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「シンプルで合理的な人生設計」

「シンプルで合理的な人生設計」(橘玲 ダイヤモンド社)

橘玲氏による本。冒頭にあるように、「自由に生きるためには、人生の土台を合理的に設計せよ」(2ページ)と主張し、土台として社会資本、人的資本、金融資本の3つに分けてそれぞれの合理性について論じている。内容は、最近のヒットした自己啓発本のさわりをうまくつなげてまとめている感じで、この本を出発点に、紹介された本を読んでみるのもいいのではないかと思った。ただ、この著者ならではの主張は、この本では弱い感じがした。

 選択をする必要が少なければ少ないほど、人生はよりゆたかになる (24ページ)

 選択を避けるもっともシンプルな戦略はお金持ちになること (25ページ)

 満足度を最大化するのではなく、後悔を最小化する (40ページ)

 脳はとにかく楽をして、いろいろなことを(パターン認識能力によって)素早く判断するように進化した。こうした「資源(リソース)制約」から、進化的合理性には次のような特徴があることがわかる。
 ①目の前の利益を最大化する。
 ②すべてを単純な因果論で判断しようとする。
 ③客観的な事実はさほど重要ではない。
 ④周囲に同調する。
 ⑤共同体のなかで評判を獲得しようとする。
 ⑥共同体に所属する者には共感する。
 ⑦共同体に所属しない者を排除する。(84-86ページ)

 このように多くの場合、認知を変える(これはかなり大変だ)より環境を変える(転校や転職、転居する)方がうまくいく可能性が高い。これが、「合理的に成功する」考え方の基本になる。(96ページ)

 【予測が上手なキツネの考え方】
 総合的:もともとの政治的立場にとらわれることなく、さまざまな分野に取り組む。
 柔軟:最初のアプローチが機能するかどうかわからなければ、新しい方法を見つけたり、同時に複数の方法を試したりする。
 自己批判的:(うれしくはないが)すすんで自分の予測の間違いを認め、非難を受け入れる。
 複雑さを受け入れる:世界を複雑なものとして見ており、多くの基本的な問題は解決不能、あるいは本質的に予測不能だと思っている。
 用心深い:確率的な言葉で予測を表現し、断定を避ける。
 経験的:理論よりも経験を重視する。

 超予測者は「永遠のベータ版」で、「試す、失敗する、分析する、修正する、また試す」という思考サイクルが大好きなのだ。(122ページ)

 幸福とは、自分の人生を「よい物語」として(自分や他人に)語れること。
 不幸とは、人生という「物語」が破綻してしまったこと。(145ページ)

 成功にとってもっとも重要なのは、自分がもつアドバンテージをどのようにマネタイズするかだ(208ページ)

 ここから、重要な教訓を得ることができる。それは、
 自分の能力が優位性を持つ市場を見つけろ
 というものだ。どれほど高い能力をもっていても、優位性がなければなんの意味もない。それに対して、平均よりはすこし上(上位30~40%)の能力しかなくても、競争相手の平均がそれ以下ならじゅうぶんな利益(金銭的な収入と高い評価)を獲得できるのだ。(235ページ)

 弱者の戦略には、「分野をずらす」「階層(ジャンル)をずらす」に加えて「新しい場所に移動する」がある。いわば「ベンチャー戦略」だ。(中略)
 しかしこのことは、「変化の激しい環境ほど弱者にはチャンスがある」ことを示してもいる。環境が複雑になればなるほど、ニッチは増えていく。そのとき重要なのは、「スピード」と「コストをかけないこと」だと稲垣さんはいう。無一文の若者たちが自分の才能だけを頼りにITビジネスに挑戦するのは、とにかく早く侵入することで勝機が生まれるからだ。(242-243ページ)

 アルバート=ラズロ・バラバシは複雑系(ネットワーク)研究の第一人者だが、最新のネットワーク科学から、成功を生む要因を科学的に解明したと宣言した。(中略)
 【成功の第一法則】パフォーマンスが成功を促す。パフォーマンスが測定できないときには、ネットワークが成功を促す。
 【成功の第二法則】パフォーマンスには上限があるが、成功には上限がない。
 【成功の第三法則】過去の成功×適応度=将来の成功
 【成功の第四法則】チームの成功にはバランスと多様性が不可欠だが、功績を認められるのは一人だけ。
 【成功の第五法則】不屈の精神があれば、成功はいつでもやってくる。
 バラバシは、「成功とは、あなたが属する社会から受け取る報酬である」と定義する。(280-281ページ)

 成功の第五法則は、「不屈の精神があれば、成功はいつでもやってくる」だ。これをバラバシは「S=Qr」という数式で説明する。(中略)
 「創造的な仕事に就く人のQファクターは、時を経ても変化しない」というのは、ある意味、残酷な事実でもある。Qファクターが低いと、よいアイディアを(ランダムに)思いついたとしても、それをかたちにすることができないから、成功への扉は閉じたままだ。これは要するに、「その分野で成功できるかどうかは、(ある程度)生得的に決まっている」ということでもある。(292-293ページ)

(少し更新のペースを落とします)

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