「自分に還る 50代の暮らしと仕事」
「自分に還る 50代の暮らしと仕事」(石川理恵 PHP研究所)
ライター・編集者の著者による、50代の6人の女性達の物語の本。写真が多く、ビジュアルに美しい本である。俳優さんとか、編集長とか、会社を作った方とか、すごい立派な経歴の方々が多いけれど、自分が若い時に大切にしてきた価値観や好みが、50代になって形を変えて生きてくるという話で、タイトル通り「自分に還る」物語になっている。
どんなにいい環境や教育よりも、お母さんが笑顔でいられたら、子どもにとってそれに勝るものはありません。温かくて穏やかな家庭で過ごせることがいちばんだなあって。私には、あまりにもがんばりすぎて笑顔になれない時期があったからこそ、なおさらそう思います。(107ページ)
人間って、長く生きれば賢くなるとは限らないんだなと、小学生の頃から冷めた目で大人を見ていました。とくに父方には、精神を病んでしまう人が多かったんです。才能をうまく使えればいいけれども、そうじゃないと生きるのが難しい。紙一重な大人たちが周りにいたので、人間は不完全なんだと。まるで当時流行っていた「プッチンプリン」みたいだと思っていました。型に入っている時はきちんとして見えても、一回あけてしまったら、すぐに崩れてしまうようなやわらかくて弱いもの。これは私も型が必要だな、と感じていたんです。(127ページ)
さみしいってすごく不思議な感情ですよね。さみしくても人はすぐ死んだりはしないけれど、その気持ちを押し殺したり、長期間放置していたりすると、明らかにコンディションが悪くなります。さみしがる自分に甘んじていると、結局は誰かに迷惑をかけてしまう。さみしさゆえに承認欲求が強くなったり、コンプレックスが歪んだり。さみしさを感じるのは当たり前だけれども、放置をしてはいけないんです。(134-135ページ)
自分を大切にするって、たとえばいつもいい服を着せてあげるような表層的なことではなくて、自分の心の動きを、本人が無視しないことだと思うんです。お腹が空いたら「何を食べたいのかな」と考えて、ごはんを食べる。疲れていたら「わかった、もうじゃあ今日は早く寝よう」とベッドに入る。真に自分を大切にしている、愛しているって、そういうことだと思っています。そうやってちゃんと向き合っていると、自分が自分に嘘をつかず、本当のことを話してくれるようになるんですよ。
料理をしながら、好きな音楽を聴きながら、猫沢さんは自分をいたわり、自分をたのしませている。天国に持って行けるものがあるとしたら、きっと自分の内面だけ。これからも自分という人間が豊かになるように、納得する日々を重ねていくのだ。(151ページ)
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