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「最近の大学生は遊んでばかりなのにどうして税金で奨学金を出さなければいけないの?」に対する回答


どうも、クロモジです

こんなハードなタイトルで書くことになるなんて、想像していませんでした

ただ、これは私が好きな学問に絡んでいる大切な話なので、長文・拙文ですが、どうしても伝えたいと思い書いています

昨年、ある集まりで、ご年配の方から衝撃的な発言を聞きました

「今の大学生は遊んでばかりなのに、なぜ奨学金を出す必要があるのか?」
「就職して「返済できない」って苦しんでるけど、給料に文句を言いたいだけじゃないのか?」

あまりの衝撃に返す言葉もなく、黙って聞くしかありませんでした
正直、その場で反論できなかった自分がとても悔しく、情けない

私自身は、ありがたいことに奨学金も借りず、程よく遊び・学んできましたしかし、友人は奨学金やバイトでなんとか学生生活をしていますし、その中には研究者を目指している人もいます

なにより、一時期、私も同じ状況に陥ってもおかしくなかったため、
とても他人事とは思えません

なので、知りえる限りの情報で、大学や若者の置かれている状況、私たちは税金の使い方をしっかり監督できているのか、学びとは机に向かうものだけなのか、などを考えてみたいと思います

…と大きく出ましたが、一個人の見解なので、参考までに見ていただければ幸いです


全大学生にカネを出せと言っているわけではない

そもそも、全ての学生が奨学金を使うわけでも、受け取れるわけでもないです

受給基準には、生計維持者の年収と成績があり、どちらも満たさないと受け取れないようになってる

加えて、非常に面倒くさい書類作成という作業をしないといけない

そんなこんなで、受給資格と手続きという二大巨塔のおかげで、受給までこぎつけるのがかなりハードモードなので、奨学金反対の方々にはご安心いただけると思います

修学支援制度も問題点ありまくりすぎるので同様です


実家が太くても親族から支援を得られない若者の存在

とはいえ、それでもらえる学生はまだいい(のかも怪しいけど…)
中には、保護者の同意が得られない学生だっているんです

現行の制度では、「原則、保護者の同意」が必要で、それさえ得られなければ進学のハードルは一層上がってしまうから

特別な事情のない者は、学生本人のアルバイト収入で生計を立てていたとしても学生本人1名を生計維持者とすること(独立生計者)は認められません。 

学生本人が生計維持者(独立生計者)として認められる場合は、父母ともに死別した場合や絶縁状態である場合、両者とも行方不明父母からのDVを逃れるために別居していて、日常的に学費や生活費を本人が負担している場合等となります。

なお、この場合、事実関係が確認できる証明書類の提出を求める場合があります。

独立行政法人 日本学生支援機構, よくあるご質問 「生計維持者」

「折り合いが悪い」ぐらいでは「いやいや、保護者のサインもらってこいよ」と言われるわけです

この部分は、私自身、穴が開くくらい確認して、かーーなりショックを受けました

該当する場合でも、「特別な事情」を示すための証拠書類を出さねばならず、場合によっては自身のトラウマや傷に触れながら手続きを進めることになります

私の知り合いにも、親族が奨学金の保証人になってくれず、アルバイトと大学の支援制度で学費を支払った人がいます

そして、私もその1人になりかけました

実際手続きしようとしたことがあるのですが、「証拠はありますか?」と問われ、「今会うのがしんどいのが何よりの証拠なんだけど?」と、とてもしんどかったのを覚えています

幸いにも、支援してくれる親戚がいたから免れただけ
本当に、個々人の事情への配慮というものがなく、容赦がないです

特に、家族の形なんて変わってきているし、「機能不全家族」だってある

家計に関わらず若者本人が学べる環境づくりをしてほしいと切に願います
それが、真の教育であり、巡り巡って国益につながるんじゃないのか?


国から大学への運営資金・補助金の減少を背景に授業料は上昇

ここまで、奨学金に着目して話をしてきましたが、そもそも授業料が昔より上がっています

▼ 大学区分別の1975年度と2024年度(もしくは2021年度)の年間授業料

国立大学
3万6000円→53万5800円(2024年度)
およそ50年で約15倍

公立大学
2万7847円→53万6363円(2021年度)
約19倍

私立大学
18万2677円→93万943円(2021年度)
約5倍

加えて、国公立大と私大の差は、約5倍から約2倍と年々小さくなっています

そんな状態なので、多くの学生が奨学金を借りざるをえない状況です
2023年時点で、大学含む高等教育機関に属する学生の3割が日本学生支援機構の奨学金(給付・貸与共に含む)を利用しているということです

その上、成績が基準を少しでも下回れば3回の警告後に支給停止
中には、突然わかりやすい理由なきままに「支給停止」の通知書が来ることもあるという話も耳にします


卒業後は、最低でも13年間返済する必要がありますが、下がり続ける給料、非正規雇用の増加やら諸々のネガティブな要因で、返済に苦しむ人も多い

ほんとに、何が学びを助けるなんだろうって思います

かといって、単純に大学の授業料が高いことを責めることはできない
大学の経営も厳しい状況にあるからです

少子化の影響もあるでしょうけど、2004年国立大学が国から独立してから、国からの運営費交付金や私立大学への補助金が年々減っていることが大きい

大学の収入は運営費交付金、自己収入(授業料や寄付金)、競争的資金や企業との研究資金などで構成されていて、その内の約3割が運営費交付金

授業料なんて、1割ぐらいで微々たる収入らしい

まだ、付属の病院や競争的資金を得られる大学、医科系の学部を持っていれば補填できるとはいうものの、すでに2012年時点で、競争的資金や自己収入があっても穴埋めできない大学が4割弱あり、特に医科系の学部がない地方国立大学・文科系や教育系の単科大学はかなり厳しい状況であると言われてきました

私自身、まさに医科系の学部がない山の中にある地方公立大学におり、身をもって体感しています!(笑えない…)

例えば

  • 新年度から予算が減るため新刊図書が買えない

  • コピー機に「一枚あたり○○円」の張り紙

  • 教員が来年度1人減る

さらに、地方大学ではない東大も授業料の値上げを発表しています

学生も、大学も限界なんだよ!!
(そろそろわかれよ!!)

そもそも税金の使い方を先輩方はきちんと見てきたのか?

これまで見てきたような惨状を知ってもなお、納得できないという方はいるのでしょうか…?

個人的には、学びへの出し渋りをする前に、他の出費をぜひ見直してほしいと思いますし、そもそも「出費の監督をご年配の方々はきちんとやってこられたのか?」と問いたいです

ご年配の方々の今までの頑張りを軽視するわけではないし、バブル経済のようなはっちゃけを咎めたいわけでもないし、国際情勢の悪化を軽視するわけでもないです

でも、軍事費8兆7500億円に対し、国立大学法人運営費交付金は1兆0784億円
私学助成金は4073億円
運営費交付金と私学助成金合わせても、軍事費の方が8倍近く多い

バランスがオカシイと思うのは、私だけなんでしょうか?
というか、教育無償化とか言ってるのに、ウソやん!!

遊びの重要性をご存じか?

そして、もう一つ
言い訳めいてしまいますが、人間には「遊び」というものが重要です

実際、子どもは遊びを通じて身体の使い方・他者との付き合い方を学びます

プレイパークという「子どもが責任を持って自由に遊ぶ」活動が研究・展開されていることを見れば明らかでしょう

本当に、子どもたちは大人が思いつかないような遊びをします
ただ、木をほじくって虫で遊ぶだけでも楽しんでいるし、勝手に面白い遊びを自分たちでやっていきます

その中で、生き物と触れるだけでなく、友達との関係づくり、発想など様々な社会的・心理的に成熟していくんだろうなと、見ていてしみじみ思います

昨今は、大人の活動に関しても「プレイフルラーニング」という考え方が注目を浴びてきていますよね

これは、「よし遊ぼうぜ!」という意味ではなく「えいや!」と、とりあえずやってみる動きを指します

計画とか、一貫性とかを捨てて、未知のものに対して踏み出していくことで、思いもよらない世界が見えるかもしれない

そういう、流動的な、何でも挑戦してみようという姿勢を通じて、学ぶこともあるんじゃないでしょうか?

実際、私は大学・大学院での研究、講義、友人との時間、旅、サークルでの活動を「とりあえずやってみる」ことを通じて、7年前には予想もできなかった学ぶことの楽しさ、人間の多様さ、好奇心の赴くままに動くことを味わい尽くすことができました

あと、機械にだって、"遊び"がありますよね?

ただ、ガリガリ勉強する・働くだけなら、「死ぬのがいいわ」って思います

おわりに:こんなに冷たい社会を生きるためには…

今回は、奨学金・大学生の現状を中心にしてきましたが、正直、これは現代社会を表す氷山の一角でしかないと思っています

今の社会は自己責任論が行き過ぎているし、冷たい

「死にたい」「生きづらい」のはいたって正常です
私自身、今回のような言説に接する度に、絶望します

だからこそ、オカシイと思ったことは徹底して考え、必要であれば批評しないといけない

そうやって違和感を感じたことに声を上げて抵抗することが、冷たい社会を生きる力になるんじゃないかと思います

では、また


参考情報など

・島一則 (2012) 国立大学財政・財務の動向と課題 法人化後の検証. 高等教育研究 15, 49-70.

・文部科学省, 国公私立大学の授業料等の推移
https://www.mext.go.jp/content/20211224-mxt_sigakujo-000019681_4.pdf

・東大新聞オンライン, 学費問題早分かり 授業料引き上げ 基本Q&A, 
学費問題早分かり 授業料引き上げ 基本Q&A - 東大新聞オンライン

・独立行政法人 日本学生支援機構, よくあるご質問 「生計維持者」
学生本人は自身のアルバイト収入で生計を立てており、父母からの経済的支援はありません。「生計維持者」を申込者学生本人としてよいですか。<br>(2021年10月11日更新) | JASSO

・財務省 令和7年度予算政府案
令和7年度予算政府案 : 財務省

・独立行政法人 日本学生支援機構, 奨学事業に関するデータ集
奨学金事業に関するデータ集 | JASSO

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