはそれ以上一歩も譲らなかったので、根負けしたじじいは帰っていった。少し満足そうな表情だった。
赤いバイクにまたがるじじいのサイドカーに乗ってマニラの夜の街を爆走した。間違いなくあれがこの旅のハイライトだった。
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動画見つけた。そうそうこんな感じ。夜だともっとスリリング。