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ミュージカルやろう8 初めての演技と演技指導

メンバーはつまり「素人」です。今まで舞台に出ても並んで楽譜を見ながら歌うだけだったアラ60が、英語の歌を覚えて、お芝居もするなんて!
はじめは「英語」だけで拒絶反応のある人もいて、歌の稽古で不機嫌になる人もいました。さらにはミュージカルだけでなく、音楽祭の後半にはクリスマスコンサートもあるので、そちらの演奏曲も練習しなければなりません。まずは音楽稽古の時点で苦戦しました。
なかなか覚えられないアラ60
でも長い人生を頑張って生きてきた人たちのプライドは傷つけられない。

大丈夫!大丈夫! よくなってきたよ〜! さっきよりずっといい!

褒めて、褒めて、どうしてもできないところは

あ〜、ここだけ頑張ってくれるともっといいんだけど〜
言ってはいけない言葉は全部しまいこみ、伝えるときには考えてラップして出す。言葉を?(笑

それでも、計画した練習回数では間に合わないかもしれない。これでは完全に歌えるようになるまでは待てないと判断した私は、大体歌えたところで立ち稽古を始めることにしました。
楽譜を持っているとつい目線も楽譜にいくし、結局覚えないから顔も上げられないからです。

さて!はじめての立ち稽古。
外はクリスマスの街、人々は買い物をしている。スクルージの事務所ではまだスクルージとクラチットが仕事をしている。というシーン

みんなクリスマスの街でお買い物してる人たちだよ! 普段買い物する時と同じように、お店屋さんで買い物していいからね はい!

パン!と手を叩いてお芝居開始!

買い物となれば得意分野。けっこうみんな様になってます。ところが、舞台の上手にある主人公の家でお芝居が始まると

全員それに見入っちゃう(笑

ダメダメ!お芝居続けて!みんなには事務所の中は見えないんだよ

人々は、あ!そーかーとまたお芝居を始めます。

広場に人が嬉しそうに集まってくるシーンでは
ゾロゾロと能面のように無表情に集まってきます

違う違う、集まってくる時からもうワイワイしていて!やり直し!

今度は私がワイワイ!するように手を回すと

わー!わー!
とお芝居してくれますが、
手を回さないとワイワイできない

ここはみんなすでに嬉しく集まってくるんだから、合図がなくてもワイワイするんだよ

そうだった。私が当たり前だと思っていたことは、この人たちには初めてのことなんだ。
私が初めてオペラ業界に入ったあの日のことを思い出しました。

初舞台で、出番以外に舞台奥に見える畦道に立っている人をやらされた時。
どうしていいかわからず棒立ちでいたら、先輩に
「お芝居しなきゃダメだよ!」と注意されたことがあったっけ。
そうだった。何をすればいいのか、さっぱりわからなっかったあの時の私なんだ。

白紙状態の人々に
じゃあ歓声の練習ね!はい!わーーーーーー!ぱちぱちぱちぱち!
客席にお尻を向けないでね
広場に誰もいないスペースを作らないように気をつけてね
そうやって一つ一つ演技をつけていくと、人々はだんだんにそれを楽しんで、もっと良くなるように工夫をしてくれるようになりました。

進化している。
アラ60にして学芸会以来の演技。どうやら面白くなってきました。



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