「53歳の新人」
「53歳の新人」(内多勝康 新潮社)
https://www.shinchosha.co.jp/book/354541/
NHKのアナウンサーだった著者が、定年を待たずに退職して福祉の世界へと転職した顛末を語る体験記。関東ではよくテレビで見かけたアナウンサーだったので、ネットニュースで転職の話を知ったときはかなり驚いた。読んでみて、もともとはディレクター志望だったにもかかわらず、30年間アナウンサーとして活躍したことはすごいと思った。年齢を重ね、NHKでの仕事に先が見えてきたところで、福祉の世界へと関心が向いていく気持ちはよくわかるが、それでも国立成育医療研究センターの「もみじの家」の開所と同時にハウスマネージャーへとして移っていくのは、とても勇気がいることだったと思う。エクセルやパワーポイントが使えなかった苦労話など、50代で新しい世界に入ることの努力は大変なものだったと思う。それを克服して、報酬改定によって医療型短期入所での日中活動支援加算が新設されたり、医療的ケアについての47都道府県の家族会を立ち上げたり、成果を出していることは素晴らしいと思った。自分のことを文中で「内多君」と呼ぶ場面が多いのがやや気にはなったが、面白く、勇気づけられる本だった。でも50代のすべての人が同じような道を歩めるわけではない。それぞれがアンテナを広げて生きていくしかないのであろう。