「私の財産告白」
「私の財産告白」(本多静六 実業之日本社)
https://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-39582-1
貧農に生まれながら苦学して東大教授になり、「月給4分の1天引き貯金」を元手に投資して巨万の富を築いた著者によるお金持ち哲学の書。他の定年本で引用されていたので読んでみた。お金の増やし方については、株式や山林への投資ということで、時代背景もあって巨万の富を築いたと思われるが、財産をどう処分するかについての部分はとても新鮮であった。停年退職を機にほとんどの財産を匿名で寄付するという、「児孫のために美田を買わず」を地で行く行動はなかなか真似できないと思った。
アルバイトとして「一日に一頁」の文章執筆により、三百七十冊余りの著書を生み出したというのも、真似したいが自分には到底無理であろう。「貸すな、借りるなの戒律」「好景気、楽観時代は思い切った勤倹貯蓄」「不景気、悲観時代は思い切った投資」「失敗は人生の必須課目だ」「儲けるには儲けさせよ」「君子と小人の間を行く」「よけいな謙遜はするな」「上長に大切な威厳と親しみ」など、ある意味で当たり前ではあるが、なかなか実行できない話が多かった。特に最後の方の人をどう使うかの話は、耳の痛い話が多かった。「人生の最大幸福は職業の道楽化にある」と述べ、「汝の上位は常に空席である」という西洋の人生訓を引用している、本当に勉強し、本当に実力を養うもののためには、その進むべき門戸はいつも開かれていると、努力の大切さを述べ、最後は「人生即努力、努力即幸福」で結んでいる。古さを感じさせない本だった。