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「任せるコツ」

「任せるコツ」(山本渉 すばる舎)

マーケティング会社の統括ディレクターの著者による、正しい仕事の丸投げの方法の本。任せた相手も成長させるように、仕事を任せるための方法や気をつけるべきことが丁寧に書かれている。

 もう一つの重要な要素は「目的の明確化」です。
 その依頼内容が何のためのものかを、はっきりさせることが大切です。

 このトピックには、「3人のレンガ職人」の寓話がよく使われます。
 "レンガを積む作業をしている労働者が何をしているかを尋ねられて、それぞれ「レンガを積んでいる」「壁をつくるために積んでいる」「教会を建てるために積んでいる」と答えた"というものです。
 目的を理解することによって、モチベーションも仕事に対する意識も変わってくることを訓示しています。(22ページ)

 「この仕事をやってほしい」というこちらの都合を、「その仕事をやりたい」という相手の欲求に沿った文言に変換する必要があります。
(中略)
 このように相手の意向に沿った文脈に変換し、メリットを提示することが必要です。「欲求充足」という考え方です。(26-27ページ)

 依頼案件がうまくいくためにも、ポイントを改めて確認してみてください。
□意欲創出(相手がやりたいと思える文脈になっているか)
□目的の明確化(なぜ必要なのか理由を伝えているか)
□欲求充足(利己的都合ではなく相手にメリットがあるか)
□選択肢の提示(断る余白があるか。スケジュールに相談の余地があるか)
□負担の配慮(負担を減らす工夫や相談の余地があるか)
(34ページ)

 依頼をするベストタイミング、それは「褒める」とセットのタイミングです。(36ページ)

 「優秀か優秀じゃないか」よりも「向いているか向いていないか」、もっと言えば「相手がやる気になるか」という基準でアサインをしていく必要があります。
(中略)
 つまり、本人の「適性」(何ができるか)と「意欲」(何がしたいか)が丸投げを成功させる鍵となります。(40-41ページ)

 プロジェクトアサインやスタッフィングの世界でよく使われる、核心を突いた言葉があります。
 "矢の周りに的を描け"
 どんな弓矢の達人でも的を外すこともあるでしょう。でも、すでに射られた矢の周りに的を描けば百発百中です。
 後出しのようにも聞こえますが、アサインとは当たるかわからない矢を放ってもらうより、適した人材に仕事を寄せるほうが成功の確度は高いです。
(中略)
 まずは人(「意欲」と「適性」)ありきで、そこに仕事をマッチングさせていきましょう。これを実現するには人を見る洞察力と目利き力が必要です。(46-47ページ)

 「誰にでも不得意がある」という前提に立ち、苦手なことが多いメンバーとどう向き合うかをここからお伝えします。ポイントは次の3つです。
①すぐに直る短所は改善する
②短所をポジティブに活用する
③チームで補強し合う
(48ページ)

 繰り返しになりますが、チームで動くメリットは補完し合えることです。
 一人が熱くなれば、一人は一歩引いて、冷静にジャッジする必要があります。
 優秀なマネージャーは俯瞰で全体を見て、自分がどの位置に行くべきかを考えたり、攻守のバランスを取ってチームビルディングをしています。(58ページ)

 この章では「丸投げ」の前後にあるもの。普段のメンバーとのコミュニケーションやフォローのコツをお伝えします。
 メンバーを知るために大切なこと。
 それは、とにかく聞いて、聞いて、聞くこと。徹底的に聞き手にまわることです。
 "過去のリーダーの仕事は「命じること」だが、未来のリーダーの仕事は「聞くこと」が重要になる"
 このドラッカーの言葉にあるように、メンバーの言葉に耳を傾けること、傾聴力が何よりも大切です。(62-63ページ)

 その他にも、Z世代はこのような要望がより強い世代と言われています。
・話をしっかり聞いてもらいたい(第3章「傾聴」「面談」で解説)
・頻繁な承認を求める(第7章「褒める技術」で解説)
・多様性の尊重、上司のやり方を押し付けられたくない(次節で解説)
 本書の「任せ方」は期せずして、Z世代を最大限に活かす手法となっています。
 自信を持って正しく「任せる」ことで若手の成長を促してください。(88-89ページ)

 「ティーチング」と「コーチング」の二つを使い分けることが重要です。
 例えば、緊急対応が必要なときなどに、「君はどう思う?」などと悠長なこと言っていられないケースもあります。

 ティーチング……答えを教える。相手の経験が浅い場合、緊急時、複数人に同時に育成するときに使用
 コーチング……答えを引き出す。主体性を持たせモチベーションを上げたいとき、1対1で育成するときに使用

 次ページの図のように、はじめは「ティーチング」からスタートし、経験を積んでいくと、「コーチング」の比重が大きくなっていくのが理想です。(138ページ)

 "歳をとってやっちゃいけないのは説教、昔話、自慢話"
 これはタレントの高田純次さんの言葉として有名ですが、ビジネスにも当てはまることです。(162ページ)

 ちなみに、この「リフレーミング」という手法は、「褒める」ためだけの手法ではありません。視点や前提を変えてポジティブに変換するというのは、ビジネス全般に活用できる技です。

 「二人の靴のセールスマン」という有名な寓話があります。
 "発展途上の国に、二人のセールスマンが靴を売りに行き、一人は「みんな裸足だからここでは売れない」と考えていて、もう一人は「みんなまだ靴を持っていない、こんなチャンスはない」と捉えた"という話です。
 後者のように考えることで、ビジネスチャンスにつなげることもできます。ぜひリフレーミングの習慣をつけて、多面的にものごとを見ていきましょう。(182ページ)

 モチベーションを下げる要因
1やりたい仕事ではない
2向いている仕事ではない
3仕事に意義を感じない
4将来性がない
5仕事にプライドが持てない
6上司が見てくれてない
7評価されない
8期待されていない
9仕事に達成感がない
10成長を感じない
(216-217ページ)

 大成建設の企業スローガンに「地図に残る仕事」というものがあります。作業の先をイメージさせて、やる気とプライドを持たせる秀逸なコピーではないでしょうか。
 リーダーの役目は、このように広い視野で作業の価値を高めてそれを伝えていうことです。(229ページ)

 前述した「目的を伝え、共に目指す」に近いですが、なぜやるかを伝えて任せることでモチベーションは上がります。

 この考えに近い「ゴールデンサークル理論」をご紹介します。
 マーケティングコンサルタントのサイモン・シネック氏がTEDでプレゼンして話題となった考え方です。
 一般的な物事の伝え方は「WHAT->HOW->WHY」であるのに対して、Apple社のスティーブ・ジョブズ氏のような影響力のあるリーダーはその逆、「WHY->HOW->WHAT」で伝えるというものです。
 WHATである新商品の紹介から入るのではなく、なぜこのような商品を生み出したかったのかのWHYから始めることで、感情や直感に訴えて人を動かすことができます。(234ページ)

 成長ループ「まみむめも」という便利な覚え方を一つご紹介します。
 任せて、成長を促し、次のステップに進み、またそこで任す、という持続的成長支援の考え方です。
ま 「任せる」相手の意欲や適性に沿って、適度なチャレンジがある依頼をする。
み 「見守る」任せたら口を挟まない。相手を信じる。
む 「報いる」成果に応じてフィードバックと褒めることを忘れない。
め 「目指す」次のゴールを示し、その魅力を伝える。
も 「目的提示」なぜやるかを明確にする。(239-240ページ)

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