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「デジタル・ミニマリスト」
「デジタル・ミニマリスト」(カル・ニューポート 池田真紀子 早川書房)
MIT出身のコンピュータサイエンスの大学教授の著者による、デジタル片づけの本。スマートフォンやSNSに我々の多くの時間が吸い取られていることを指摘し、自分の時間を取り戻すための実践法を記している。単なるテクノロジー批判ではなく、コンピュータ科学を熟知した著者が、メリットを享受しつつ時間を奪われないようにするための具体的な方策を書いている。自分としてもネットに時間を浪費している感覚があったので、非常に面白くためになった。
必要なのは、自分の根本をなす価値観に基づいた、妥協のない"テクノロジー利用に関する哲学"だ。どのツールを利用すべきか、どのように使うべきかという問題に明確な答えを提示できる哲学。そして、選んだツール以外のいっさいを無視できるだけの自信を与えてくれることも、同じくらい重要な条件だ。(13ページ)
ソーシャルメディアの巨大企業は、よりよい世界を築こうとがんばっている友好的なテックの神々であるふりをやめ、自分たちは依存性の高い商品を子供たちに売りつける、Tシャツを着たタバコ農家であると認めるべきです。なぜなら--はっきり言いましょう--"いいね"がついたかどうか確認する行為は、喫煙と同じくらい依存性が高いからです。(28ページ)
依存症とは、有害な結果が生じるにもかかわらず、その報酬効果が強迫的誘因となって特定の物質の使用や行為を繰り返す状態を指す。
最近まで、依存症を引き起こすのはアルコールや麻薬など、人の脳内化学物質にじかに作用する精神活性化合物を含む物質だけと考えられていた。しかし二〇世紀の終わりから二一世紀の始まりにかけて、物質の摂取を伴わない行為も、右に挙げた専門的定義に当てはまることを示す研究結果が数多く公表された。(36ページ)
デジタル・ミニマリズム
自分が重きを置いていることがらにプラスになるか否かを基準に厳選した一握りのツールの最適化を図り、オンラインで費やす時間をそれだけに集中して、ほかのものは惜しまず手放すようなテクノロジー利用の哲学。(48-49ページ)
要するに、小さなチャンスを見逃しても気にしない。それよりも、人生を充実させると確実にわかっている大きなことがらをないがしろにすることのほうを恐れるのだ。(50ページ)
デジタル・ミニマリズムの三原則
原則1:あればあるほどコストがかかる
原則2:最適化が成功のカギである
原則3:自覚的であることが充実感につながる
これらの考察は、アーミッシュは新しいテクノロジーの一切を拒絶するという一般的な見方を否定する。では、実際のところはどうなのだろうか。アーミッシュの人々は、衝動的で複雑な大量消費主義がはびこる現代社会において、驚くほど過激でありながら単純なことを実践している--自分たちにとって大事なことがらから逆算し、検討対象の新しいテクノロジーがその大事なことがらに対して益よりも害を及ぼすかどうかを考えるのだ。クレイビルの説明を借りれば、彼らは次のような問いを自分に向ける。「これは役に立つだろうか、それとも有害だろうか。共同体としての私たちの生活一般を向上させるだろうか。それとも逆に破壊するだろうか」(72-73ページ)
テクノロジーに対する彼らの独特の感覚に触れると、アーミッシュのライフスタイルを珍しがってばかりはいられなくなる。ジョン・ホステトラーが言うように、アーミッシュの哲学は現代化を拒絶することではない。"ふつうと異なる形で"現代化することだ。(74ページ)
デジタル片づけのプロセス
三〇日のリセット期間を定め、かならずしも必要ではないテクノロジーの利用を休止する。
この三〇日間に、楽しくてやりがいのある活動や行動を新しく探したり再発見したりする。
休止期間が終わったら、まっさらな状態の生活に、休止していたテクノロジーを再導入する。その一つひとつについて、自分の生活にどのようなメリットがあるか、そのメリットを最大化するにはどのように利用すべきかを検討する。(82ページ)
禁止するテクノロジーと関連する運用規定のリストが完成したら紙に書き出し、毎日かならず目にする場所に貼っておく。リセット期間中にやっていいこと、いけないことを明確に線引きしておくことが成功のカギとなる。(91ページ)
デジタル片づけの目的は、うっとうしいテクノロジーから一時的に離れることにとどまらない。このひと月のリセット期間中に、必須ではないテクノロジーを利用しなくなって空いた時間を埋める、もっと価値の高い活動を積極的に探さなくてはならない。リセットの三〇日は、精力的に試行錯誤を繰り返す期間となる。(97ページ)
ミニマリストのテクノロジー選考基準
以下の条件を満たしたテクノロジーだけをリセット期間明けに再導入する。
大事なことがらを後押しする(何らかのメリットがある程度では不充分)。
大事なことがらを支援する最善の方法である(最善ではないなら、代わりに別の方法を考える)。
いつ、どのようにそのテクノロジーを利用するかを具体的に定めた標準運用規定に沿った形で生活に貢献できる。(100ページ)
4章 一人で過ごす時間を持とう
孤独の欠乏
他者の思考のインプットに気をとられ、自分の思考のみと向き合う時間が限りなくゼロに近づいた状態。(128ページ)
演習 スマートフォンを置いて外に出よう (138ページ)
演習 長い散歩に出よう (143ページ)
演習 自分に手紙を書こう (150ページ)
5章 "いいね"をしない
とすると、問題は、ソーシャルメディアを利用するとただちに幸福度が下がるということではない。それどころか、右で引用した肯定的な研究論文によると、ソーシャルメディアにおける特定の活動は、実験でそれだけを取り出して見た場合、控えめながら幸福度を向上させる。ここで重要なのは、ソーシャルメディアを利用すると、それよりもはるかに価値の高いリアルの世界での社交の時間が減るだろうということだ。否定的な研究論文が示唆するように、ソーシャルメディアを使えば使うほど、オフラインでの交流に費やす
時間は減る傾向にあり、したがって価値の不足幅は大きくなる--ソーシャルメディアのヘビーユーザーほど、孤独感やみじめな気分が強まりやすいわけだ。(170-171ページ)
演習 "いいね"をしない (182ページ)
演習 テキストメッセージはまとめて処理しよう (186ページ)
演習 営業時間を設けよう (191ページ)
6章 趣味を取り戻そう
余暇活動の教訓1:受け身の消費よりも体を動かす活動を優先しよう。(209ページ)
余暇活動の教訓2:スキルを活かし、物質的な世界で価値あるものを作り出そう。(214ページ)
余暇活動の教訓3:親睦を支える枠組みが用意された、リアルな世界での交流が必要な活動を探そう。(223ページ)
演習 週に何か一つ、修理するか作るかしてみよう (228ページ)
演習 質の低い余暇活動をスケジューリングしよう (233ページ)
私の提案はこうだ--質の低い余暇活動に費やす時間をあらかじめスケジュールにいれておこう。つなり、そのための時間を先にブロックしておいてネットサーフィンやソーシャルメディアのチェック、配信動画の視聴などに充てるのだ。この時間帯は何をしてもかまわない。(中略)ただし、この時間帯以外はオフラインで過ごそう。(236ページ)
演習 何かに参加しよう (238ページ)
演習 余暇の活動計画を立てよう (241ページ)
7章 SNSアプリを全部消そう
演習 デバイスをシングルタスクな道具に戻そう (262ページ)
演習 ソーシャルメディアのプロを真似しよう (267ページ)
演習 スローメディアを活用しよう (274ページ)
演習 フィーチャーフォンに戻そう (281ページ)