「記憶はスキル」

「記憶はスキル」(畔柳圭佑 クロスメディアパブリッシング)
https://www.cm-publishing.co.jp/9784295406266-2/

東京大学卒業で、グーグル株式会社に勤務経験があり、記憶アプリ「Monoxer(モノグサ)」を開発して会社を興した著者による、記憶についての本。第1章「記憶がトクイだと人生が楽しくなる!」は、記憶をすることで新たなアイディアが生まれ、自分の世界が広がると述べ、第2章「記憶とは何か?」で感覚記憶、短期記憶、長期記憶について紹介し、長期記憶が言葉にできる記憶(エピソード記憶、意味記憶)と言葉にできない記憶(手続き記憶、条件付け、非連合学習、プライミング効果)に分けられ、それぞれについて説明している。

第3章「効率的な記憶のステップ」は、記憶を4つのステップ(なにを覚えるのか決める、覚える、覚えた状態をキープする、適切に思い出す)に分け、それぞれについてのコツ(7+-2個のチャンクに分ける、頻繁にテストする、順番を変える、聴覚を活用する、分散効果を使った復習など)を学術研究も紹介しながら説明している。
第4章「記憶する習慣」は、記憶をメンテナンスするための習慣として、自由意思に頼らない、無意識下の判断を活用する(ポジティブな単語に触れ)、条件づけの活用、報酬の活用、短期目標の設定などについて述べている。
第5章「記憶を味方につけるライフスタイル」は、朝が記憶のゴールデンタイムであることや、食事としてDHAやビタミンB1が重要なこと、軽い運動で記憶力が向上する、歳を取ると思いだす力が低下し、短期記憶力も低下するが、思い込みによる面もあり、これまでの記憶を活かすなど加齢をアドバンテージとすると良いと述べている。またストレスは記憶を低下させるとしている。
第6章「記憶ツールがすべてを解決してくれる!?」は、ツールの要件(記憶すべき要素がまとまっている、30秒以内に始められる、いつでも中断できる、すぐに正誤を確認できる)について述べ、フラッシュカードの効果を高める使い方として、適切な分量でまとめる、覚えたものと覚えていないものを別に管理する、定期的にシャッフルする、ヒントをつける、アウトプットしたいかたちで回答するの5つを述べている。さらに最新の記憶アプリとして、AnkiやQuizletとともにMonoxerを紹介し、スマホさえあればいつでも使える、高速で反復できる、聴覚も活用できる、学習の計画を立ててくれるの4つのメリットを述べ、アプリの選び方として自分に合うものを使うのが一番と述べている。最後に学校などでのMonoxerの活用例を紹介している。

1冊の本を作るのはものすごい労力であるので、頭ごなしに批判はしたくないが、やや期待外れだった。学術研究の紹介も浅く広くという感じであり、また記憶アプリの分析にしてももう少し深い議論があったら良いのではないかと思った。それでも、記憶についてのコツを思い出すメリットはあった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?