好奇心を手がかりにした大学選び
6年前、自分は高校生でも大学生でもフリーターでもない人間だった
合格した大学は全て蹴り、1年間の空白期間が発生することだけは確定していた
高すぎる目標を設定した成れの果て
極めつけが、目的地が定まっていないことだった
選択の基準を他者に押しつけていた頃の悲劇
18年間、思えば自分で選んでいるようで選んでいなかった
家族の楽しそうな様子を見るのが好きだったというのもあるが、それ以上に「どうしたら家族は喜んでくれるか?」を無意識のうちに考えていた
決して家族が暴力的なことをしてきたからではなく、純粋に家族が好きだったから。学校に馴染めなかった自分にとって拠り所にできるのは家族だけだったし、笑っている家族の側にいることができれば、幸せを感じられた
しかし、ある時から「幸せ」は少しずつ崩れていった。にもかかわらず、家族を心の拠り所にして、自分の人生の選択さえも、結びつけようとしていた
受験の失敗と共に、家族は完全に崩れ、私は人生の選択をやり直さざるを得なくなった。
好奇心がコンパスになった「やりたいこと」探し
高すぎた目標以外は何も考えていなかったので、自分のアンテナを最大限に働かせて、少しでも反応した本があれば触れてみる日々だった。
心よく私が興味のありそうな本をすすめてくれる人もいて、なるべく全てに目を通すようにした。
「進む道は自分で選ぶんだよ」
何度も繰り返されるその言葉は気づけば、「私の興味があることをやりたい」という思いに変わり、好奇心を全開にして本を貪った
おそらく、その頃の読書経験が今の自分の基盤になっていると思う。
そして、ついにその時はやってきた
「土って12種類もあるんだ。しかも土の中では目に見えない微生物が植物が栄養を食べられるようにしてるんだ。すごい!キノコすごい!」
それは、『大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち』というヤマケイ新書(今はヤマケイ文庫)の中に出てきた、植物と土壌微生物についての記述だった
加えて、社寺林を訪れて気分が爽快になった経験から、森林についての本を探していたところ、「日本の山は量的には豊かだが、質的には豊かではない」という内容の本を見つけ、方向性が決まった
「森林の土壌に生息する微生物について学べる大学を探そう」
思えば、人生で初めて見つけ出した「やりたいこと」だった
探し続けた目的地
しかし、林学or森林科学について学べる大学は農業を学べる大学よりも少ない
加えて、学費を安く抑えたかったので国公立大学に行きたいと思っていたが、ギリギリ通学できて京大とか京都府立大ぐらいしかなかった(他にあったらごめんなさい)
到底、自分の頭で行けるところでもなかったし、なんとなく行きたくなかった
かといって、中国・四国地方の大学はというと、あるにはあるが、当時調べた感想としては「ピンとこなかった」
あんまり遠いところもイヤだったし、かといってそんなこと言っててもなぁと悶々とサーチする日々だった
で、どこから出てきたのか、東海圏のとある国立大学を調べていた際、「森林の土壌に生息する微生物」ドンピシャな研究室を複数発見、受験し合格
大学寮も月1万弱と格安で住める、適度に人がいる、落ち着いて過ごせる雰囲気の大学に進学した
見知らぬ土地、初めての1人暮らし、大学の講義、農林業ボランティア、研究活動、それらを通じて出会った仲間や先輩、恩師
全てが宝物になった
立ち止まったことで選択する余地が生まれた
6年前、もしストレートに進学していたら、なんとなく進学して、なんとなく過ごし、学部終了後のことをなんとなく考え、なんとなく就職していただろう
1年間の浪人期間は、自分が足のない浮遊する物体になったようで、不安で(実際色々あって気持ちは不安定だった)、どこに行きつくのか自分のことなのにわからなかった
けれど、勇気を出して立ち止まり1年間考えたことで、学部4年間は何かに駆り立てられるように色々な経験と出会いに取り組むことができた
一旦立ち止まり、自分の声を聞く
地道な過程を経て選んだことは、自分を裏切らない
苦しい時も、嬉しい時もきっと全てが糧になるだろうから